オタクの欲は黒くて、深い。
権力を手にした人たちの虚栄心を満足させてきた美術品。普通にほしがり、普通に手に入れるなら、なんの問題もないのですけれど。
古代ローマの時代から、美術品のために盗む、嘘をつく、手を加えるといった行為はあったのだそう。
『どうしても欲しい!』に登場するコレクターたちの、愛すべきワガママさに、オタクの熱意は時代を超えて変わらないのだなと感じました。
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『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』
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美術品には、古代から多くのコレクターが存在しています。なんていうか、お上品で“ちゃんとした”人たちばかりなら、ギィ・リブのような天才贋作作家は生まれなかったのでしょうね。
西岡文彦さんの『ビジネス戦略から読む美術史』には、ナポレオンやヒトラーのように権力をつかんだ者は、軍装や建築物をローマ帝国風の威圧的デザインで統一していたことが指摘されています。
でも、陰気な皇帝として知られるローマのティベリウスは、身の回りをせっせとギリシャの美術品で固めたそうなので、ローマに続く道はギリシャに続いているのかも。
“権力や権威を夢見る者にとっては、やはりすべての道はローマに通じているらしい。”
『ビジネス戦略から読む美術史』より
『ビジネス戦略から読む美術史』より
ガキか!?と言いたくなるようなコレクターたちのワガママ振り。それを叶える業者たちの奮闘振り。
現代でいうなら、上司やクライアントの無茶振りに耐えながら悪態をつくようなもんでしょうか。テキトーなことを言って丸め込む業者たちは、やり手の営業マンのようです。
まったく知らなかった美術コレクターの“裏側”の世界。クスクスと呆れる展開ですよ。
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