スキップしてメイン コンテンツに移動

ドラマ「賢い医師生活」シーズン2 #802


ああああああ、大好きな人たちがついに!!!!!

新たな命が生まれ、今ある命が終わりを迎える病院という場所。患者たちとともに生きる5人の医師を描いた「賢い医師生活」は、シーズン2の12話すべてがNetflixで配信されました。

☆☆☆☆☆

ドラマ「賢い医師生活」
https://www.netflix.com/title/81239224

☆☆☆☆☆

シーズン1は、韓国でNetflix視聴率の年間1位に輝いています。


シーズン2は、意外にも1の続きとして始まり、第6話になって一気に時間が進む、という構成。人の命を扱う病院が舞台なので、命の重さ、医療の限界を感じることもあるのですが、同時に医師の人柄に、心すくわれる場面が少なくありません。

わたしが一番泣いてしまったのが第4話。

心臓移植のドナーを待つ母たちの明暗に、ウルウル。

突然の病気報告に、ハラハラ。

そして、いつもクールで、ちょっとイケズなジュンワンの配慮に、ついに涙腺が……。

ジュンワンはSNSが苦手なため、後輩のジェハクが使い方を教えてあげるんです。ある日、ひとりでコソコソやってるから、遠距離恋愛中の彼女になんか送ったのかなーと思うじゃないですか。

その後、いつもICUでひとりぼっちだった患者のもとを、多くの人が訪れるようになります。

実はジュンワンが、SNSで話相手を募集していたのでした。

こんなステキなSNSの使い方ってある!?

ジュンワン先生だけでなく、この病院にはおよそ“争い”というものがないんですよね。韓国ドラマお得意の「愛憎劇」や「復讐劇」もない。なにより、人の温もりを感じられるドラマでした。


メインの5人は、ソウル大医学部出身の同級生、かつ、バンド仲間です。

・イ・イクジュン(常に冗談を言っている肝胆膵外科医)

・チェ・ソンファ(“鬼神”と呼ばれる脳神経外科医)

・アン・ジョンウォン(“仏様”と呼ばれるクリスチャンの小児科医)

・キム・ジュンワン(いつもクールな胸部外科医)

・ヤン・ソッキョン(“クマ”が愛称の産婦人科医)

それぞれに外来、手術、学会、レジデントの指導と忙しい中、恋をし、家族の問題を抱え、成長していきます。


シーズン2は2020年~2021年の話のはずなのですが、実はドラマに「描かれていないもの」があります。

新型コロナウイルスです。

舞台が病院なのに、感染症の話は一度も出てきません。町行く人も、誰もマスクをしていない。

現実社会では、韓国国内の感染者数の累計が28万人を超えており、ちょうど昨日は「秋夕(旧暦8月15日)」という祭日でしたが、政府は帰省を控えるように呼びかけています。


そんな中で、描かれない感染症の話。でも、シーズン2でひしひしと伝わるものがありました。

医療従事者への感謝の気持ちです。

新生児室の看護師の首に貼られた湿布。寝不足でも患者を見舞ってしまうレジデント。取材依頼に対して「チームでなら」と断る教授。清掃のおばちゃんにも、警備員のおにいちゃんにも等しく声をかける医師。誰よりも先に、日々の看病をしていた家族をねぎらう言葉。お互いの不安を支えるはげまし。

いまできることを、誠実に果たす人たちのおかげで、医療は成り立っている。

ふだんの診療や検診では見えないところまで描かれているので、自然と湧き上がってくるんです。

感謝の気持ちが。

新型コロナウイルスについて触れないのは、「特定の時期を描いたドラマ」にしたくなかったからかもしれません。それでも、いまの状況をまったく無視した構成ではないんですよね。描かれないことで湧き上がる想いに、ものすごく涙があふれました。

「賢い医師生活」には、特殊な技術を持つ、スター医師は出てきません。院長の座を巡る争いもない。

ヒーローはいない。

ただただ、すべての人がスーパーミラクルな人生を生きているのです。

ドラマ制作にあたった関係者みなさんに感謝。世界中の医療従事者に感謝。


シーズン2のラストは、

「退勤時間じゃないか」

というセリフで終わります。ドラマの中では、「退勤時間」どころか、夜中でも、明け方でも、電話1本で駆けつけていたのに。

医師や看護師にとって、いま一番欲しいものが「退勤時間」なのかもしれないですね……。

シーズン3までゆっくりと休んで、また充実したドラマをみせてほしい。


ドラマ「賢い医師生活」シーズン2 tvN 12回(2021年)

監督:シン・ウォンホ

脚本:イ・ウジョン

出演:チョ・ジョンソク、ユ・ヨンソク、チョン・ギョンホ、キム・デミョン、チョン・ミド、キム・ガプス、キム・ヘスク

コメント

このブログの人気の投稿

『コロナ時代の選挙漫遊記』#839

学生時代、選挙カーに乗っていました。 もちろん、なにかの「候補者」として立候補したわけではありません。「ウグイス嬢」のアルバイトをしていたんです。候補者による街頭演説は、午前8時から午後8時までと決まっているため、選挙事務所から離れた地域で演説をスタートする日は、朝の6時くらいに出発することもあり、なかなかのハードワークでした。 選挙の現場なんて、見るのも初めて。派遣される党によって、お弁当の“豪華さ”が違うんだなーとか、候補者の年齢によって休憩時間が違うんだなーとか、分かりやすい部分で差を感じていました。 それでも、情勢のニュースが出た翌日なんかは事務所の中がピリピリしていることもあり、真剣勝負の怖さを感じたものでした。 「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちれば“ただの人”だ」とは、大野伴睦の言葉だそうですが、誰だって“ただの人”にはなりたくないですもんね……。 そんな代議士を選ぶ第49回衆議院議員総選挙の投票日が、今週末10月31日に迫っています。   与党で過半数を獲得できるのかが注目されていますが、わたしが毎回気になっているのは投票率です。今回は、どれくらい“上がる”のかを、いつも期待して見ているのですが、なかなか爆上がりはしませんね……。 ちなみに、2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙の投票率は、53.68%でした。 『コロナ時代の選挙漫遊記』の著者であり、フリーライターの畠山理仁さんは、選挙に行かないことに対して、こう語っています。 “選挙に行かないことは、決して格好いいことではない。” 全国15の選挙を取材したルポルタージュ『コロナ時代の選挙漫遊記』を読むと、なるほど、こんなエキサイティングな「大会」に積極的に参加しないのはもったいないことがよく分かります。 ☆☆☆☆☆ 『コロナ時代の選挙漫遊記』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 昨年行われた東京都知事選で、「スーパークレイジー君」という党があったのをご存じでしょうか? またオモシロ系が出てきたのかしら……と、スルーしてしまったのですけれど、本を読んで、とても真剣に勝負していたことを知りました。300万円もの供託金を払ってまで挑戦するんですもん。そりゃそうですよね。 この方の演説を、生で見てみたかった。もったいないことをしてしまった。 こんな風に後悔しないで済むように、畠...

人生をやり直したい男の誤算が招くコメディ 映画「LUCK-KEY」 #298

名バイプレーヤーとして知られる俳優が、主演を務めるとき。その心中はドッキドキでしょうね……。 映画「ベテラン」や「タクシー運転手 約束は海を越えて」で味のある演技を披露していたユ・ヘジンにとって、初めての単独主演映画が「LUCK-KEY ラッキー」でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「LUCK-KEY」 https://amzn.to/3watGNT ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 売れない貧乏役者のジェソンは、将来に絶望して自殺を試みます。が、大家の侵入によって失敗。せめて身ぎれいになってからにしようと銭湯に行くことに。石けんを踏んで転倒した男の鍵をすり替え、男のフリをして暮らそうとしますが……。 原作は内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」。リメイク版の試写会で、観客が提案したタイトルが「LUCK-KEY」で、それがそのまま使われることに決まったのだそう。 ☆☆☆☆☆ 映画「鍵泥棒のメソッド」 https://amzn.to/3jEEotv ☆☆☆☆☆ ユ・ヘジンが演じるのは記憶喪失になった男「ヒョヌク」なのですが、ロッカーの鍵をすり替えられてしまったため、周囲には貧乏役者だと思われています。助けてくれた救急隊員の実家である食堂で働くことになりますが、刀さばきはすごいし、客さばきもうまい。だけど彼自身は俳優として成功し、親孝行しなければとマジメに努力します。 (画像はKMDbより) 一方、鍵をすり替えて逃げ出したジェソンの方は、豪勢な「ヒョヌク」の家にビックリ。贅沢三昧に自堕落に暮らし始めますが、隠し部屋で多くの銃を発見してしまいます。 実は「ヒョヌク」は、100%の成功率を誇る伝説の殺し屋だったのです!!! というお話。とにかくおかしな方へ、おかしな方へと話が転がっていく、コメディです。 (画像はKMDbより) 驚くのはユ・ヘジンの身体能力の高さ。趣味は登山と日曜大工だそうですが、いや、すごすぎやろというくらい、見事なアクションをみせています。 映画では、どう見てもおっちゃんなのに身分証は20代だったり、大部屋俳優から出世しちゃったり。 記憶は失っても、努力の仕方は覚えてるんですよね。 逆に、鍵をすり替えたジェソンは、夢はでっかく、だけど行動力はゼロという青年です。ふたりの対照的な生き方は、入れ替わっても続いてしまう。「幸運の鍵」をつかむには、という部分で、ちょっと身に...

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...