中野京子さんの『怖い絵』は、「背景を知る」ことの大切さを教えてくれた本でした。
知識を持って見ることで、より深く味わうことができる。それは、美術だけでなく、小説や映画などでも同じかもしれません。
なによりドラマチック!
中野さんは「自分は美術の専門家ではなく、ドイツ文学を研究している者なのに」と書いておられましたが、だからこそ、「感覚」ではない美術鑑賞に着目した本が出来上がったともいえそうです。
☆☆☆☆☆
『怖い絵』
☆☆☆☆☆
多くのシリーズが刊行されていて、2017年にはシリーズの10周年を記念した「怖い絵」展も開催されました。
この時の目玉だったのが、ポール・ドラローシュが描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。思っていたよりも巨大で、堪能しました。
レディ・ジェーン・グレイは、在位9日でロンドン塔に幽閉され、処刑されてしまったというイギリス最初の女王です。「ジェーン女王」ではなく、「レディ」と呼ばれているところがすでに、悲劇の匂いがしますね。
処刑された時は、わずか16歳。結婚してから間もなかったそうで、左手にはめた指輪がピッカピカでした。本で彼女の境遇を知っていたからこそ、それに気付いたのだと思います。そして涙を誘われました……。
ドガの「踊り子」や、「サロメ」など、有名な絵も掲載されています。原田マハさんの小説『サロメ』を読んだときも、「怖い絵」展で見た絵を思い出しました。
背景を知っていると、描いた人の情念まで受け取ってしまいそうだな。
コメント
コメントを投稿