「ニコニコしながら歩くな」 十年ほど前、初めてスコットランドに行く時に、日本人だけどシンガポールとイギリスで育った友人がくれたアドバイスです。 いま考えてもひっどいなー。 でも、そうでなくてもボンヤリのわたしが、厳しい生存競争を戦っている人たちの中を歩いたらどうなるか。彼女には分かっていたのだと思います。 あれから何度もイギリス(イングランドとスコットランド)に行きましたが、いずれも合気道の海外セミナーに参加していたので、滞在中のほとんどの時間は体育館で過ごしました。それでもちょこっと町歩きをしたり、ショッピングに出かけたりくらいの時間はある。 どんな顔をして歩いたらいいんだろう。 いつも彼女のアドバイスが頭にあって、かえって悩みました。とはいえ、わたしが外出する時は、現地の合気道仲間ががっちりと周りを固めてくれるので怖い思いをすることはなかったんですけれど。 ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んで、合気道仲間について、イギリスという国について、わたしは本当にほんの一面しか見ていなかったのだと気がつきました。そして冒頭でご紹介した友人のアドバイスの真意についても。 ☆☆☆☆☆ 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、イギリスの南端にあるブライトンで保育士として働くみかこさんの息子くんが通う、「元・底辺中学校」での一年半を綴ったノンフィクションです。 イギリスという階級社会における格差について知ることができる上、複数のアイデンティティを持つひとりの少年の物語としても、子どもに育てられる親の物語としても読むことができます。 子育て中の方、外国人とふれ合うことがある人、多様性について知りたい人、アイデンティティに迷っている人に絶賛おすすめ。ポイントを紹介していきます。 ちょっとブルーが通う中学校とは カトリックの名門小学校から、家の近くにある公立中学校に通うことになった息子くん。そこは数年前まで「底辺中学校」と呼ばれていた学校でした。 息子くんが通う頃には学校ランキングで真ん中辺りまで上がったため「元」が付いているのです。 ピーター・ラビットが出てきそうな上品なミドルクラスの小学校から、盗んだバイクで走り出すなんてかわいい!と思ってしまうくらいの