「なぜ、紙幣をコピーしてはいけないのか?」
めちゃくちゃ基本的な質問な気がするけど、なんでなんだろう。法律で禁止されているから、なんて答えでは、おもしろくもなんともないので、もうちょっと考えてみます。
ホンモノの紙幣には「ユーリオン」という小さな円形模様があって、コピー機はそのマークを見分けているのだそう。
YouTuberの「水溜りボンド」さんが試しにおもちゃのお札をコンビニで印刷したら、警報が鳴ったとのことでした……。
1998年に公開された映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」には、身代金として準備したお札の番号をせっせとメモするシーンがありました。
「コピーしちゃえばいいのに」
新人ちゃんの素朴なひと言に、みんなで気まずそうに目を見合わせるんです。
“使用する”目的じゃなければ、コピーしてもいいんじゃないのかしら。いやいや、そんな作業に意味はない。
そして、そういう意味の質問じゃない!
「お金は流れる水のようなもの」
そう語るのは、ゴールドマン・サックスで金利トレーディングの仕事をしていた田内学さんです。
え!? ゴールドマン・サックスって、あのゴールドマン・サックス!?
と思いませんか? 超ゴリゴリの、資本主義の権化みたいな企業でしょ?
そんなエリート階級で仕事をされていた方が書いた、経済の“入門”書。いやいや、悪いけど、そんな本はいっぱい見たことがあります。そして結局はつまずくんです。
専門用語に。
よく分からない数字の羅列に。
なんだか壮大なロジックに。
でも、田内さんの著書『お金のむこうに人がいる』には、<専門用語も計算式も出てこない、誰でも最後まで読み通せる「やさしい経済の入門書」です>という帯が付いていました。
読んでみて、思いました。
こういう本が読みたかった!!!
「やさしい経済」って、
・やさしい=難しくない
・やさしい=人に対して
という、両方の意味が含まれているように感じました。
☆☆☆☆☆
『お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門』
☆☆☆☆☆
田内さんがゴールドマン・サックス社を辞めたのは、2年前のこと。理由は「エネルギーが切れた」せいだと語っておられます。
その後、佐渡島庸平さんと知り合い、三田紀房さんの漫画『ドラゴン桜』の制作に協力。ダイヤモンド社の編集者である今野さんとの出会いを経て、書きためた話を書籍化することになったそう。
『お金のむこうに人がいる』で解説されている経済の話は、とてもシンプルです。
わたし(個人)が持っているお財布の内と外。国が持っているお財布の内と外。
これを前提に、銀行ってどういうビジネスをしているところなのか、貿易黒字とはどういうことなのかが語られていきます。
日本では「お金」に対する教育がされないし、わたしが以前仕事をしていた制作の現場では、着手前にギャランティの話をするのは、「なんとなくタブー」な雰囲気がありました。
だからなんとなく口に出せないまま、分からないまま、オトナの時間を長く過ごしてきてしまったのですけれど。
そもそも「お金」ってなんなんでしょうか。
「お金儲けして、何が悪いんですか?」とぶちまけた村上世彰さんは、「お金はしょせん道具」と語っています。
そしてホリエモンこと堀江貴文さんは、「お金とは信用のひとつの表現形態に過ぎない」と書いています。
あるとうれしい。しかも、いっぱいあった方がうれしい気がする。値段を気にしないで欲しいものが買えるし、行きたい場所にいけるし、おいしいものだって食べられる。
でも、田内さんはキッパリと仰います。
「お金があれば、モノが手に入る」と思ってしまう。でも、その向こうには必ず「人」がいるのです。このたとえは、すごく分かる!!!
『お金の向こうに人がいる』の何がすごいって、話を自分ごと化して読めるとこだと思う。
— mame3@韓国映画ファン (@yymame33) October 10, 2021
“あなたが消費しているのは、お金ではなく、誰かの労働だ”
コロナ前、いつもお正月は旅先で迎えていた。働いてくれる方のおかげでゴロゴロできる〜と喜んでたけど、あれがこれなのか。ドキッとする問いも😆 pic.twitter.com/wqDsgBIlt4
各章にはクイズがついていて、第4話のテーマがまさにな問いでした。
お金の価値について考えることと、コンマリ・メソッドが実はとても近いところにあるのだと気付いたり、お金を使う時に「誰が働いて、誰が幸せになるのか」を考えたり。
いままでとは違う形で「お金」について、「経済」について、自分の「生き方」について考える指針になりそうな一冊。
経済の“入門”書といっても、結局難しい話でしょ、と思っている方に、ぜひおすすめしたい。
「もっと早く言ってよ~」って言いたくなりました。
実は、何度か読んだけれど未消化で、もうちょっと考えてみたいと思った章がありました。貿易黒字の話です。
国の財布には「労働の貸し借り」が入っていて、それが貿易の収支を表すのだそう。
読みながらどうしても、韓国コンテンツに切っても切れない歴史的出来事である、1997年の通貨危機を思い浮かべてしまいました。
この時の韓国は「もらい事故で大けがを負った」ともいわれていますが、結果的に国内経済はガタガタになり、ヘッジファンドに食い荒らされ、多くの痛みを残しました。新自由主義を推進し、格差は拡大。OECDの中で、20年連続労災死亡率1位、高齢者自殺率1位という不名誉な記録をつくるほどになっています。
なぜ、韓国経済はこれほど食いちぎられ、社会は壊れていったのか。
いま世界中で話題になっているドラマ「イカゲーム」も、資本主義における勝者と敗者をグロテスクに描いた物語です。
経済が分かれば、人や社会が、なぜこんなにも傷ついたのか、もっと理解できそう。ドラマをもっと深く理解できるかもしれない。
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