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ドラマ「賢い医師生活」シーズン2 #802


ああああああ、大好きな人たちがついに!!!!!

新たな命が生まれ、今ある命が終わりを迎える病院という場所。患者たちとともに生きる5人の医師を描いた「賢い医師生活」は、シーズン2の12話すべてがNetflixで配信されました。

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ドラマ「賢い医師生活」
https://www.netflix.com/title/81239224

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シーズン1は、韓国でNetflix視聴率の年間1位に輝いています。


シーズン2は、意外にも1の続きとして始まり、第6話になって一気に時間が進む、という構成。人の命を扱う病院が舞台なので、命の重さ、医療の限界を感じることもあるのですが、同時に医師の人柄に、心すくわれる場面が少なくありません。

わたしが一番泣いてしまったのが第4話。

心臓移植のドナーを待つ母たちの明暗に、ウルウル。

突然の病気報告に、ハラハラ。

そして、いつもクールで、ちょっとイケズなジュンワンの配慮に、ついに涙腺が……。

ジュンワンはSNSが苦手なため、後輩のジェハクが使い方を教えてあげるんです。ある日、ひとりでコソコソやってるから、遠距離恋愛中の彼女になんか送ったのかなーと思うじゃないですか。

その後、いつもICUでひとりぼっちだった患者のもとを、多くの人が訪れるようになります。

実はジュンワンが、SNSで話相手を募集していたのでした。

こんなステキなSNSの使い方ってある!?

ジュンワン先生だけでなく、この病院にはおよそ“争い”というものがないんですよね。韓国ドラマお得意の「愛憎劇」や「復讐劇」もない。なにより、人の温もりを感じられるドラマでした。


メインの5人は、ソウル大医学部出身の同級生、かつ、バンド仲間です。

・イ・イクジュン(常に冗談を言っている肝胆膵外科医)

・チェ・ソンファ(“鬼神”と呼ばれる脳神経外科医)

・アン・ジョンウォン(“仏様”と呼ばれるクリスチャンの小児科医)

・キム・ジュンワン(いつもクールな胸部外科医)

・ヤン・ソッキョン(“クマ”が愛称の産婦人科医)

それぞれに外来、手術、学会、レジデントの指導と忙しい中、恋をし、家族の問題を抱え、成長していきます。


シーズン2は2020年~2021年の話のはずなのですが、実はドラマに「描かれていないもの」があります。

新型コロナウイルスです。

舞台が病院なのに、感染症の話は一度も出てきません。町行く人も、誰もマスクをしていない。

現実社会では、韓国国内の感染者数の累計が28万人を超えており、ちょうど昨日は「秋夕(旧暦8月15日)」という祭日でしたが、政府は帰省を控えるように呼びかけています。


そんな中で、描かれない感染症の話。でも、シーズン2でひしひしと伝わるものがありました。

医療従事者への感謝の気持ちです。

新生児室の看護師の首に貼られた湿布。寝不足でも患者を見舞ってしまうレジデント。取材依頼に対して「チームでなら」と断る教授。清掃のおばちゃんにも、警備員のおにいちゃんにも等しく声をかける医師。誰よりも先に、日々の看病をしていた家族をねぎらう言葉。お互いの不安を支えるはげまし。

いまできることを、誠実に果たす人たちのおかげで、医療は成り立っている。

ふだんの診療や検診では見えないところまで描かれているので、自然と湧き上がってくるんです。

感謝の気持ちが。

新型コロナウイルスについて触れないのは、「特定の時期を描いたドラマ」にしたくなかったからかもしれません。それでも、いまの状況をまったく無視した構成ではないんですよね。描かれないことで湧き上がる想いに、ものすごく涙があふれました。

「賢い医師生活」には、特殊な技術を持つ、スター医師は出てきません。院長の座を巡る争いもない。

ヒーローはいない。

ただただ、すべての人がスーパーミラクルな人生を生きているのです。

ドラマ制作にあたった関係者みなさんに感謝。世界中の医療従事者に感謝。


シーズン2のラストは、

「退勤時間じゃないか」

というセリフで終わります。ドラマの中では、「退勤時間」どころか、夜中でも、明け方でも、電話1本で駆けつけていたのに。

医師や看護師にとって、いま一番欲しいものが「退勤時間」なのかもしれないですね……。

シーズン3までゆっくりと休んで、また充実したドラマをみせてほしい。


ドラマ「賢い医師生活」シーズン2 tvN 12回(2021年)

監督:シン・ウォンホ

脚本:イ・ウジョン

出演:チョ・ジョンソク、ユ・ヨンソク、チョン・ギョンホ、キム・デミョン、チョン・ミド、キム・ガプス、キム・ヘスク

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