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ドラマ「補佐官」シーズン1 #799


昨日の敵は、今日の友。

韓国の政治は、とにかく党の変化が激しい。できては消えるし、議員もあちこちに異動します。いまの与党はどこだっけ?となることもしばしば。

激しい生存競争を生き抜く仕事、ではあるけれど。どこの国にも、「そもそもなぜ政治家になろうと思ったのか」、疑問に感じる人もいますよね……。

法案作り、答弁書、記者会見などなど、政治家の激務を支えるのは、「補佐官」。

映画での活動が続いていたイ・ジョンジェが、10年ぶりにドラマに復帰した「補佐官」は、そんな表舞台を歩く政治家と、影で支える人々を描いた政治ドラマです。

☆☆☆☆☆

ドラマ「補佐官」シーズン1
Netflixで配信中
https://www.netflix.com/title/81070963

☆☆☆☆☆

<あらすじ
ソン・ヒソプ国会議員の主席補佐官であるチャン・テジュンは、冷静で優れた判断力を活かし、議員をサポートしてきた。テジュンの暗躍のおかげで、ついに院内代表となったソン議員は、法務長官に任命されれば、自分の選挙区を譲ると約束するが……。


Netflixではシーズン2まで配信されています。日本版タイトルは「補佐官」だけですが、韓国語版には「世の中を動かす人々」という副題あり。陰謀渦巻く世界の、熱いドラマです。

なにせ展開が早い。

あっちと対立したと思ったら、こっちと手を組み、あちらの足を引っ張る策略を巡らす。「昨日の敵は、今日の友」どころか、10分くらいで状況が一変しちゃうんだから、目が離せない。熾烈なゲームそのものです。

イ・ジョンジェ演じるチャン・テジュンが、かつての恩師と、愛する女性と、自らの野望の板挟みに、と展開していきます。

政治闘争のネタとなるのは、労災認定や再開発を巡る利権、下請け企業の事故もみ消し、中絶の賛否など、現在進行形で韓国で問題になっているものばかり。まるでドキュメンタリーを観ているような迫力です。

中でも再開発を巡る問題は、ソン・ジュンギ×チョン・ヨビン×オク・テギョンによるファッショナブルなヤクザドラマ「ヴィンチェンツォ」でも大きなテーマになっていました。


実際、文在寅政権の発足後、ソウルのマンション相場は5割以上高騰していて、住宅難に。強制撤去による死亡事故も起きています。


ドラマの中でも、政治家たちは誰も彼も「お金の匂い」に敏感で、そこで暮らす人々の声に耳を傾けることはありません。

唯一、庶民の命を守ろうとしていた社会派議員が、テジュンの昔の師匠でした。下っ端の秘書からスタートし、主席補佐官になるまで10年。

今度は自分がバッジを付けて……と考えるテジュンですが、夢が叶うかどうかは、自分が仕えるソン・ヒソプ議員が法務部の長官になれるかどうか次第なんです。

テジュンがこっそり付き合っているのが、ソン・ヒソプ議員の天敵・カン・ソニョン議員。元弁護士で、テレビ番組でアンカーも務めていたというスーパーミラクルな女性です。

演じるシン・ミナは、「海街チャチャチャ」では、都会風を吹かすかわいげのない歯医者役ですが、「補佐官」では決して信念を曲げない強さを秘めた国会議員。なのにテジュンの前で見せるえくぼがかわいくて惚れます。


最近の韓国ドラマには、国家権力と司法に対する不信感がみてとれます。政治の裏側を泥臭く描いたドラマに、韓国の人たちの反応はどうだったんだろうと思ったら。JTBCの初回放送の第1位を記録。その後も4%前後をキープしていたようです。

純粋な使命感をもって政治を志した青年が、力を手にするために落ちた闇。汚れることを厭わないのがよいのか、初心を守り抜くのか。展開も熱いけど、志しも熱い。一気見必至のドラマです!


ドラマ「補佐官」シーズン1 JTBC 10回(2019年)

監督:クァク・ジョンファン

脚本:イ・デイル

出演:イ・ジョンジェ、シン・ミナ、イ・エリヤ、キム・ドンジュン、チョン・ジニョン



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