王の椅子は、こんなにも孤独に包まれているのか。
映画「王の男」は、16世紀初頭、朝鮮王朝で一番の暴君とされている燕山君(ヨンサングン)と、大道芸人たちが主人公です。
男性同士の恋愛を描いていることから「クィア映画」ともいわれていますが、うーん、どうだろう。どちらかというと、孤独な人間の狂気を強く感じました。
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映画「王の男」
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旅芸人の一座で働くチャンセンとコンギル。コンギルが“夜とぎ”に呼ばれることに反発したチャンセンは、ふたりで一座を飛び出すことに。国一番の芸人になるという決意を胸に都・漢陽にやってきたふたりは、宮廷を皮肉った芸により人気者となる。が、ほどなくして王の側近に捕られ、「王を笑わせることが出来なければ処刑する」と言い渡され……。
これまで暴君として描かれることが多かった燕山君(ヨンサングン)。現在、呼ばれている位は「君」ですが、もともとは「王」で、クーデターによって王位を剥奪された歴史上の人物です。
母を殺された恨みから3度も粛正をしたそうで、この時代は数々の映画やドラマの題材になっています。
イ・ヨンエ主演のドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」も、チャングムの両親は粛正から逃れる時に知り合っていました。
また、「トンイ」の舞台にもなっていた掌楽院は、燕山君が設立したものです。
悪名轟く人物ですが、まじめに執政していた時は、学問を奨励し、音楽や芸能を発展させる功績も残していました。
そんな燕山君を、ベテラン俳優のチョン・ジニョンが演じ、大道芸人のチャンセンはカム・ウソンが、美しすぎる女形のコンギルはイ・ジュンギが演じています。
(画像はKMDbより)
韓国で公開された2006年には、観客動員数の最高記録を塗り替える大ヒットを記録。韓国のアカデミー賞と賞される「大鐘賞」で、最優秀作品賞を受賞しました。
あらためて観てみて、権力者 vs. 庶民という構図って、韓国人の好みなんだなとも感じますね。
権力を笠に着て、あれやれ、これやれと指図する燕山君や内官。逆らえば命がなくなるのですから、芸人たちは従わざるを得ません。
この映画の場合、自分たちで逆襲する前にクーデーターが起きるので、直接的な対決はありません。そこが「ベテラン」などとは違う展開になりますが、その分、孤独な人間同士のつながりがていねいに描かれています。
ぜんぜんビッグネームではないけれど(失礼)、ユン・ヘジンやチョン・ソギョンら、大好きな俳優が多数出演していて、見応えもありました。
(画像はKMDbより)
特に、綱渡り芸を披露するチャンセン役のカム・ウソン。練習風景の画像が残っていました。高い!!
(画像はKMDbより)
韓国の仮面劇は、庶民の日常や支配階級への批判などを題材にした作品が多いのだそう。風刺の笑いの中に、かすかに感じられる痛みの記憶。感傷を強く刺激する音楽も、気持ちがのりやすくてよかったです。まぁ、説明的ともいえるけど……。
時代劇を「分かりやすく」。
それがイ・ジュンイク監督の特徴といえるのかもしれません。
映画「王の男」122分(2005年)
監督:イ・ジュンイク
原作:キム・テウン
脚本:チェ・ソクファン
出演:カム・ウソン、イ・ジュンギ、チョン・ジニョン、チャン・ハンソン、ユ・ヘジン、チョン・ソギョン、イ・スンフン
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