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ドラマ「あなたに似た人」#889

怒りを暴走させても、誰も幸せになれない。 分かっていても止められないのが暴走状態なわけで、一番苦しいのは「自分」なんですよね。 誰もが「幸せになりたい」と思いながら生きているのに、なぜ世の中はこんなにもやさしくないんだろう。 「やり直す」ことを選ぶのは、なんて難しいことなんだろう。 なんてことを、コ・ヒョンジョンとシン・ヒョンビン主演のドラマ「あなたに似た人」を観ながら、ずっと考えていました。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「あなたに似た人」 https://www.netflix.com/title/81473219 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> チョン・ヒジュは、娘が学校で教師から暴力を受けたという連絡を受け取る。そこで出会ったのは、かつての友人で、自分に絵を教えてくれたヘウォンだった。彼女が意図的に近づいてきたのではないかと疑うが……。 ミス・コリアで第2位となり、俳優としてデビューしたコ・ヒョンジョン。 常に勝ち気で、凜として、傲慢なほどゴージャスな役を演じてきました。わたしは 「善徳女王」 のミシル役ですっかりファンになりました。「レディプレジデント〜大物」の大統領姿も好き。 そんなコ・ヒョンジョン演じるチョン・ヒジュは、貧乏なDV家庭で苦労して育ち、お金持ちの夫と結婚して、いまでは画家として活躍しているという“成り上がり”な役柄です。 (画像はNetflixより) ヒジュを不幸にするのが目的、と語る、かつての友人ク・ヘウォンを演じるのはシン・ヒョンビン。 「賢い医師生活」 のギョウル先生は、空気は読めないけど一所懸命でかわいかったのに。 あのキョトン顔で毒を吐きまくるのです。 (画像はNetflixより) ヘウォンの夫ソ・ウジェは長く行方不明になっていて、ようやく発見した時には、むかしの記憶を失っていました。 いったい彼に何があったのか。 年齢差はありつつも、仲良しだったヒジュとヘウォンは、なぜ対立するようになったのか。 過去が明らかになった時、久しぶりに「マクチャンドラマ」の面影を見たように思いました……。 「マクチャンドラマ」とは、非現実的なことが頻発して、展開に行き詰ったようなドラマのことです。韓国ドラマあるあるの「記憶喪失・交通事故死・出生の秘密・不治の病」なんかが、それですね。 ヘウォンに追い詰められ、やつれていくヒジュ。コ・ヒョンジョンは美しく、気高い姿が特

ドラマ「地獄が呼んでいる」#887

不安な気持ちとどう向き合えばいいんだろう。 Netflixオリジナルシリーズ「地獄が呼んでいる」は、突然「地獄の使者」が現われ、 「お前は○日の○時に死ぬ」 と告げられる、というストーリー。 なぜ、自分が? そんな疑問からジタバタしたり、逃げ回ったりするわけですが。この「地獄の使者」が容赦ないんです。ムクムクのタイヤマンみたいな外見なのに。 (画像は韓国経済より) 11月19日にNetflixで配信されるや否や、視聴時間全世界ランキング1位を記録。 「イカゲーム」 によって韓国ドラマに視線が集まっていたところに加えて、 「新 感染 ファイナル・エクスプレス」 のヨン・サンホ監督作品ですもん。期待がいかに大きかったかを感じさせますね。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「地獄が呼んでいる」 https://www.netflix.com/title/81256675 ☆☆☆☆☆ 「地獄の使者」の存在を伝え、これは神の裁きだと主張する宗教団体のリーダー、チョン・ジンスを演じるのはユ・アイン。決して偉ぶらず、淡々としているところが、よけいにオソロシイ。その理由は、第3話で明らかになります。 (画像はNetflixより) 妻を亡くし、ひとりで娘を育てている刑事のチン・ギョンフン役は、ヤン・イクジュンが演じています。チョン・ジンスと対立するロングカットは一番のみどころ。実は即興劇として撮影したそうで、ユ・アインのアドリブにヤン・イクジュンが「反応する」演技をしたのだとか。 (画像はNetflixより) チョン・ジンスの主張に反論し、増大していく宗教団体から人々を守ろうと奔走する弁護士を演じるのは、キム・ヒョンジュ。強さと弱さの交差する瞳が印象的でした。 (画像はNetflixより) 第1話から第3話までは、謎の「地獄の使者」と、それを神の啓示として人々の信頼を集めていくユ・アイン中心に話が展開していきます。第4話から第6話は、別のお話といえるくらい、ガラリと雰囲気が変わります。 子どもを虐待していた母の、恐怖と不安と後悔の混ざった表情はとても胸を打ちました。 のらりくらりとのさばる悪党たちを、法律ではなく私的に復讐するドラマや映画のことを韓国では「サイダー」と呼ぶそうです。 ドラマ 「ヴィンチェンツォ」 や、 「ボイス~112の奇跡~」 、 「悪霊狩猟団:カウンターズ」 は、まさに「サイダー

『黒革の手帖』#872

手にした武器は、ただひとつ。黒革の手帖をめくり、女は策略をめぐらす……。 松本清張のサスペンス『黒革の手帖』は、なんどもドラマ化された名作サスペンスです。舞台が銀座のクラブとあって、華やかで妖しい雰囲気が漂いますよね。米倉涼子版も、武井咲版も、主人公である「元子」の衣装が豪華でした。 地味な銀行員から銀座のママへという、華やかな転身。 その裏に渦巻く野望と秘密。 小説が発表されたのは1978年と40年以上も経っているので、さすがに古いと感じる部分もありますが、変わらない人間の欲深さに震える小説です。 ☆☆☆☆☆ 『黒革の手帖』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ この小説を取り上げた理由は、色が与える印象について考えてみたかったからでした。 ソウルの女王と呼ばれた、アレサ・フランクリンの半生を映画化した 「リスペクト」 について書こうとした時、「黒人」と書くのがよいのか、「アフリカ系アメリカ人」と書くのがよいのか、迷ったので調べてみました。 最近では頭大文字で「Black」と綴る動きが広がっているそう。 黒人の表記、「Black」に 米で拡大、敬意示す意味:朝日新聞デジタル  黒人を指す英語の「ブラック」について、1文字目を小文字のblackではなく、大文字のBlackとする動きが米メディアで広がっている。白人警官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを死なせた事件を機に米国…   以前、なにかの映画で「黒という色には、悪いことやダーティーなイメージがある」という台詞があって、あぁ、確かにそうかもなと思っていました。この台詞はたしか、「だから黒人は悪いことをしそうなヤツという印象をもたれる」という文脈の中で言われていて、ちょっと胸が痛かったのでした。 イ・ジュンイク監督の映画「玆山魚譜 チャサンオボ」の中でも、ソル・ギョング演じるチョン・ヤクチョンは、「本当は“黒山島”という名前が怖かった」と語り、書き上げた海洋生物事典の名前を「玆山」に変えました。 映画「玆山魚譜 チャサンオボ」#869   『黒革の手帖』だって、「黒」だからサスペンス風味がでるのであって、「ピンクの手帖」だったら、ずいぶん印象が変わります。「うさぎのイラスト付きの手帖」だったら、銀座のママにはなっていないでしょう。知らんけど。 「黒」という言葉からイメージする印象に、ずいぶんと惑わされているのではないか

映画「整形水」#807

なんか、すごいものを見たという感じで、いまも衝撃が去らない。 ルッキズムをテーマに、人間の欲望を描いた韓国のサイコホラーアニメ「整形水」。原作は、ウェブトゥーンの人気漫画で、韓国映画としては珍しく「吹替え版」も公開されています。 ☆☆☆☆☆ 映画「整形水」 https://seikeisui.jp/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 人気タレントのメイクを担当しているイェジは、幼少時から自分の外見に強いコンプレックスを抱えていた。タレントからは罵倒され、出演したテレビ番組では悪意ある書き込みをされ、自暴自棄に陥ってしまう。そんなイェジのもとに、巷で噂になっている「整形水」が届く。顔を浸すだけで思い通りの容姿に変わることができ、後遺症も副作用もない奇跡の水だという。美しくなって、新しい人生を歩むべく整形水を試すイェジだったが……。 サイコホラーではありますが、実写じゃなくてアニメでよかった……というのが、正直なところ。グロさが抑えられるので、ストーリーに集中できるんです。これ、実写だったら、“薄目”になちゃったかもしれない……。 背景にも凝っていて、控え室には 「トッケビ」 などのドラマポスターが! (画像はKMDbより) 日本版と韓国版のポスターを比べてみると、ちょっと違いが感じられました。 日本版は、打ち出しているのが“崩れる”恐怖なんですよね。 (画像は映画.comより) 一方の韓国版は“変身”なイメージ。 (画像はKMDbより) 日本の場合、岡崎京子さんの漫画『ヘルタースケルター』があるから、“崩れる”方がイメージしやすいからかもしれません。 沢尻エリカ主演×蜷川実花監督で映画化もされています。妖しい狂気の世界でした。 ルッキズムに対する社会の認識は、変わりつつあるようですが、まだまだ“改善”とはいえない状況です。チョ・ギョンフン監督は、「『美しさとは一体何だろう』という問いかけをしたかった」と語っています。 「ルッキズムの暴力」は美しい人にも向けられる…『整形水』監督が語る、整形大国・韓国の問題(此花 わか)   20年ほど前、韓国のテレビ局の仕事をしていて、外に撮影に出たことがありました。うっかり映り込みそうになったので、 「わたしは撮らないでくださいねー」 と言ったら、カメラマン(韓国人男性)は、こう言ったのでした。 「ブスは撮らないよ」 な

ドラマ「補佐官」シーズン1 #799

昨日の敵は、今日の友。 韓国の政治は、とにかく党の変化が激しい。できては消えるし、議員もあちこちに異動します。いまの与党はどこだっけ?となることもしばしば。 激しい生存競争を生き抜く仕事、ではあるけれど。どこの国にも、「そもそもなぜ政治家になろうと思ったのか」、疑問に感じる人もいますよね……。 法案作り、答弁書、記者会見などなど、政治家の激務を支えるのは、「補佐官」。 映画での活動が続いていたイ・ジョンジェが、10年ぶりにドラマに復帰した「補佐官」は、そんな表舞台を歩く政治家と、影で支える人々を描いた政治ドラマです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「補佐官」シーズン1 Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81070963 ☆☆☆☆☆ <あらすじ ソン・ヒソプ国会議員の主席補佐官であるチャン・テジュンは、冷静で優れた判断力を活かし、議員をサポートしてきた。テジュンの暗躍のおかげで、ついに院内代表となったソン議員は、法務長官に任命されれば、自分の選挙区を譲ると約束するが……。 Netflixではシーズン2まで配信されています。日本版タイトルは「補佐官」だけですが、韓国語版には「世の中を動かす人々」という副題あり。陰謀渦巻く世界の、熱いドラマです。 なにせ展開が早い。 あっちと対立したと思ったら、こっちと手を組み、あちらの足を引っ張る策略を巡らす。「昨日の敵は、今日の友」どころか、10分くらいで状況が一変しちゃうんだから、目が離せない。熾烈なゲームそのものです。 イ・ジョンジェ演じるチャン・テジュンが、かつての恩師と、愛する女性と、自らの野望の板挟みに、と展開していきます。 政治闘争のネタとなるのは、労災認定や再開発を巡る利権、下請け企業の事故もみ消し、中絶の賛否など、現在進行形で韓国で問題になっているものばかり。まるでドキュメンタリーを観ているような迫力です。 中でも再開発を巡る問題は、ソン・ジュンギ×チョン・ヨビン×オク・テギョンによるファッショナブルなヤクザドラマ「ヴィンチェンツォ」でも大きなテーマになっていました。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」#667   実際、文在寅政権の発足後、ソウルのマンション相場は5割以上高騰していて、住宅難に。強制撤去による死亡事故も起きています。 タワマン続々、不動産急騰、再開発バブルの裏で見捨てられ

映画「コインロッカーの女」#787

血のつながらない母娘による葛藤が、代々と引き継がれてしまう哀しさ。これは、逃れられない運命なのだろうか。 「コインロッカーの女」は、そんなどす黒さが全面に押し出された映画でした。たぶん韓国映画では、女性によるノワール劇ってあんまりなかった気がします。 ☆☆☆☆☆ 映画「コインロッカーの女」 DVD Netflix https://www.netflix.com/title/80196152 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 生まれた直後に、地下鉄のコインロッカーに捨てられた女の子の赤ん坊。イリョンと名づけられた彼女は、仁川のチャイナタウンで闇貸金業を営む「母さん」に育てられる。成長し、組織の一員として働くようになったイリョンは、一切の感情を捨てて命令を忠実に実行するだけの日々を送っていた。そんなある日、父の借金を背負わされた青年ソッキョンの元へ取り立てに行ったイリョンは、不幸な身の上でも前向きに生きようとするソッキョンに惹かれてしまう……。 「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」 で愛らしい女子高生を演じていたキム・ゴウンが、ガラリとイメージを変えてタフな世界に生きる、孤独なイリョンを熱演。 (画像は映画.comより) そして、かっこいい姐御姿に「一生ついていきますーー!!」と言いたくなっちゃうキム・ヘス。迫力たっぷりの“母さん”を演じ、第35回韓国映画評論家協会賞などで主演女優賞を受賞しています。 キム・ヘスって、基本の作りが「美人型」なので、映画 「10人の泥棒たち」 でドレスアップした姿なんか惚れ惚れするくらいなんです。 (画像はKMDbより) なのに。 「コインロッカーの女」では。 ぶよぶよのお腹に、傷んだ肌での、堂々たる演技! その迫力! (画像は映画.comより) こういう、本気の役作りによる見せ方が好きなんですよね、わたし。 以前、とある日本映画で、キレーな女性がお布団に横になっていて、側に座っていた女の子がシクシク泣き出す。「死なないでー! おかーさまー!」みたいなセリフがあって、やっと女性が病気なことに気付いた……ということがありました。 でも、韓国の俳優って、「汚す」ことを厭わない覚悟があるなと感じます。 キム・ヒャンギちゃんなんて、めちゃくちゃラブリーなのに、「神と共に 第二章 因と縁」では徹底的に「こきちゃなく」されちゃってるんだもん。 (画

映画「殺人の告白」#782

「もし、あのオッサンが連続殺人事件の犯人だったら……?」 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」を観ていた時、同じ映画館にいた中年男性に目を留めたチョン・ビョンギル監督。妄想から始まったストーリーは、強烈アクション×緻密などんでん返しという形で映画になりました。 映画初主演のパク・シフが、美しすぎる殺人犯を演じ、跳び蹴りの名手・チョン・ジェヨン兄貴が、憎しみをつのらせる刑事を演じる「殺人の告白」。 ノンストップで観たい、サスペンス劇です。 ☆☆☆☆☆ 映画「殺人の告白」 DVD Amazonプライム ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 連続殺人事件の犯人を追っていた刑事チェ・ヒョングは、乱闘の末、負傷。15年間、事件を追い続けていたが、ついに時効が成立してしまう。そこへ、自分が犯人だとイ・ドゥソクという男が名乗り出る。殺人について詳細に記した本を出版し、美しいルックスも相まって、一躍時の人に。ヒョングは、本の中に最後の失踪事件が書かれていないことに気づく。そんな中、自分こそが真犯人だと主張する人物が現れ……。 映画の冒頭から、いきなり激しい乱闘が始まります。ワンカット・ワンテイクで撮影したシーンは、手持ちカメラの激しい揺れと、雨、暗闇がセットになって、「ヤバい映画」感が倍増。 オープニングのクレジットタイトルも出ないまま、グッと映画に引き込まれる。 のに。 話が15年後に移ってからは、殺人犯役のパク・シフが、海パン×ガウンでカーチェイスを! (画像は映画.comより) ド派手なシーンなんですけど、めっちゃ笑えます。冒頭の重さはどこに行った?と思ってしまうくらい。 振り幅の大きい映画なんですよね。チョン・ビョンギル監督はアクション・スクール出身のせいか、パク・シフもスタントなしで演じることに。「それが当然」な空気だったそう……。こえー。 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」は、ソウル近郊の華城市で起きた連続殺人事件をモチーフにしています。この事件は2006年にすべて時効が成立してしまったのですが、2019年9月になって、真犯人が見つかりました。 残忍すぎる性的暴行の末、女性10人を殺害…韓国史上最悪の連続殺人犯はなぜ「自白」したのか | 未解決事件を追う | 文春オンライン   なんともやるせない気持ちになる結末だったわけですが。 もし、「自分がやった」と告白してチヤ

映画「あいつの声」#781

狂気と絶望を演じさせたら、この人の右に出る人はいない! 「おっちゃん」の俳優層が厚い韓国演劇界の中でも、ソル・ギョングの演じるキャラクターはホントにぶっ飛んでいます。 「ペパーミント・キャンディー」の純朴さ、「オアシス」の不器用さ、「殺人者の記憶法」の凄みなどなど、どの映画に出演しても“爪痕”を残してくれる。とにかく大好きな俳優で、「オレの辞書にライフハックなんて文字はないぜ」って感じの人です。 (画像はKMDbより) そんなソル・ギョングが、人気ニュース番組の看板キャスターという、ある意味“正しい善人”を演じたとあって、観る前はビビってしまった映画「あいつの声」。 いやいや、こんなキョーレツに痛みをねじ込まれる役を演じきれるのは、やっぱりソル・ギョングしかいなかった。上の画像と同じ人には見えないですよね……。 (画像はKMDbより) ☆☆☆☆☆ 映画「あいつの声」 DVD ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 夜9時台のニュース番組を預かるハン・ギョンベは、政界入りも目指す人気キャスター。ある日、ひとり息子を誘拐され、犯人から身代金1億ウォンを要求する電話がかかってくる。犯人に翻弄され、耐えかねた妻が警察に連絡するが、一向に容疑者はみつからない。電話から聴こえる声だけを頼りに捜査が進められるが……。 フィクションを、ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法を“モキュメンタリー”と呼ぶそうです。擬似を意味する“モック”と、“ドキュメンタリー”の合成語ならしい。 実際に起きた事件の映画化という点で、昨日ご紹介したイ・ギュマン監督の「カエル少年失踪殺人事件」や「あいつの声」は、どちらも“モキュメンタリー”映画です。 映画「カエル少年失踪殺人事件」#780   NHKの再現ドラマのように、ファクトベースで描いているのが「カエル少年失踪殺人事件」、キャラクターの設定を変えて劇画っぽく仕上げているのが「あいつの声」といえるかも。 ソル・キョングが演じた「父役」の「人気キャスター」という設定は、ラストシーンにつなげるためのものだったとのこと。 パク・ジンピョ監督は、この事件を初めてテレビで取り上げた番組のPDをしていました。そこで直接取材した情報を基に、脚本を組み上げています。「あいつの声」の前作「ユア・マイ・サンシャイン」とはテーマが違うけど、実在の出来事を劇映画

映画「カエル少年失踪殺人事件」#780

韓国映画は、自分たちの社会や歴史の暗部をドラマ化するのが、本当にうまい。 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」や、パク・ジンピョ監督の「あいつの声」は、未解決事件を、チャン・ジュナン監督の 「1987、ある闘いの真実」 や、カン・ウソク監督の「シルミド」などは、葬り去られそうになった歴史を掘り起こしています。 イ・ギュマン監督の「カエル少年失踪殺人事件」も、そのひとつ。 1991年3月に大邱市で発生した小学生5人の行方不明事件を映画化。犯人不明というミステリーに、“オトナの思惑”を加えて、緊迫のサスペンスドラマに仕立てています。 ☆☆☆☆☆ 映画「カエル少年失踪殺人事件」 DVD ☆☆☆☆☆ 実際に起きた事件をベースにしたストーリーで、映画を観るだけで事件の推移が把握できます。それが、なんとも胸が痛い展開。 遺骨が見つかるまでの10年の間、家族たちがどれほど苦しんできたのか。杜撰な捜索、特ダネ狙いのテレビプロデューサー、犯人像を分析して家族に疑いの目を向ける教授ら、どれほどの人たちが家族を弄んできたのか。 それでも、映画の封切りに合わせて家族たちは、「全部許すから、出てきて欲しい」と犯人に呼びかけたのだそう。 当然、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」と比較されることも多かったようですが、サスペンス度は「カエル少年」の方が強かったなーと思います。 ただ、事件についてまったく知らなかったし、「カエル少年失踪殺人事件」というタイトルだけを見て、わたしは勘違いしておりました。 少年探偵団みたいなコメディだと思っていたのに!!! バッチバチの緊迫感漂うサスペンスで、まばたきするのも忘れてしまってたよ。 特に、赤いマントの少年の母を演じたキム・ヨジン。 (画像はKMDbより) 最近ではドラマ「ヴィンチェンツォ」の悪役ぶりが目立っていましたが、こういうセリフのない演技の壮絶さは、ピカイチだと思います。エアロビ踊ってるだけじゃないのですよ。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」#667   「カエルを捕まえに行く」という言葉を残して、姿を消した少年たち。事件は2006年3月26日に時効が成立し、迷宮入りとなりました。 赤いマントを翻して走っていた、うれしそうな顔に無念ばかりが残ってしまう。 (画像はKMDbより) 痛烈な批判と皮肉が込められたストーリー。これを劇映画として成立させてしまう

ドラマ「ボイス~112の奇跡~」#737

財閥と公権力の癒着は、韓国ドラマの定番テーマといえます。 呆れるほどの手口が披露?されたり、スルリスルリと法の網をすり抜けたり。 そんな悪党どもに対して、法律ではなく私的に復讐するドラマや映画を韓国では「サイダー」と呼ぶそうです。プッハーとスカッとするってことですね。 それくらい、闇が深いのだともいえますし、庶民の権力への絶望感が強いともいえそう。 ソン・ジュンギ主演のドラマ「ヴィンチェンツォ」の最終回なんて、サイダー感特盛でしたもんね。自分で「オレは悪党だから」と言わなきゃいけないのって、どうよ?とは思いましたが……。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」#667   数あるサイダードラマの中でも、歴代最高に残酷なエンディングと呼ばれたドラマが、韓国では2017年に放送された「ボイス~112の奇跡~」だそう。現在、Netflixなどで配信されています。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「ボイス~112の奇跡~」 https://www.netflix.com/title/80987095 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> ソンウン地方警察の刑事ジニョクは、妻が殺される直前、112通報センターに助けを求めていたことを知る。容疑者が逮捕されるが、通報センターのグォンジュが声が違うと証言したため、釈放されてしまう。しかしグォンジュの父もまた、同じ日に殺されていた……。 シーズン1は、112通報センターに「ゴールデンタイム」チームが作られるところから始まります。「112番」は、日本の「110番」にあたります。 韓国に旅行する際、覚えておくといい電話番号はふたつ。 119番:消防と救急 112番:警察署 「110番」は現在、虐待相談に使われているのだそう。 イタズラ電話も多い通報センターが舞台とは、斬新というか、地味目の設定かと思いきや、バリバリの血みどろでした……。 残虐な方法で妻を殺され、自暴自棄になった刑事ジニョクを、チャン・ヒョクが演じています。 (画像はNetflixより) “初めての”刑事役という紹介を読んで、そうだっけ?と思ったくらい、なにかを「探っている」役柄が多かったように思います。 「根の深い木」は、時代劇だから“刑事”にカウントされないのかしら。 ハングル創製をめぐるミステリー ドラマ「根の深い木」 #424   ゴールデンタイムチームを立ち上げ、112申告センターを組織する司令塔カ