韓国の作家によるSF小説は、1990年代のパソコン通信時代から話題になり始めたのだそうです。
映画やドラマでも、最近はSF作品が増えていますよね。比較的安い予算でクオリティの高いCG処理が可能になったこともあり、ビジュアル的にも豪華です。
韓国初の宇宙SF映画として注目されていた「スペース・スウィーパーズ」は、2度の公開延期の末、Netflixで配信されました。大きなスクリーンで観たかったなーと思う映画です。
ほのぼのしたファンタジックなSF小説『保健室のアン・ウニョン先生』は、チョン・ユミ主演でドラマ化もされています。
小説版
ドラマ版
「シーシュポス:The Myth」は、タイムスリップが招くミステリー。展開が早くて、とても楽しめました。
ただ、これら作品は、「男」のドラマだなーと感じます。どれも「闘う女性」が主人公ですし、彼女たちは男に守られたいなんて1ミリも考えていないけれど、「たくましく闘う」姿は、男性的。
そんな世界の正反対に位置するのが、キム・チョヨプさんのSF短編集『わたしたちが光の速さで進めないなら』でした。
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『わたしたちが光の速さで進めないなら』
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「息苦しい」はずの地球に降りたまま、帰らない巡礼者を待つ女性。行方不明になって数十年後、宇宙から帰ってきた祖母が語る異星人。廃棄間近な宇宙ステーションで、家族のいる星へ行く船を待ち続ける老女。初出産を前に、記憶を保管する図書館で母の思いを探す女性。
どの登場人物も、しんみりやさしくて、しみじみとした孤独を抱えています。
その孤独が、そーーっと差し出されてくる。“未来”の人も、やっぱり同じ人間なのだよな、と感じさせてくれます。
ワープ航法やコールドスリープといった「定番」の技術はもちろん、感情を物質化するといった思いがけない技術も登場。一編、一編が、たぶんいろんなSF作品から影響をうけているのだろうなと思います。それが読み取れるくらいになりたいものだ……。
生きていくって、十分に「たくましく闘う」こと。スペクタクルな展開も好きだけれど、じんわり孤独をかみしめる時間もいいんじゃないか。7編の中では「スペクトラム」と「わたしたちが光の速さで進めないなら」が特におすすめ。
絵が伝える過去の記憶。なつかしさを感じる謎。ゾクッとする展開から、やさしさに包まれます。
キム・チョヨプさんの他邦訳は、まだないようですが、SF作家が集結して徹底討論したという『世界SF作家会議』に参加されているようです。いとうせいこうさんと、大森望さんの司会により、全人類に突きつけられた課題を話し合う会議。新井素子さんや冲方丁さんらが出席されています。
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これ読みたい。
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