人を信じて待つ、ということは、これほど勇気のいることなのか。
ゴッホの生涯を、史実と想像力で描いた小説、原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んで、人を信じる心について考え込んでしまいました。
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『たゆたえども沈まず』
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19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが"世界を変える一枚"を生んだ。
今でこそ大人気の印象派の絵画ですが、最初に開かれた展示会は酷評の嵐だったそうです。
「印象派」という名前自体も、「描かれているのが“印象”やん」というツッコミからきたもの。そんな異端の絵画だった作品を、金縁の華やかな額縁に入れ、猫足家具の並んだサロンで鑑賞する、という手法で売ったのがポール・デュラン=リュエルという画商です。
『美術史に学ぶビジネス戦略』で詳しく紹介されていて、へー!となりました。
1874年4月15日から開催された第1回美術展に参加したのは、モネやルノワール、シスレーら、日本でも有名な画家たちです。
このひとつ下の世代で、ポスト印象派と呼ばれたのが、ゴッホやゴーギャン。この辺りの人になると、自身の芸術性と生活がリンクしているので、作品に狂気が感じられるようになってしまうのかもしれません。
『たゆたえども沈まず』の主人公であるゴッホは、不遇の時代を過ごし、わずか10年ほどの作家活動で多くの作品を残しました。
若い頃は、働いては解雇され、なんかやりだしては放り投げを繰り返していて、こんな人、現代にもいるよなーという感じがあります。
そんなゴッホを信じて支え続けたのが、弟のテオ。このテオが画商に勤めていたことから、浮世絵に触れたり、いまの流行を知ったりするのですが、ゴッホ自身は、描きたいものしか描けないんですよね。
というか、描くことから逃げるために別のことを始めているようにも思えます。
そんな腰の据わらないゴッホに、真実の言葉を伝えたのが、日本人の画商だった……という展開です。
人物描写も関係性も、ジリジリするくらい暗くて熱い。
人を信じて待つとは、どれほどの覚悟が必要なのかということを、あらためて感じることができました。小説を味わいながら、美術鑑賞の基礎知識を養うこともできそうです。
ベネディクト・カンバーバッチがゴッホを演じた「ゴッホ 真実の手紙」や、ゴッホの最期を描いた「永遠の門 ゴッホの見た未来」がAmazonプライムで配信されているので、こちらも合わせて、ぜひ!
「ゴッホ 真実の手紙」
(画像リンクです)「永遠の門 ゴッホの見た未来」
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