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映画「鋼鉄の雨」#891


ヤン・ウソク監督自身が描いたウェブトゥーン作品「鋼鉄の雨」。映画化第2弾の「スティール・レイン」が、現在日本でも公開されています。


第1弾の「鋼鉄の雨」は、Netflixで配信中。シリーズとはいえ、ストーリーに関連性はないので、どちらから観ても大丈夫です。ただ、主要なキャラクターは同じ俳優が立場を変えて演じているので、「スティール・レイン」から観た方が混乱しなくていいかもしれません。

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映画「鋼鉄の雨」

https://www.netflix.com/title/80226234

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<あらすじ>
北朝鮮でクーデターが起こり、最高指導者が瀕死の重傷を負った。その場に居合わせた元エリート工作員オム・チョルウは、意識不明の最高指導者を連れて韓国へ脱出する。北朝鮮の宣戦布告により緊張が走る中、偶然にも韓国の外交安保首席クァク・チョルウと出会ったオムは、最悪のシナリオを回避するべく奔走するが……。


元エリート工作員オム・チョルウを演じるのは、チョン・ウソン。上官の命令を受けて行動していたものの、予想外の事態に接して、やむなく南へと38度線を越えてしまう。

この設定は、「愛の不時着」を思い出させますね。実際、ヒョンビンたちが使った地下トンネルが、この映画にも登場します。


南側で待ち受けていたのは、クァク・ドウォン演じる韓国政府高官のクァク・チョルウ。なにかと衝突しながら、同じ「チョルウ」という名前をもつふたりがバディを組んで、北の指導者を治療し、送り返すというムリゲーなミッションに挑むんです。

オム・チョルウの漢字名は、厳鐵友。

クァク・チョルウの漢字名は、郭哲宇。

映画タイトルの「(鋼)鉄の雨」も、韓国語読みすると「チョルウ」となります。この「チョルウ」というワードは、「スティール・レイン」にも登場します。邦画タイトルも英語表記にしただけですしね。

で、南のチョルウが、北のチョルウに言うんです。

こんな言葉がある。
「分断国家の国民は、分断の事実よりも、分断を政治的に利用して利益を得る者のために苦しめられる」

この悲劇性が、「スティール・レイン」に引き継がれた一番大きなものだったかもしれません。


マンガが連載されていたのは2011年。映画が韓国で公開されたのは2017年。この間に、南北関係だけでなく、中国とアメリカの関係も大きく変化しました。そのせいか、2021年の時点でこの映画を観ると、大国の選択に疑問符はつく気がしますが。

それでも第54回ペクサン芸術賞で、ヤン・ウソク監督が最優秀監督賞に、チョン・ウソンが最優秀俳優賞に、チョ・ウジンが最優秀助演俳優賞にそれぞれノミネートされるなど、ハードボイルドな演技が高く評価されています。

「南北もの」と呼ばれる、他の国にはないジャンルをもつ韓国映画界。その悲劇性がいい映画を生んできた面もあるので、なんとも皮肉ですよね。そして「鋼鉄の雨」は、「南北もの」の中でも、ピカイチのハードさでした。


映画「鋼鉄の雨」139分(2017年)

監督:ヤン・ウソク

脚本:ヤン・ウソク

原作:ヤン・ウソク

出演:チョン・ウソン、クァク・ドウォン、キム・ガプス、チョ・ウジン、キム・ウィソン、イ・ギョンヨン、チョン・ウォンジュン、チャン・ヒョンソン

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