スキップしてメイン コンテンツに移動

韓流ドラマの法則を押さえた韓国版ロミジュリ ドラマ「愛の不時着」 #335


やっぱりヒョンビンは、強い女と組まないと!

ドラマ「愛の不時着」を観て、うっすら感じていたことが確信へと変わりました。

☆☆☆☆☆

ドラマ「愛の不時着」
https://www.netflix.com/title/81159258

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
事業家のセリがパラグライダーの事故で不時着したのは、38度線を越えた先・北朝鮮。木に引っかかっていたところを、5中隊の大尉であるリ・ジョンヒョクに発見される。調査のために連行しようとするも、セリは逃走。リ大尉は結局、彼女を保護することに。穏便に南へと帰そうと計画を練りますが、失敗ばかり。一方、韓国ではセリの失踪から後継者争いが紛糾。セリは死んだと決めつける2人の兄を見て、母は心穏やかではいられず……。


全16話で、1話の平均が80分ほど。ちょっと腰を据えて観なきゃ、となりそうですが、ご心配なく。

次を! 次を観なきゃ!!

回が進むごとに、そんな気持ちにさせられます。


「逆転の女王」「星から来たあなた」「青い海の伝説」など、ロマンティックな恋愛ドラマを手がけてきたパク・チウンの脚本。制作は「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」のスタジオドラゴン。メロメロでラブラブ、涙腺刺激ポイント超多めのドラマ作りに長けているチームなんです。

ここに、北朝鮮出身者がアシスタントとして参加。脱北者(北朝鮮から韓国に来た人)に取材し、言葉や生活、市場の様子といったディテールを埋めていったのだそう。

「愛の不時着」をひと言で表すなら、韓流ドラマ版「ロミオとジュリエット」です。

韓国と北朝鮮。同じ民族なのに、いまだ「終戦」を迎えていないふたつの国の人々は、発見されたとたん通報されてしまう存在なのです。映画では南北関係をテーマとしたものも多くありますが、テレビドラマでここまで正面から南北の恋愛を描いたものはなかったかも。


運命の人だとしても、一緒にはいられない。


設定からしてムリゲー感満載、悲劇的な結末しか思い浮かびません。おまけにそれぞれの国で、相手の国を悪く言い合っているのです。誤解していることは多いはず。それらをユーモアに転換し、一大恋物語に仕立てた手腕はさすがだなと感じました。

ルール厳守、ジョークの素養はなし、お堅い軍人リ・ジョンヒョク大尉を演じるのは、ヒョンビンです。2003年にKBSのドラマでデビュー。彼を一躍有名にしたのは、2005年の「私の名前はキム・サムスン」でした。


「愛の不時着」には、韓国ドラマあるあるが詰め込まれ、過去作品をコミカルにオマージュすることで笑いを誘っています。まぁ、知らなくても笑えるので大丈夫。

で、「私の名前はキム・サムスン」でヒョンビンが演じたジノンと、「愛の不時着」のリ大尉にも共通点がいっぱいあるんです。


・兄を亡くし、心に深い傷を持つ

・ピアノを弾く

・親が権力者

・婚約者(恋人)のフリをしている間に恋に発展

・ホンモノの婚約者(恋人)がいる


これらは韓流ドラマのとてもオーソドックスな設定でもあるんですよね。だけど、ヒョンビンの人気作となったドラマは、ヒロインがだいぶ強めなんです。

「私の名前はキム・サムスン」のヒロインであるキム・サムスンは、有能なパティシエです。背が高いし、少しぽっちゃりしてるし、毒舌だしで迫力満点の強さを持っています。でも、中身は乙女。ある意味、ジノンの方が「はかない」役柄で、ケンカしながら引かれ合うふたりのやり取りが見どころでした。


一方の「愛の不時着」では。


ヒロインのセリは、財閥の娘でありながら、たったひとりで事業を起こし、成功を収めています。好きな言葉は「ストップ高、高収益、業界1位」、好きな映画は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」というイケイケ感。

気が強く、自立していて、男の保護なんて求めていない。そんな強いヒロインこそ、ヒョンビンの演技を際立たせるものなのです。


2019年の夏はヒョンビン主演の映画が二本も公開されたので、ひとりヒョンビン祭をしていました。「ザ・ネゴシエーション」は、セリを演じたソン・イェジンと共演。モニターを通して人質交渉をする間柄だったので、同じシーンでの撮影はほんのちょっとだったそう。

https://note.com/33_33/n/nd13ccb08e6d1

「愛の不時着」はロミオとジュリエットなふたりによる恋愛ドラマですが、家族の中でのセリの立場は、フェミニズムの高まりとも呼応して見えて、興味深かったです。兄を超える活躍を、母から諫められるんです。実の母ではないとはいえ、この仕打ち。


帰りたいけど、帰れない。帰っても誰も喜ばないかもしれない。


普段は自信満々なセリが、ふと見せる弱気は、ドラマ沼へと誘う一本道でもありました。泣き顔・はかない顔・憂い顔が得意な女優……と感じていたソン・イェジンは、セリを演じるのにぴったり。


男からも、家族からも自立した、新たなヒロイン像。


これが、わたしがこのドラマに引かれたところでした。


ヒョンビン×北朝鮮なまりは、映画「コンフィデンシャル/共助」で経験済み。それでもセリフに合わせたトーンを体得するべく、猛特訓があったようです。


「愛の不時着」に出てくる韓国ドラマについては、こちらの記事が詳しいです。


「北朝鮮の描写ってどこまでリアルなの?」という疑問を解き明かした記事。6〜7割は実際に近く、北朝鮮なまりのセリフが一番上手だったのは、ピョ・チス役のヤン・ギョンウォンさんだそう。


ドラマ情報「愛の不時着」 tvN 全16話(2019年)

監督:イ・ジョンヒョ

脚本:パク・ジウン

出演:ヒョンビン、ソン・イェジン、キム・ジョンヒョン、ソ・ジヘ

コメント

このブログの人気の投稿

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強...

日本語を使いこなすために 『助詞・助動詞の辞典』 #478

「校正・校閲」は、「間違い探し」と思っている方が多いようで、とても残念に感じています。「間違い探し」ゲームのようなものなら、どれだけ気楽なことか! わたしが校正を教わった師匠は、「情報を正しくすること」と説明していました。資料をあたったり、日付と曜日を確認したりといった「情報」を確認し、「正しく」整えること。 その中にはもちろん、日本語の文法に合っているかどうかも含まれます。ただ、根拠のない指摘はできないんです。「なんとなく、感覚的に」とか、「わたしならこうは書かない」と思うことがあっても、根拠がなければ単なる揚げ足取りに思われてしまうから。 今の会社でわたしが校正を担当しているのは、主に企業のリリースとweb記事です。以前はインターンの学生に書いてもらった記事も読んでいたのですが、その時いちばん感じたことは。 「日本語の文法を知らない人が多すぎる!!!」 でした。 主語と述語が合わない、いわゆる「ねじれ文」を見たとき。「名詞がね~」や「受け身はね……」なんて説明をしても、「受け身ってなんですか?」から話が始まるのです。道は遠い……。というわけで、自分の勉強のために買った日本語の辞書が『助詞・助動詞の辞典』と『動詞・形容詞・副詞の事典』です。 ☆☆☆☆☆ 『助詞・助動詞の辞典』 https://amzn.to/2U7PWL1 『動詞・形容詞・副詞の事典』 https://amzn.to/3q8Nn7z ☆☆☆☆☆ (なんかビックリする値段になってるからご注意を……。定価は2800円です) この本、どちらも早稲田大学日本語研究教育センター所長の森田良行さんがまとめたものなのですが、「辞典」と「事典」なことにお気づきでしょうか。 『助詞・助動詞の辞典』の方は、「は」と「が」の違いといった解説を載せたもの。 一方の『動詞・形容詞・副詞の事典』はというと、各品詞ごとに文型や用法、類義語を集めた事例の本だからです。 特に重宝しているのは、『助詞・助動詞の辞典』にある「ので」と「から」の違いや、「に」と「へ」の違いです。ざっくり説明すると、こうなります。 「に」:場所→ 駅に行く(駅自体に用事がある) 「へ」:方向→ 駅へ行く(駅の方向に向かう) 一文字違うだけで、ニュアンスがちょっと違うんですよね。はぁ、日本語って奥深い。 日本語学者の方なら、古典の○○の頃には「を」で受けて...