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映画「君が描く光」#868


絶対的に、自分の味方をしてくれる人はいますか?

「ばあちゃんは、あんたの味方だから。好きなことをやんなさい」

映画「君が描く光」では、12年ぶりに孫娘と再会したおばあちゃんが、そう言ってくれます。だから孫娘ははりきって、何でもやればいいのに。孫娘にはある秘密が隠されていました。

絶望の中でふたりが見つけた光とは?

済州島の海女おばあちゃんケチュンを演じるのは、「ミナリ」でアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン。孫娘ヘジは、「トッケビ」のキム・ゴウンです。

☆☆☆☆☆

映画「君が描く光」

DVD

(画像リンクです)

Amazonプライム配信

(画像リンクです)

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
済州島のベテラン海女ケチュンは、孫娘のヘジと幸せな生活を送っていたが、ある日ヘジがいなくなってしまう。八方手を尽くしたが彼女は見つからない。12年の年月が経過したとき、突然ヘジが帰ってくる。何があったのか言おうとしないヘジと、ケチュンは再び一緒に暮らしはじめるのだが……。


海女という、自分の身体ひとつで自然と向き合う仕事で、生計を立ててきたケチュンおばあちゃん。頭の中は孫娘のヘジのことだけです。

ずーーーーーっと胸を痛めてきて、ようやく会えた孫娘なので、村の人が「なんか怪しい」と言っても、耳を貸さない。ヘジが絵を描くのが好きなのだと分かり、全力で支援します。

ヘジを導く美術教師は、「詩人の恋」のヤン・イクチュンが演じています。

(画像はnamuwikiより)

都会の中で荒んだ生活をしていたヘジ。周囲の人は、“若い女”である自分を利用しようとするばかりで、まともな信頼関係に基づくコミュニケーションを知らないままなんです。

でも。

おばあちゃんは12年ぶりに現われたヘジを、なめるようにかわいがるので、ヘジはちょっと、とまどってしまうんですよね。この辺り、ユン・ヨジョンの“傍若無人”なかわいがり方が「ミナリ」を彷彿させます。

むかしといまをつなぐキーワードとして、飼っていた豚の話が出てくるんですが、実際に済州島では、排泄物をエサとして食べさせていたそう。韓国の水原(スウォン)にあるトイレ博物館にも模型が展示されていました。

左の岩の穴が、いわゆる「ボットン便所」の底です。子豚が倒れているのは、訪れたのが台風の翌日だから……だと思います。笑


都会の子が、こんな「親環境的」なトイレ生活になじめるはずもなく、ヘジが「チッ」という態度なのは、そのせいなのだと思っていました。「おばあちゃんの家」にもそんなシーンがありましたし。


でも、その裏にはヘジが味わってきた壮絶な体験があって、それが明らかになった時、激しく動揺しました。

闇を見過ぎたヘジは、光を見る方法が分かりません。心を開けるのは、たぶんケチュンばあちゃんだけ。

ヘジの絵は、もったいつけるようになかなか画面に出てこないんですが、それもそのはず。最後に大写しにされる絵が、愛にあふれていて、思わず涙しました。

第29回東京国際映画祭アジアの未来部門に選出された映画とのこと。この時は映画館に行けなかったけど、Amazonプライムでようやく観ることができました。

絶対的に、自分の味方をしてくれる人がいれば、どんなことも乗り越えられるかも。

光を見失いそうな時に、ぜひ!


映画「君が描く光」117分(2016年)

監督:チャン

脚本:ヤン・ソヒョン、チャン、ホ・アルム

出演:ユン・ヨジョン、キム・ゴウン、チェ・ミノ、キム・ヒウォン、シン・ウンジョン、ヤン・イクチュン


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