ヤン・ウソク監督自身が描いたウェブトゥーン作品「鋼鉄の雨」。映画化第2弾の「スティール・レイン」が、現在日本でも公開されています。
第1弾の「鋼鉄の雨」は、Netflixで配信中。シリーズとはいえ、ストーリーに関連性はないので、どちらから観ても大丈夫です。ただ、主要なキャラクターは同じ俳優が立場を変えて演じているので、「スティール・レイン」から観た方が混乱しなくていいかもしれません。
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映画「鋼鉄の雨」
https://www.netflix.com/title/80226234
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北朝鮮でクーデターが起こり、最高指導者が瀕死の重傷を負った。その場に居合わせた元エリート工作員オム・チョルウは、意識不明の最高指導者を連れて韓国へ脱出する。北朝鮮の宣戦布告により緊張が走る中、偶然にも韓国の外交安保首席クァク・チョルウと出会ったオムは、最悪のシナリオを回避するべく奔走するが……。
元エリート工作員オム・チョルウを演じるのは、チョン・ウソン。上官の命令を受けて行動していたものの、予想外の事態に接して、やむなく南へと38度線を越えてしまう。
この設定は、「愛の不時着」を思い出させますね。実際、ヒョンビンたちが使った地下トンネルが、この映画にも登場します。
オム・チョルウの漢字名は、厳鐵友。
クァク・チョルウの漢字名は、郭哲宇。
映画タイトルの「(鋼)鉄の雨」も、韓国語読みすると「チョルウ」となります。この「チョルウ」というワードは、「スティール・レイン」にも登場します。邦画タイトルも英語表記にしただけですしね。
で、南のチョルウが、北のチョルウに言うんです。
「分断国家の国民は、分断の事実よりも、分断を政治的に利用して利益を得る者のために苦しめられる」
この悲劇性が、「スティール・レイン」に引き継がれた一番大きなものだったかもしれません。
マンガが連載されていたのは2011年。映画が韓国で公開されたのは2017年。この間に、南北関係だけでなく、中国とアメリカの関係も大きく変化しました。そのせいか、2021年の時点でこの映画を観ると、大国の選択に疑問符はつく気がしますが。
それでも第54回ペクサン芸術賞で、ヤン・ウソク監督が最優秀監督賞に、チョン・ウソンが最優秀俳優賞に、チョ・ウジンが最優秀助演俳優賞にそれぞれノミネートされるなど、ハードボイルドな演技が高く評価されています。
「南北もの」と呼ばれる、他の国にはないジャンルをもつ韓国映画界。その悲劇性がいい映画を生んできた面もあるので、なんとも皮肉ですよね。そして「鋼鉄の雨」は、「南北もの」の中でも、ピカイチのハードさでした。
映画「鋼鉄の雨」139分(2017年)
監督:ヤン・ウソク
脚本:ヤン・ウソク
原作:ヤン・ウソク
出演:チョン・ウソン、クァク・ドウォン、キム・ガプス、チョ・ウジン、キム・ウィソン、イ・ギョンヨン、チョン・ウォンジュン、チャン・ヒョンソン
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