少し前に「韓国ドラマのような恋がしたい」という内容のキャンペーンが行われていました。
……ってマジですか!?
と思ったんですよね。
もれなく「初恋の思い出」とか「毒親」とか「ワケアリ家族」がついてきますよ?
時には恋した相手が「オバケ」だったりもしますよ?
なーんてね。
韓国ドラマのドラマチックに煽るスキルはラブコメに強く発揮されますが、最近は心臓をヒンヤリさせる社会派ドラマをかぶりつきで観てしまいます。
韓国のサスペンスドラマに、実話を基にした作品が多いのは、視聴者も当時を思い出して観てしまうからかもしれません。
制作にあたっては、被害者の家族に事前説明をして、同意をいただくそうですが、映画などでは裁判になったりもしていました。
たしかに、忖度なしに思い切った表現で切り込む姿勢は、韓国ドラマならではだなと思います。
最近配信されたドラマの中では、「未成年裁判」がダントツにしびれました。
☆☆☆☆☆
ドラマ「未成年裁判」
Netflixサイト:https://www.netflix.com/title/81312802
☆☆☆☆☆
ヨンファ地裁の判事に赴任したシム・ウンソク。13歳の少年ソンウが9歳の少年を殺してバラバラにした事件を担当することになるが、ソンウの証言が嘘だと気づく。世間の注目を集める裁判に対し、政界への転身を狙うカン部長判事はよけいなことをするなと詰め寄るが……。
「少年刑事合意部」に所属している判事はふたり。キム・ヘス演じるシム判事、キム・ムヨル演じるチャ判事です。ふたりの上司が、イ・ソンミン演じるカン部長判事。
「未成年の犯罪を憎んでいます」
そうハッキリと口にし、嫌悪感をあらわにするシム判事。
不良行為を働く少年少女たちに同情的なチャ判事。
20年勤めた裁判所から、次のステップに移ろうとしているカン判事。
3人の思惑と対決が、前半の見どころ。
後半はここに、イ・ジョンウン演じるナ判事が加わります。
(画像はNetflixより)
キム・ヘス vs. イ・ソンミンが蛇とマングースな闘いだとすると、キム・ヘス vs. イ・ジョンウンは、ツキノワグマ同士の対決って感じ。
巨大名優の火花が飛び散る演技の中を、自制的で内省的なチャ判事がアワアワ動き回る構図になっていて、キム・ムヨルの穏やかさが一服の清涼剤みたいに効いてきます。
「パラサイト 半地下の家族」の家政婦役で、その存在を世界にみせつけたイ・ジョンウン。
ドラマ「ハイエナ」や、映画「10人の泥棒たち」「コインロッカーの女」など、凄みのある演技力で定評のあるキム・ヘス。
「未成年裁判」の中では対立する役どころですが、実は同い年で、仲もめちゃいいそう。
ふたりが共演した映画「ひかり探して」はタイミングが合わなくて観に行けなかったので、どこかで再上映してほしい……。
映画「ひかり探して」
公式サイト:https://www.sumomo-inc.com/hikarisagashite
ドラマの話に戻ると、韓国では、未成年犯罪に関する法律がふたつあり、年齢によって刑法と少年法のどちらかで裁かれるのだそう。
少年法適用年齢=満10〜18歳
満14〜18歳の未成年者による犯罪の場合は、犯罪の内容によってどちらを適用するかを決めるようになっています。
ドラマの中でもそんなシーンがありましたが、未成年犯罪がどうして起こるのかを考えることはつまり、社会のあり方を考えることにつながるのだと思います。
「格差社会」とか、「ひとり親家庭」とか、当たり前のワードだけでは、未成年者が罪を犯す背景はみえてこない。
一見、子どもたちを冷たく突き放しているように見えるシム判事ですが、犯した罪に対して「責任をとる」ことを追求するという点では、大人に対しても同じです。
そこが一番グッときたところでした。
そんな触法少年を演じた子役たちもアッパレですし、これがデビュー作となる脚本家のキム・ミンソクもすごい。監督は「ディア・マイ・フレンズ」のホン・ジョンチャンです。
それにしても。
責任をとらない大人が多すぎでしょ。うまく抜け道を探し、シレッと普通に生活できる姿を見ていたら、子どもだってなめてかかりますよね。
ドラマのテーマは未成年者の犯罪だけど、刃が突きつけられているのは大人の喉元なのでした。
こんな凄みのあるドラマを作れる韓国の底力よ。
ドラマ「未成年裁判」 全10話(2022年)
監督:ホン・ジョンチャン
脚本:キム・ミンソク
出演:キム・ヘス、キム・ムヨル、イ・ソンミン、イ・ジョンウン
コメント
コメントを投稿