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『「言葉にできる」は武器になる。』#993


今日から新年度。

新しい仕事場に向かう人、社会人デビューをする人、昨日までと同じ仲間と仕事をしている人たちにも、絶賛おすすめしたい本が、梅田悟司さんの『「言葉にできる」は武器になる。』です。

特に社会人一日目を迎える方は、「言葉にできる」ことの可能性を感じてほしい。

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『「言葉にできる」は武器になる。』

(画像リンクです)

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自分の考えていることがうまく言葉にできない、伝わらない、そしてモヤモヤしちゃう……って、よくありませんか?

コピーライターの梅田悟司さんのお考えは、これ。

“言葉が意見を伝える道具ならば、まず、意見を育てる必要があるのではないか?”

言葉には、人に伝えるための「外に向かう言葉」と、自分の思考を深めるための「内なる言葉」の2種類があります。「外に向かう言葉」は、外に向かっている分、分かりやすいのでハウツーで学びやすいんですよね。

でも、大切なのは自分の考えを広げたり、奥行きをもたせたりするための「内なる言葉」。

この「内なる言葉」を深めるためのエクササイズが、「T字型思考法」です。

まずは頭の中に浮かんだ言葉をそのまま書き出し、それに対して「なぜ?」「それで?」「本当に?」と、3つの観点から問いかけていきます。

「なぜ?」:考えを掘り下げる → 下に

「それで?」:考えを進める → 右に

「本当に?」:考えを戻す → 左に

こうして「T字型」に書き出すことで、モヤモヤしているものが明確になり、考えの土台をつくることができるとのこと。


黒猫の「大吉」との暮らしで学んだことを綴った『捨て猫に拾われた男』も大好きだったんですが、この『「言葉にできる」は武器になる。』は、大好きすぎて、いろんな人に勧めてきました。毎年、新人研修の課題図書にもしていたくらいです。

忙しさに追われたり、言いたいことを言えない環境だったりすると、自分が何を感じているのか分からなくなってしまうことがあります。

毎年多くの新人たちと出会い、仕事の醍醐味を感じながら、大人語の世界にアワアワし、チャレンジと理不尽の間に泣く姿を見てきました。

そんなときこそ、ぜひ自分の感情について振り返りましょう。

「T字型思考法」はアイディア出しにも使えるものですが、日々の振り返りにも使えるシンプルなエクササイズです。

AIにだって文章が書ける時代に生きているわたしたち。人間が使えるのは、自分の感覚であり、感情だと思います。

自分の言葉を育てるということは、つまり、人格を磨くことといえるのかも。それこそが、人間が手にするべき「武器」ですよね。


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