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わたしを悩ませる“センス”の正体 『センスは知識からはじまる』 #183

「考える→アイデアを出す→説明する→書いてみる」までいくと、自ずと感じるのが「センス」の有無です。こうして毎日noteを更新しながら、心から実感するのです。 わたし、ホントにセンスないわー。才能ないわー。 こんなにもわたしを悩ませる「センス」とは何なのか。 「くまモン」のアートディレクターである水野学さんは、著書『センスは知識からはじまる』の中で、「センスは生まれついたものではなく、あらゆる分野の知識を蓄積すること」と語っています。 ☆☆☆☆☆ 『センスは知識からはじまる』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 本で語られている「センス」とは。 “「センスのよさ」とは、数値化できない、事象のよし悪しを判断し、最適化する能力” 「センス」が「能力」ということは、誰でも磨いて伸ばすことができるはずです。では、どうするか。水野さんは「普通」を知ることが大切としています。 「普通」を知るためには、「いいもの」と「悪いもの」の両方を知る必要がありますよね。その真ん中が分かることが第一段階。 普通を知り、その能力を向上させるためには、観察と几帳面さを維持することが大事とのことです。 効率よく知識を集め、センスをよくしたいなら、これ。 王道を知る ↓ いま流行しているものを知る ↓ 「共通項」や「一定のルール」を探る なぜこれだけ知識にこだわるのかというと、知識があれば、より自由に発想できるからです。 知識を「紙」、センスを「絵」にたとえ、知識があるということはそれだけ広い大きな「紙」を使える。だから自由な「絵」を描くことができるのだとしています。これはデザイン業界だけでなく、どんな仕事にも通じる考え方だと思います。 センスとは「知識の集積」だから。 本でこのくだりを読んでいて「あれ?」と思いました。ジェームス W.ヤングの『アイデアのつくり方』には、 アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである。組み合わせるための情報をたくさん集めよ。 とあった! はい、というわけで、「考える→アイデアを出す→説明する→書いてみる→センスを磨く」は、見事に円環の中にあることが分かりました。笑 「センスがないから分からない、できない」は、言い訳でしかない。分からないのは、センスを磨く努力をしていないから、と水野さんは言っています。キビシー。 でも、これが真実で現実です。 企画の仕事をしている、仕事力

はじめに読むべき決定版 『言葉ダイエット』 #182

「考える→アイデアを出す→説明する」の本に続いて、いよいよ「書き方」です。近年、文章指南の本がかなりの数、出版されています。以前は文法に着目した「文章読本」が多かったように思いますが、最近では「読みやすさ」「伝わりやすさ」を重視したものが増えたなと感じます。それだけ書くことに悩む人が多いのでしょう。 「書き方」指南の本が増えたことで、混同されているのでは?と感じる言葉が、「文章」と「文書」です。 文:一組の主語と述語とを含む、言語表現の一単位。 文章:文よりも大きい言語単位で、通常は複数の文から構成される。 文書:文字や記号を用いて、人の意思を書き表したもの。 『広辞苑』より 「文」とは、マル(句点)を打って区切りをつけるまで、と考えると分かりやすいかもしれません。 「・・・・・。」←こういうのですね。 「文」を複数集めたものが「文章」、そして「文章」を集めて意思を表したものが「文書」です。 なので、「バズる文章」という言葉には、わたしは違和感を持ちます。バズっているツイートなどをみると、誤字や文法的な間違いがあったりしますが、「内容=文書」を見て、おもしろいと思うから「いいね」を押すのでは?と思うからです。 文章力 <<< ネタ ではないか、と感じています。 「文書」としての記事やツイートを磨きたい!と考える方は、アイデアや企画の本を読むことをおすすめします。そうではなく、普段書いている「文章」をなんとかしたい!という方には、橋口幸生さんの『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』がおすすめです。 ☆☆☆☆☆ 『言葉ダイエット』 https://amzn.to/3fY5qtN ☆☆☆☆☆ 西島さん、中村さんと同じく、橋口さんもコピーライターでいらっしゃいます。やっぱりコピーライターという人々は、「考える」速度も深度も違うんですよ。知らんけど。考えてみたら、ジェームス W.ヤングから始まって博・電・博・電になってた。偶然です。 この本のいいところは、文章を書くにあたって最低限必要なことがとてもコンパクトにまとまっていることです。ここに書かれていることをきちんと守っていけば、逆に、分かりにくい文章は書けなくなるはず、です。 “<言葉ダイエットの極意> ・一文一意 ・一文は60文字以内 ・抽象論禁止 ・繰り返し禁止 ・ムダな敬語禁止 ・表記統一 ・

話すとは“聞く”ことなのだ 『本日は、お日柄もよく』 #116

朝から快晴の東京です。「お日柄もよく」という言葉にぴったりの空だったので、原田マハさんの小説『本日は、お日柄もよく』について書こうと思います。 ☆☆☆☆☆ 『本日は、お日柄もよく』 https://amzn.to/2UczBoW ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 老舗お菓子会社に勤める二ノ宮こと葉は、幼なじみの結婚式で感動的なスピーチをする女性に出会います。彼女は伝説のスピーチライター久遠久美。空気を一変させる言葉に魅せられ、弟子入りすることを決意します。久美の教えを受けながら、初めて抜擢された仕事は、「政権交代」を叫ぶ野党候補者のスピーチライター。こと葉は、有権者の心を動かすスピーチを書くことができるのか!? スピーチライターという仕事は、ジョン・F・ケネディ大統領の就任演説を書いたセオドア・C・ソレンセンの活躍で有名になったそう。近年、注目された人としては、オバマの大統領就任演説を執筆したジョン・ファブローがいます。 (スパイダーマンやアベンジャーズシリーズで俳優としても監督としても活躍しているファブローおじさんとは別人) 古くからヨーロッパでは、政治家には、スピーチが必須の教養と考えられていました。さまざまな立場、人種、そして不満を抱えている人たちを前に、自分の考えを話す必要があるからです。 でも苦手な王だっています。 スピーチに苦しんだ王を描いた映画が「英国王のスピーチ」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「英国王のスピーチ」 https://amzn.to/3lT0cTb ☆☆☆☆☆ お兄ちゃんが王位より恋を選んでしまったために、英国王になってしまったジョージ6世の物語。彼は吃音に悩んでいて、スピーチが大の苦手。 この映画のいいところは、吃音を「治す」のではなく、「付き合い方」を身につけるところなんですよね。 映画は「話し方」に焦点をあてていますが、『本日は、お日柄もよく』の方は、これに加えて「言葉の選び方」を描いています。 けっこうお気楽なOL生活から一転、スピーチライターの修業をすることになったこと葉のライバルとなるのが、大手広告代理店のコピーライター・ワダカマです。 「言葉は操るものだ」が信条の男。 彼が「師匠」と仰ぐ人物は、「リスニングボランティア」をしている北原正子という人物です。 書く人でもなく、話す人でもなく、「聞く」人なんです。 黙って人の話を聞く、という行為

『小説の言葉尻をとらえてみた』#76

校正の仕事をしていると、間違いなのか、造語なのか、判断に迷うことがあります。それも、しょっちゅう。 若手のライターは語彙が少ないこともあって、無邪気に自由に書き綴ることが多い。それはそれでいいんだけれど、日本語としての美しさが壊れていく現場にいるような思いを抱くことも。 『三省堂国語辞典』編集委員である飯間浩明さんは、新しい言葉の使い方に出合う瞬間をとても楽しんでおられるようで、心から尊敬しました。 『小説の言葉尻をとらえてみた』は、そんな小説と新しい言葉の出合いを綴った本です。 ☆☆☆☆☆ 『小説の言葉尻をとらえてみた』 https://amzn.to/2RTvhty ☆☆☆☆☆ エンタメ、ホラー、時代小説の“現場”に、飯間さん自身が潜入。登場人物の何気ないひと言を拾い上げ、解説がなされます。そのおもしろさといったら! 「ご苦労さまでした」 ビジネスマナーとしては、この言葉は「目上」の人に使えませんと教えることが多いんですよね。でも、それって本当にそうなのか? ねぎらいの言葉として使える表現はないの? そんな疑問に答えてくれます。 わたしは「真逆」という言葉に抵抗がある方なのですが、やはり歴史の浅い言葉でした。広まったのは21世紀になってから、とされています。飯間さん自身、目にしたものの、読み方がずっと分からなかったのだとか。 一方で、舞台となっている時代に存在しない言葉が登場することを、おもしろがってもおられます。 言葉は生き物です。時代や環境に合わせて変化していくものだと思います。飯間さんは辞書の編集委員として、新しい語、新しい使い方に興味津々で、(それって単なる誤字では……)と思うような言葉も、ドーーーンと受け止める。 ああ、なんて懐の深い方なんだろう。 小説の楽しみ方のひとつとして、言葉の森を行く手引きとして、何度も味わえる探検物語なのです。 飯間さんの本では、『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』もおすすめです。 『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』#6  

『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』#6

校閲者のお仕事本シリーズ。本日は飯間浩明さんの『ことばから誤解が生まれる - 「伝わらない日本語」見本帳』です。 ☆☆☆☆☆ 『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』 https://amzn.to/2Spc0k5 ☆☆☆☆☆ 著者の飯間さんは国語辞典編纂者です。最初に「言葉によって誤解が生まれる事態は避けられない」とキッパリ宣言。でも誤解されないようにすることはできるはず。だから言葉を上手に扱いましょうと、音声・文法・語義など7テーマに分けて言葉を分析・解説しています。 日本語は同音異義語が多いので、ちょっと使い方を間違うと一気に関係を壊してしまいそう。でも、これをポジティブに考えると、「誤解が生まれる元を知っておけば、気持ちのいいコミュニケーションがとれる」ということ。 なかでも、何気ない使い分けでニュアンスが大きく変わってしまう助詞の項目がおすすめです。 a「グラスに酒が半分はある」 b「グラスに酒が半分もある」 c「グラスに酒が半分しかない」 d「グラスに酒が半分だけある」 事実はひとつなのに、心象を反映してニュアンスが変わっていますよね。変えているのは、助詞です。 よく冗談で言われる「今日 は きれいね」も同じです。「は」は他のものと区別するニュアンスを持つので、「 (いつもと違って) 今日 は きれいね」と聞こえてしまう。いやいや、そんなつもりで言ったんじゃないんですよーと弁解する前に、「 (いつもきれいだけど) 今日 も きれいね」と、意識して助詞を選択できるようになりたいですね。 言葉には多義性があるので、この言い方は間違い、この使い方はNGと切り捨てないのが飯間さんのスタンスです。 飯間さんのこういう姿勢がわたしは好きなんです。 “あることばを、自分がいくら「正しい」意味で使おうとしても、相手も同様にその意味で使っているとは限りません。(中略)「これが正しい意味だ」と、みんなが納得できる規範は、結局、どこにもありません。” 「口は災いの元(門)」「もの言へば唇寒し秋の風」などなど、日本は言葉にしないことをよしとしてきたようですが、いまの時代、そんなわけにはいきません。おまけに「沈黙」していたって誤解は生じます。 「誤解」とは、「情報処理の誤り」です。この本にあるような知識があれば、思い込みで人を断罪するような解釈はなくなるのかなと感

「#1000日チャレンジ」1日目 山田ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 #1

今日から「#1000日チャレンジ」を始めることにしました。 「#1000日チャレンジ」とは、さとなおさんのアニサキス・アレルギーとの闘いを楽しい活動にしようという取り組みのこと。チャレンジの内容は参加者それぞれ。より詳しく知りたい方は、さとなおさんのこちらの記事を参考にしてください。 1000日チャレンジ、始めます|さとなお(佐藤尚之)|note   チャレンジの成就を願う気持ちと、せっかくだからわたしも何かやってみようと思い、こちらのふたつにチャレンジすることに。 キツイこと:本か映画を1000本紹介する できそうなこと:毎日一万歩歩く 「負け続け」から「勝ち」にいく戦略へ。 さとなおさんの #1000日チャレンジ の成就を願って、わたしも始めます! キツイこと:書評1000本書く できそうなこと:毎日一万歩歩く スタート日は2019年7月14日。 2022年4月8日まで。 https://t.co/U4typ28Wh8 — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) July 14, 2019 というわけで、初日の書評は山田ズーニーさんの『あなたの話はなぜ「通じない」のか』です。 言いたいことがうまくまとめられない。話が回りくどくいと言われる。「結論から言え」と言われて混乱する。 そんな経験を持つ人は多いと思う。この本は、そんな悩みを持つ人はもちろん、周囲に話しが分かりにくい人がいると感じている人におすすめだ。 ☆☆☆☆☆ 『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ わたしはいま、校閲の仕事をしながら社内研修を担当している。講師をすることもある。 まだ数年にしかならないが、身にしみて感じていることがある。 人は人の話を聞かない。 難易度や理解力もあるだろう。でも、それ以上に、講師とメンバーの間には薄い幕がかかっているような気がしていた。ちなみに、ほとんどの講義は社内の人間に講師を務めてもらっている。 マジメな話が続くと寝てしまう。そりゃそうだ。では、とエンタメ要素を増やしてみると、「楽しかった」という感想は増えるが、3日も経てば忘れてしまう。 この間、さまざまな本を読んだり、セミナーに参加したりして、「講師の話し方」に注目してきた。 そんな中で、山田ズーニーさんの『あなたの話はなぜ「通じない」のか』が一番分かりやすくまとまっ

校閲レディの仕事術 Part II・「読み方」について

突然ですが、こちらの文章を読んでみてください。 「こんにちは 皆さんお元気ですか? 私は元気です。」 と読んだ方、もう一度、一文字ずつ読んでみましょう。 「あれ? あぁぁ!」 と、なった方、これからご紹介する 「校正的読み方」 をぜひご覧ください。 決して、意地悪したわけではないですよ! 今日は校閲レディの仕事術 Part IIとして、文字の「読み方」について書いてみたいと思います。 Part Iはこちらから。 校閲レディの仕事術・校正ってどうやってやるの? Part I   「校正的読み方」:どう見るのか 上の文章をスルリと読めるのは、「Typoglycemia」という現象だそうです。 「Typoglycemia」とは、単語の最初と最後の文字が合っていれば、中の文字が入れ替わっても読めてしまう現象のこと。 ずいぶん前に話題になりましたよね。まだ日本語の名称はないそうですが、要するに、「そら目」しちゃうということかと思います。 デジタル世界では、「こんちには」と「こんにちは」はまったくの別物。読み間違いという現象は起きません。 それはそれでいいのですが、人間がそれをやると疲れてしまいます。だから、“だいたい”のところで“ふんわり”と把握する能力は、生きる知恵なのではないかとわたしは感じるのです。 この大雑把でゆる~い感じはO型人間にとって、とてもうれしい! 大好き! サイコー! なんですが。 校閲レディとして仕事をする時は、この技は使えません。 ダメ。絶対。 校正の読み方とは、こちらです。 1 字 ず つ つ ぶ す なぜ、「つぶす」と呼ぶのか? 理由はよく分かりませんが、色鉛筆でひと文字ずつマークしていくので、確かに「つぶしている感」はある気がします。 webの短い記事を校正する時は、色鉛筆を使いますが、書籍などの長い文章を校正する時は、使いません。たぶん、疲れちゃうからでしょうね。 Part I で書いたように、校正の作業の流れは下記のとおりです。 <校正の流れ> 1 情報確認 2 資料合わせ 3 素読み 4 整合性 5 ネガティブチェック そして、どの作業においても、 1 字 ず つ つ ぶ す のです。 大変でしょ?笑 でも、残念ながら、校正のすべては、このひと言に尽きるのです。 「校正的読み方」:何を見るのか 1字ずつマークするだけなら簡単なのですが、もち