スキップしてメイン コンテンツに移動

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』#1000


「なんで、わざわざ嫌われないといけないの?」

おすすめの本を聞かれたので、『嫌われる勇気』を挙げたわたしに、友人がそう尋ねました。

本から大きな刺激を受け、勇気をもらったと思っていたけれど、当時のわたしは友人の質問にうまく答えることができませんでした。

考えてみたら当然じゃないですかね。

小さいころから、「お友だちとは仲良くしなさい」「人に迷惑をかけないようにしなさい」「最高の食べ物は豆大福」と言われて育ってきたのですから。

2019年7月14日に「1000日チャレンジ」を始めたとき、友人とのこの会話を思い出しました。

今日まで1000日間、ひたすら書き続けてきたのは、友人への回答を考えてみたいと思ったからです。

そして、1000日目を迎えたいま、心から思います。

1000日では足りなかった!!!

それでも、いまの自分で表せることを言葉にしてみようと思います。よろしければお付き合いください。

☆☆☆☆☆

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』

(画像リンクです)

☆☆☆☆☆

『嫌われる勇気』は、哲学者の岸見一郎さんの本『アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために』を、古賀史健さんが手に取ったことによって生まれたそう。

「すべての悩みは、対人関係の悩みである」という、シンプルなのに“そちら側”に踏み込むのが難しい思想の決定版を目指して企画されました。

ここ数年、哲学に注目が集まっているらしく、「哲学する」本が相次いで出版されています。


2022年4月の「100分de名著」が、カントの『永遠平和のために』と、ハイデガーの『存在と時間』と知ってビックリしましたよ。

これ、100分で語れる方がすごくない!?


古来より、哲学がテーマにしてきたのは、善とは何か、愛とは何か、自己とは何か、といった、よりよく生きるための源でした。

上のブログでも書いたように、わたしは大学時代に哲学を学びましたが、善より愛よりあんこをください!と叫びたくなるほど、分からないことに向き合うのは、ホントーーーにつらかったです。

そのつらさと、いまの生きづらさ。

どちらから解放されたいか?と聞かれれば、やはり「生きづらさ」を手放したい。

(画像リンクです)

ありとあらゆる「生きづらさ」を抱えた青年が、哲人の家を訪ねるところから『嫌われる勇気』は始まります。

嫉妬と疑いと憤りと哀しみでパンパンにふくれ上がった青年。哲人との対話を通して、青年は自分を見つめ直し、再び扉を開ける。今度は「自分の人生」を歩くために。

簡単にいうと、『嫌われる勇気』は、これだけの話です。ソクラテスが町の人々と話すのを好んだように、哲人も青年との対話を楽しみ、ふたりの語らいの中で、アドラー心理学の内容が明らかになっていきます。

怒りのデスロードをぶっ飛ばしていた青年が得たものは、「嫌われる勇気」であり、自分の人生を生きるための「処方箋」でもありました。


哲人に怒りをぶちまける青年に、自分を重ね合わせた人も多いのではないでしょうか。

わたしもやはり、青年の姿に自分をみたのですが、それは彼の職業が「司書」だということを知ったときでした。

多くの書籍に囲まれ、その内容に沿って整理・分類する専門職である、司書。そんな仕事をしているにも関わらず、彼は生きる知恵を身につけることができなかったのか……。

もちろん、すべての書籍に目を通すわけではないけれど、いまの悩みに効く本が、どのあたりにあるか、彼が知らないはずがありません。

このことは、哲人が「使用の心理学」と呼ぶ、アドラーの思想を表しているように感じます。

青年の姿は、多くの本に囲まれているにも関わらず、知性として育てられないわたし自身でした。

“アドラーの語っていることは平明なもので理解することは困難ではありません。”

岸見さんがこう語るように、『嫌われる勇気』には、他の哲学書にあるような理解に苦しむ難解な言葉は出てきません。

それでも「わざわざ嫌われようとするなんて……」と、拒絶反応を示す気持ちもよく分かります。

学生時代、わたしが研究していたデンマークの哲学者・キルケゴールは、自己についてこう語っています。

“自分自身を理解するということが、他のすべての理解のための絶対条件である。”
『哲学的断片への結びとしての非学問的あとがき』

実存哲学者として知られるキルケゴールは、もし現代に生きていたら、間違いなくひねくれ者のめんどくさいオッサンと呼ばれていたでしょう。

彼が考え続けたのは、「いま、ここに、ひとりであること」。

「ひとりだからこそ、自分自身を理解することができ、自分を理解していないと、他者とつながることはできない」と考えたキルケゴールは、一方で、「自分を最高のものになしうるのは自分自身だけだ」とも語っています。

簡単に言うと、納豆みたいにベトーッとくっついて、糸引いてちゃダメよ、ってことです。


「自分を変えられるのは、自分だけ」と、哲人も何度も強調していましたよね。こうした点から、アドラーは実存主義の思想を引き継ぐ哲学者でもあるのだと感じていました。

「自分を変えられるのは、自分だけ。最高の自分をつくれるのは、自分だけ」ではありますが、その方法としては、これまで、表面的で手っ取り早いハウツーばかりが重視されてきたように思います。

『7つの習慣』のコヴィー博士の言葉を借りれば、こうした考え方は「個性主義」であり、高い人格を求めたキルケゴールの姿勢とは対極にあるといえます。


行き過ぎた「個性主義」は、ついに相手を押さえつけ、コントロールする術まで考え出しました。押さえつけられた側は、空気を読み、忖度し、誰かの評価を気にして自分を見失い、「生きづらさ」を抱えるように。

こうした流れを断ち切る、理想的な人間関係に必要なのは、「間(ま)」だと思います。アドラーを理解するためにも、この「間」という考え方は有効かもしれません。

たとえば、哲人はこんなふうに説明しています。

“本を読むとき、顔を本に近づけすぎるとなにも見えなくなりますね?”

古賀さん、天才やな……。


インターネットとスマホの普及によって失われたもの。そしてソーシャルディスタンスによってさらに感覚を狂わせられたもの。

それは、「間」です。

合気道の稽古でも、「間」を意識せよといわれます。武道ですから、相手の「間」に踏み込んでしまえば、攻撃されてしまうんですもん。当然ですよね。

だからといって、距離をおけばいいのかというと、そうでもない。武道と間合いについて考えるとき、いつも思い出すのはこの動画です。

(5歳のテコンドーファイターによる競技)


相手のおへそと自分のおへそが糸で結ばれていて、伸びたり縮んだりしているようなイメージで稽古しなさい。

これが合気道でいわれる「間」です。

日常生活でも、こうした「間」を意識できれば、相手を尊重しつつ、自分も守れる立ち位置が分かってくると、ある師範は仰っていました。

もし「あなたのためを思って」と、自分の人生に介入されたら、「No」と言えるかどうか。

相手の意に反して、つまり、相手に嫌われてでも自分を守ること。

「嫌われる勇気」とは、「わざわざ嫌われることをする」のではなく、「嫌われることから逃げない」勇気のことです。難しいのは、その決心を不断に持ち続けることかもしれません。

「嫌われる勇気」をもつことで、人生はシンプルに好転していくと哲人はいいます。

タイトルはおどろおどろしいかもしれないけれど、アドラーの哲学が問いかけてくるのは、たったひとつのことです。

幸せになる勇気はあるか、と。

(画像リンクです)

本が発刊されたのが2013年の12月なので、もう9年近く経っているんですね。

もしいま「生きづらさ」を抱えているのなら。

この機会に、もう一度読んでみてはどうでしょうか。きっと、いまの自分を励ましてくれる言葉、心を強くしてくれる言葉が見つかりますよ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2019年7月14日にスタートした「1000日チャレンジ」は、今日で1000日となりました。

本当に来るんですね、1000日って!?

カンパ~イ!!!


「1000日チャレンジ」を提案されたさとなおさんは、魚介類の完全除去に成功されたそうです。よかった……。ただ、いまもなお闘いは継続中だそうなので、明るい兆しが見えることをお祈りしています。貴重な機会をありがとうございました!


では、結果報告を。

わたしがチャレンジしていたのは、ふたつです。

① キツイこと:本か映画を1000本紹介する

② できそうなこと:毎日一万歩歩く

ところが「できそうなこと」だったはずの毎日一万歩が、ステイホームのおかげで無残な結果に……。計算方法はよく分かりませんが、1日の平均は「9281歩」らしいです。ダンナ氏が計算しました。

切り上げて「一万歩」ってことで、どうでしょう!?


こんな状況だったので、ブログの更新は意地でも続けようと思っておりました。

フラフラ、ヨロヨロしながらの1000日だったけど、毎日やる以上、実は毎日いろんなところにチャレンジを入れていました。ずっと意識していたのは、「すごい、ヤバい、かわいい」という言葉は使わない、ですね。

でも昨日まで、「もうムリ、明日はムリ、絶対ムリ」と1000回以上叫んでいたよ……。それでも毎日励ましてくださる方々、細々と続けているブログを見に来てくださる方々のおかげで、こうして続けることができました。

心から感謝しています。ありがとうございました!

そして、『嫌われる勇気』の著者のおひとりでもある古賀さん。イベントでサインをおねだりして、ついでにありがたいアドバイスまでいただき、心の支えになりました。本当にありがとうございました!


このブログを読んでくださった方の1000日は、どんなものだったでしょうか?

3年前は、1000日後はバラ色やー!と、とても期待していたのに。まさか世界がこんなことになっているとはね……。

「1000日チャレンジ」をとおして、自分にどんな変化が起こせたのかは、ちゃんと寝てからゆっくり考えてみたい。

とりあえず、

・思いつきで何か始めない

・計画性という言葉を辞書に加える

これは心に刻みます。


いま、たしかに感じているのは、今日という日は、ひとつの“通過点”だということ。

わたしの前には次の1000日があって、「いま、ここ」に、「ひとりで」立ち、次の一歩を踏み出そうとしています。

だから。

もしもご縁がありましたなら、いつの日かまたお目にかかりましょう。


コメント

このブログの人気の投稿

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強...

いつもの表現に多彩な色を 『日本語使いさばき辞典』 #481

親戚の「おじさん」のことを、なんて呼んでいますか? 韓国語を勉強していて一番おどろくのは、「呼称」の多さです。親戚ご一同様の呼び名なんて、まったく覚えられない。父方、母方、父より年上か年下か、父の兄の奥さんは……といった感じで、どんどんと広がっていきます。 日本語は「兄弟」か「姉妹」くらいかな、と思っていたら、そんなことは全然なかったんです。『日本語使いさばき辞典』という、日常語を検索ワードとした構成の辞書には、 ・種類・様態からみた「兄弟姉妹」 ・家族の中で年長の男性をいう「兄」 ・家族の中で年長の女性をいう「姉」 ・家族の中で年下の男性をいう「弟」 ・家族の中で年下の女性をいう「妹」 ・それぞれの呼称 という見出しで言葉が並んでいます。日本語も十分多かった。 ☆☆☆☆☆ 『日本語使いさばき辞典』 https://amzn.to/2SjD5VI ☆☆☆☆☆ この辞典は一般的な辞書の感覚で引こうとすると、ちょっと分かりにくいかもしれません。巻末に「分類キーワード目次」があるので、そこをまず見るようにしています。 「川」という身近な言葉ひとつとっても、日本語の表現は多様です。 ・大小、地形などからみた「川」:河川、小川、せせらぎ、伏流 ・速さ、位置などからみた「川」:急流、早瀬、河口、御手洗川 ・様態からみた「川」:流れ、合流、古川、清流 ・種別、名称などからみた「川」:名川、鵜川、杣川、岸辺 ・季節、行事からみた「川」:秋水、川涼み、川祓え、五月川 こんな言葉があるんだなーと思いながら、いつか使ってみたいと思う言葉を発見して妄想するのも楽しい。 「秋水」なんて、文字だけ見るといまの季節にぴったりじゃないですか? ですが『広辞苑』で「秋水」を引いてみると、こんな意味も載っていました。 「秋水」 ①秋の頃の澄み渡った水の流れ。 ②秋季の洪水。 ③転じて、曇りなくとぎすました鋭利な刀。 おお、まさか洪水も指すことがあるなんて。 『日本語使いさばき辞典』には言葉の意味は載っていないので、「単語の厳密な意味を確認したい場合には、『国語辞典』あるいは『漢和辞典』を援用してください」と注意書きがあります。 どんな場面で使われるのかを確認したいなら、日本語コーパスサービスの「少納言」や『てにをは辞典」で検索するのがおすすめ。 表現をサポートしてくれる心強い相棒 『てにをは辞典』 #...