作品における「空白」は、なにを意味するのか。
特にラストシーンの「ご想像にお任せします」は、いろんな気持ちが刺激されちゃいますよね。
ジェフリー・アーチャーの『十二枚のだまし絵』には、「焼き加減はお好みで…」という短編があって、ここでは結末を「焼き加減」で選ぶことができます。こういうの、すごく楽しい。
映画でも、どうともとれるラストシーンが話題になることがあります。
最近の映画だと、ユ・アインとユ・ジェミョンが“犯罪者”コンビを演じた映画「声もなく」が最高にウワウワしました。
映画でも、マンガでも、小説でも、作品の中で登場する小道具、景色、セリフ、行動などなどには、すべて意味がある。
作品を味わいつくすために、まず読みを深めてみませんか?という本が、小林真大さんの『やさしい文学レッスン 「読み」を深める20の手法』です。
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『やさしい文学レッスン 「読み」を深める20の手法』
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フランスの思想家であるツヴェタン・トドロフによると、「読み方」には3つの手法があるそう。
1. 投影:作品が作られた背景を分析する方法
2. 論評:文章に登場するレトリックや心理描写を分析する方法
3. 読み:作品をひとつの大きなシステムと考え、構造を分析する方法
こうした「読み方」があることを踏まえて、本書では、書き出しや時間、空間、比喩や象徴といった切り口から、名作文学の「読み方」を紐解いていきます。
教科書で読んだくらいだわ……という小説なんかもあって、「そういう意味だったの!?」なんていう発見に、自分の読みの浅さを思い知りました。
小説をよく読む人や、映画好きの人の中には、あんまり難しいことを考えずに、ただ作品世界を味わいたいという方もいると思います。
でも。
こうした「読み方」を知っていると、人生に奥行きが出ていくような気がするんです。
ああ、人間って、けっきょく古今東西、同じようなことで悩んでいるんだなと思ったり。
この文化圏ではこういうことに幸せを感じるんだなと思ったり。
わたしはビジネス書も小説も読むけど、「学び」を求めてはいないかもしれません。どちらかというと、「刺激」かな。
見たことのない世界を知り、思いがけない発想に出会い、自分でも意識していなかった感情に気付く。
作品に「空白」を用いることができるということは、作者が読者を信じてくれているように感じます。
だから、全身で受け取りたい。文字で綴られた、豊かな世界を。
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