とにかく大好きな映画があります。脚本も、演出も、俳優も、演技も、全部好き。
「エクストリーム・ジョブ」みたいに、最高級に作り上げられた脚本に拍手したい映画もあったけど。
B級感満載でありつつ、とぼけた味わいにクスッが止まらない「反則王」も好きなんだけど。
コメディのお約束を、とにかく全部つめこんでみました!!!みたいな映画である「7級公務員」は、最高の一本。
ヘタレでマザコンの男が、スパイとしてデビューした先で、元カノと鉢合わせしまう……というストーリーです。
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映画「7級公務員」
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国家情報院の国内産業保安チームで、ミッション成功率100%を誇るスジは、特殊な職業上、恋人のジェジュンにさえ正体を明かせずにいた。スジのウソに疲れ果ててしまったジェジュンは、一方的に別れを告げてロシアへ留学。3年後、国家情報院海外部門所属要員となって帰ってきたジェジュンは、任務中にホテルでトイレ清掃をしているスジを見かけて……。
韓国の公務員は、9級、7級(一般公務員など)、5級(事務官級など)に分かれています。
「7級公務員」は、日本でいう「国家2種」に当たるそう。就活に失敗した学生や、ブラック企業から逃げ出して公務員を目指す、というシーンはドラマでもよく登場しますよね。
2016年の統計では、就活生のうち、一般職公務員を目指す受験生は39.3%にも上っています。
そんな狭き門をようやくくぐり抜け、公務員となったジェジュンですが、あまりにもヘタレなんです……。
演じているのはカン・ジファン。なんとも甘ったるいお坊ちゃま感がぴったりハマっています。2009年に開催された「第46回大鐘賞」で、新人男優賞を受賞しました。
(画像はKMDbより)
ジェジュンが配属されたチームの班長は、リュ・スンリョンが演じています。「エクストリーム・ジョブ」や「サイコキネシス 念力」のコミカルな演技とは違い、今回は、コワモテの方。だけど、ジェジュンがとことんやらかしてくれるので、気の毒になっちゃうくらいです。
「融通のきかない新人を抱えることになった上司」の悲哀を想像していただければ、マッチング度は100%です……。
そんな、どーしようもない男・ジェジュンを愛しつつ、仕事を優先させてきたスジを演じているのはキム・ハヌル。元カレとは正反対の「デキる女」です。
(画像はKMDbより)
シン・テラ監督は、「家族で観られる映画を目指したかった」とインタビューで語っていて、
・暴言
・刃物
・タバコ
といったものを廃して作ることにしたのだとか。
この映画が公開された2000年代の前半の人気作には、ヤン・イクチュン監督の「息もできない」や、ポン・ジュノ監督「殺人の追憶」、ナ・ホンジン監督「チェイサー」といった画面いっぱいにあふれ出す“暴力”がありました。
そうした風潮へのアンチテーゼとしてシン監督が提示したのが、「暴力シーンのないアクションコメディ」なのです。
超能力者やエイリアンに関するSFファンタジー映画を撮りたいと語っていましたが、まだ実現していないようです。
映画「7級公務員」は、わたし的韓国映画ベストにも、コメディ映画ベストにもランクインするほど、大好きな映画です。「ショット」と呼ばれる、「画面の構成」がしっかりしているから、後半の伏線回収がものすごく効いているんです。
「エクストリーム・ジョブ」や「ベテラン」といった韓国コメディが、“ちゃんと”笑えるのは、たぶんここが大きいのだと思います。
誰も傷つけない笑い。
脚本も、演出も、俳優も、演技も、最高に大好きな映画なのです。
映画「7級公務員」112分(2009年)
監督:シン・テラ
脚本:チョン・ソンイル
出演:カン・ジファン、キム・ハヌル、チャン・ヨンナム、リュ・スンリョン、カン・シンイル
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