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7月, 2020の投稿を表示しています

型破り弁護士たちのオセロゲーム ドラマ「ハイエナ」 #382

赤いジャージにジャケットを着て、高層ビルをにらめつける女性。 明け方のコインランドリーで読書をする知的な女性。 彼女の正体は……弁護士! お金のためなら何をしてでも勝利をもぎとるという型破りで規格外の弁護士に夢中になったのが、ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」でした。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「ハイエナ」 Netflixサイト: https://www.netflix.com/title/81177545 ☆☆☆☆☆ 韓国のSBSで2020年2月21日から放送されたこのドラマ。地上波の放送局だって負けてないぞという意地を感じさせてくれます。 演出は「星から来たあなた」 「根の深い木」 「銭の戦争」など、多くのヒット作品を生み出しているチャン・テユ監督。そこに、シナリオコンクールで優秀賞を獲得した新人脚本家キム・ルリというコンビの作品です。特に第1話のスピード感と、逆転劇は最高でした。 「あ!」 って声がでちゃった。 バックグラウンド、性格、人生の目標。まったくタイプの違う2人の弁護士が、それぞれのプライドをかけて戦うサバイバルドラマです。 時には泥臭く、時にはエレガントに真相に迫る弁護士グムジャを演じたのは、キム・ヘス。映画「国家が破産する日」でみせたクールな姿とは一転して、コミカルな演技も披露しています。なによりセクシー! 「国家が破産する日」は、いま日本で観るべき“破滅の処方箋”だ   一方のお坊ちゃまエリート弁護士のヒジェを演じたのは、いま韓国の演劇界で引っ張りだこというチュ・ジフン。「神と共に」シリーズや「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」で一躍日本でも人気俳優になりましたね。 チュ・ジフンを観るなら、Netflixオリジナルシリーズの「キングダム」もおすすめ。 ケタ違いのスケールで問う。命か、権力か Netflixドラマ「キングダム」 #263   祖父は元最高裁判所長官、父は現職の部長判事、兄は現役判事という法曹一家に育った、エリート弁護士のヒジェ。法律家として最高の名誉を得ることを目標にしていますが、要するに「かっこつけ」なんですよね。ドラマのオープニングは、そんな彼の性格をよく表していました。 そんなヒジェが明け方のコインランドリーで出会った女性に惹かれ、ふたりは激しい恋に落ちる……ところまではよかったんだけど。 クールに決めて

人は、誰かの奇跡になれるだろうか? ドラマ「椿の花咲く頃」 #381

韓国ドラマ界は現在、ケーブルテレビ局で制作されるドラマが圧倒的な強さを見せています。その昔、多くの国民的ドラマを生み出した地上波局制作のドラマは、すっかり影が薄くなってしまったような。 なにしろ製作費が違います。Netflixオリジナルシリーズ「キングダム」なんて1本あたりの制作費が約20億ウォン(約2億円)。これをすべてNetflixが負担したらしいので、アムアムしちゃいますよね。 ケタ違いのスケールで問う。命か、権力か Netflixドラマ「キングダム」 #263   ヒョンビン主演のミステリー「アルハンブラ宮殿の思い出」は、ケーブルテレビ局のtvNが制作していますが、こちらもスペインロケやCG使い放題の映像でとてもリッチに仕上がっていました。 現実と仮想世界が溶け合うミステリー ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」#380   ですが、本来のドラマなら、大金をかけたり、派手なセットがなかったりしても、シナリオと演技で視聴者の心をつかむことができるはず。 それを証明してみせたのが、KBSドラマ「椿の花咲く頃」でした。現在、Netflixで配信中です。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「椿の花咲く頃」 Netflix配信 https://www.netflix.com/title/81144925 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> シングルマザーのトンべクは、田舎町のオンサンで「カメリア」という居酒屋を始めます。まだ若く、美しいトンベクは、地元のおばさんたちの嫉妬の対象に。商店街の会長だけが味方です。 一方、幼い頃から正義感が強く、民間人にもかかわらず数々の事件を解決したファン・ヨンシクは、特別枠で警察官に。地元オンサンの交番勤務となり、トンベクに一目惚れしてしまいます。しかし町では長年未解決だった無差別事件の犯人が動き出したようで……。 トンベクを演じるコン・ヒョジン。少女のようなフワフワ感と、母に捨てられたことから来る気の弱さ、ひとり息子を全力で愛するけなげさを、最高レベルの“モジモジ”で演じています。 そう、コン・ヒョジンは身長173cmという抜群のスタイルを持ちながら、なぜかいつも“モジモジ”した役を演じているんです。そこがいじらしい。 このトンベクの母を演じているのが、「パラサイト 半地下の家族」でキョーレツな印象を残した家政婦のイ・ジョンウンです。怪しさ満載で登場したあたりは

現実と仮想世界が溶け合うミステリー ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」#380

韓国ドラマを表す言葉のひとつに「マクチャンドラマ」があります。 「マクチャン」とは「どん詰まり」という意味なのですが、ジェットコースターのようにストーリーが急展開していく一方で、非現実的やろ!とツッコまれてしまうようなドラマを指して「マクチャンドラマ」といいます。 展開にムリはありつつ、ハマってしまう要素を持ったドラマという感じですね。 ストーリーがジェットコースターなら、撮影だって綱渡り。その日の夜に放送する予定のドラマを、昼間に撮影していることもあるそう。生放送同然の撮影システムは、何度も放送事故を起こすくらいです。 視聴者の反応を見て、構成を変えたり、キャラクターの厚みを変えたりすることもある。よくいえば視聴者第一主義ということかもしれません。 ただ、ラストに近くなるとやたらと回想シーンが増えるドラマもあって。 (撮影が間に合わなかった……?) それとも、 (放送の尺に足りなくなった……?) と感じてしまうこともしばしば。 ヒョンビン主演のドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」は、全16話ですが、10話までは抜群におもしろいんですよね。初回のドキドキ感に引かれてドンドン観てしまうのですが、文字通りドン詰まって失速してしまう「マクチャンドラマ」でもあったかなと感じました。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」 Netflix配信 https://www.netflix.com/title/81004280 ☆☆☆☆☆ ヒョンビン演じる投資会社の社長ユ・ジヌが、画期的なARゲームと出会うところから話は始まります。コンタクトレンズに映し出されるARの世界は現実ともリンク。武器とアイテムを手に入れ、スペインの騎士と戦うのです。 これ、ゲーム好きの人はめちゃくちゃハマると思います。 しかもゲーム画面と現実の映像がシームレスにつながっているので、「いまヒョンビンはどちらにいるんだっけ?」と思うことも。現実と仮想世界が完全に溶け合っているんです。 話は変わりますが、昨日、「東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト2020」という公開講義が配信されていて、アーティストの日比野克彦さんがこんな話をされていました。 (対談相手である青年失業家の)田中泰延さんは、ガリ版印刷からコピー機が誕生して、パソコンのソフトを経験している世代。一人の人間がこれだけのメディアの変化を経

学生時代に思い描いた理想、生きてる? ドラマ「賢い医師生活」シーズン1 #379

「いかなる理念も理想たりえぬ限りは魂の力を殺す。しかし、いかなる理念も理想たりうる限りは、すべてあなたの中に生命力を生み出す」 哲学者で教育者のルドルフ・シュタイナーの言葉です。神秘思想家でもあったシュタイナーは、「理想」を持つことが、生きる力を生み出すのだと信じていたのだそう。 あまりにも理想的な仲間関係、理想的な先輩後輩関係、理想的なプロフェッショナルを描いたドラマ「賢い医師生活」を観て。 (あー! こんな理想的な友だちがいたらいいのに) と思ったのですが。同時に、 (しょせん、ドラマだしね) とも思ったんですよね。でもこのドラマが描き出す「理想」を、単なる夢物語としてしまうと、非常に、ものすごく、とっても人生もったいないことをしているんじゃないかという気がしたのです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「賢い医師生活」 https://www.netflix.com/title/81239224 ☆☆☆☆☆ 3月から韓国で放送がスタートしたこのドラマ。「応答せよ」シリーズを制作したイ・ウジョン脚本家×シン・ウォンホ演出家コンビによる最新作なのですが。日本で大人気となっている「愛の不時着」や「梨泰院クラス」よりも視聴率ははるかに上。 昼間は大学病院の医師として働き、週に1度はバンドの練習をするアラフォー5人が主人公。大学の同期で、別々の病院で働いていたものの、同じ病院に勤めることになる、というのが第1話です。 医療ドラマというと「白い巨塔」とか、「ドクターX」を想像していましたが、そんなどす黒さはナッシング(いや、ちょっとあるかな)。 実は第1話を観たとき、登場人物がこんがらがってしまったんですよね。BB Crewさんが分かりやすい画像を作ってくれていたので、お借りしてきました。とりあえず、一番上の段の人だけ覚えておけばなんとかなります。 韓国のドラマ制作の現場は、それはそれは過酷なのだそうです。理由は、週に2話放送日があること! たとえば「愛の不時着」は放送日が土曜日と日曜日だったため、「土日ドラマ」と呼ばれていました。 週1話だってスケジュールを合わせたり、脚本を仕上げたりするのは大変だろうなと思うのに、週に2話。今の時代、一番ブラックな現場なんではないかと思ってしまう状況です。 そこでシン・ウォンホ演出家は週1話の放送を提案。幸いにも視聴率がとれたので、シーズン2の制作も

冷静と情熱のあいだで揺れる政治家の青臭さを誰が笑えるのか 映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」 #377

「なぜ君は総理大臣になれないのか」 この問いは、会社員なら「なぜ君は社長になれないのか」でしょうか。 ドキッとするようなタイトルのドキュメンタリー映画。ひとりの政治家の選挙活動を17年間にわたって追いかけたものですが、目にしているのは「万年係長の悲哀」のようでした。 「選挙区で勝てないから党内で発言権がない」 日本を変えるための政治を目指した小川淳也さん。いわゆる、「三つのばん=地盤、看板(肩書・地位)、かばん(金銭)」を持たない小川さんは、政治を動かす以前に選挙に弱い。思わず出たグチに苦笑いしてしまう。 あまりにも実直で、あまりにも純粋。そんな衆議院議員・小川淳也さんを追った映画があまりにもおもしろくて、民主主義について考えさせられました。そして言葉が持つ力についても。 ☆☆☆☆☆ 映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」 公式サイト http://www.nazekimi.com/ Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 2003年、元総務省の官僚だった小川さんは、当時32歳で民主党から衆議院選挙に初出馬するも、落選。2005年の選挙でようやく比例復活で初当選します。 時の総理大臣は小泉純一郎。「郵政解散」と呼ばれた総選挙でした。“刺客”候補の第一号として、兵庫県から東京へと鞍替え立候補したのが小池百合子だったんですよね。 政策論争よりも劇場型のパフォーマンスが得意な人たちに振り回されるしかない末端の(失礼)政治家。なんだか因縁を感じてしまうのは、2017年の選挙で小池知事にまたまた振り回されてしまうからです。 民進党が解党された後、「希望の党」に合流するか。無所属で戦うか。 悩みに悩む姿、町の人たちからかけられる厳しい言葉を、カメラはありのままに映しています。また、「選挙」が狂わせる家族の生活や、政治家の懐事情も。 小川議員を17年間追う中で、大島新監督は「この人は政治家に向いていないんじゃないか」と思ったのだそう。映画の冒頭のインタビューでこう問いかけます。 「なぜ小川さんは総理大臣になれないんですか?」 タイプとしては頭のいい青春ドラマの主人公のような小川議員。暑苦しく選挙を戦い、前のめりになって陳情を聞き、勉強会に参加する。 青臭いと感じるほどの姿勢で、マジメにがんばっているのに、致命的に「力」がないんですよね。 それは残酷なほどに。 ま

人生を狂わすひき逃げ事件が暴き出したもの 映画「悪の偶像」 #374

甘い×しょっぱいは、無限ループにはまる禁断の組み合わせかもしれません。 ポテチ×チョコ×ポテチとか。 あんこ×バター×あんことか。 そんな禁断の組み合わせを映画で実現したのが映画「悪の偶像」です。 ハン・ソッキュ×ソル・ギョングという、トップスターふたりによる競演に、期待しかない映画を観に行って、期待通りのサスペンスな展開にゾクゾク。そこにオリャーっと切り込んできたチョン・ウヒの迫力。 俳優たちの際だった演技をまとめるイ・スジン監督の演出力に、また新しい才能が来たなー!と感じました。 ☆☆☆☆☆ 映画「悪の偶像」 DVD (画像リンクです) Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 息子のヨハンが飲酒運転で人をひき殺してしまったことを知った政治家のミョンヒは、事件をもみ消そうとする。被害者の父親であるジュンシクは、被害者の新妻であるリョナが行方不明であることに不信を持つ。リョナの行方を追ううちに彼女が妊娠していることを知り、なんとかして捜し出そうとするのだが……。 2000年に公開されてヒットした「シュリ」は、日本での韓流ブームを開くきっかけになった映画といわれています。 その映画に主演し、日本でも人気スターとなったハン・ソッキュ。ヤクザな男から情報員まで、幅広い役柄を演じつつ、一貫して「善人」であろうとしていたように感じます。 そしてソル・ギョング。イ・チャンドン監督の社会派ドラマ「ペパーミント・キャンディー」で注目され、そのイ・チャンドン監督が第59回ベネチア国際映画祭で監督賞などを受賞した「オアシス」、「シルミド」などで演技派俳優としての地位を確立しました。 「殺人者の記憶法」もそうでしたが、「社会の落後者」がとても似合う俳優です。そんな言い方あるかよと思いますけど、実際そんな役ばかり演じています。 「善人」ハン・ソッキュを追い詰める、「社会の落後者」ソル・ギョング。ふたりは加害者の父と被害者の父として対立します。 ソル・ギョング演じるジュンシクの息子は精神障害を持っていて、父親がひとりで面倒を見ていました。息子の望むものはなんでも叶えてあげようとする父親なんですよね。 彼が風俗店で働くリョナを気に入ったため、結婚させたり。思春期の頃の、ちょっと衝撃的な親子関係について語る演説が映画の冒頭に流れ、のっけから持っていかれてしまいまし

笑いは権力者に立ち向かう武器になる 『彦一さん』 #369

 「あわてない、あわてない。一休み、一休み~」 つるつる頭を働かせて権力者をやりこめる一休さんは、子どもの頃楽しみにしていたアニメのひとつです。実在の一休和尚の幼少期がモデルだそうですが、さまざま伝説を組み合わせた物語なので史実とはだいぶ違うのだとか。絵本やアニメの元になっているのは、江戸時代に作られた『一休咄』です。 アニメの影響か、「とんち」というと一休さんのイメージですよね。でも、わたしが子どもの頃親しんでいた「とんち」といえば、『彦一さん』と『吉四六さん』でした。 ☆☆☆☆☆ 『彦一さん』 https://amzn.to/3hJ4ydr ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 『吉四六さん』 https://amzn.to/3wIrHR7 ☆☆☆☆☆ 一休さんはお殿様ら権力者の高慢を「とんち」でやり込めるお話が多かったんですよね。一方の彦一さんや吉四六さんは、村の庄屋さんや大人、泥棒、意地悪な動物たちと対決する話がほとんどです。これは物語設定上の立場の違いかもしれません。 貧しい生活や権力者の横暴に切り込む「とんち」。笑いが権力者に立ち向かう武器となるのです。ただ、『彦一さん』には、勝ってばかりじゃなく、失敗してトホホとなるお話も。そんなところが好きで、小学生の頃は図書館で毎週のように読んでいました。 現在、わたしが持っている本は、上にあるAmazon品のようにカラフルで絵入り。子ども向けの本のようです。でも、昔読んでいたのは薄茶色のカバーで文字だけの本でした。あれはどこの出版社のものだったのかなー。 彦一さんも吉四六さんも、熊本周辺に伝わる民話の登場人物として扱われていますが、もともとは上方落語の始祖と呼ばれる米澤彦八の噺だったそうです。「彦八」の名前が九州上陸時に「彦一」となったという説も。 「とんち」と、上方落語。 探してみると原型が同じと思われるものがありました。「米がきらい」というお話です。 彦一に痛い目にあわされたキツネは仕返しを試みます。 それを知った彦一は、家の前に米粒をまき、「こんなに散らかして困ったな。おらは米が嫌いなのに」と言いながらホウキではきました。 その姿を見たキツネ。翌朝、家の前に米をいっぱいまき、その次の日には米一俵を放り込む。 おかげで彦一さんとお母さんはお正月に白いご飯が食べられました。 古典落語の「まんじゅうこわい」そのままですよね。な

がんばって働くのは誰のためになる? 『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』 #360

キャリアパークが実施した「企業選びで重視する点ランキング」によると、就職活動で重視する点1位は「業務内容」だったそうです。 【就職先を決めるポイント】企業選びで重視する点ランキングTOP5│知っておきたい決断基準 | キャリアパーク[就活]   1位:業務内容 2位:勤務時間・所在地 3位:会社の雰囲気 4位:給与・昇給・昇格 5位:福利厚生 この結果には、うなずける気がします。仕事を探そうと言うとき、わたしも自分がやりたいことや向いていることを基準にするからです。 ただ、自分がここで働きたいと思う「会社」とは、どんな存在なのか? サイボウズ株式会社社長の青野慶久さんは、著書『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』の中で、「カイシャとはこれだ」と指で差せるものがないと語っています。なのにそこでは「我慢レース」が行われているのだ、と。 ☆☆☆☆☆ 『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 会社で楽しく働くために、社内で試した実験と法則が語られています。 なので会社員や人事の方におすすめの本ですが、就職活動中の学生が読む方が得るものが多いのではないかと思います。 「会社」とは、どんな存在なのか? 日本には「会社法」という法律があって、会社の設立、組織、運営及び管理について定めています。 小難しい法律を読むよりも、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』を読む方が、「会社」という存在を理解できるからです。 コレと指差せるものがない「会社」には、実体がありません。 でも、多くの人が「会社」に勤めていたり、「会社」をつくろうとしたりしています。また、「会社」であがった利益はどこにいくのか、それを決めているのは誰か。なぜ社員の自分よりも、社長の方が給料が多いのか。 そうした「会社」を「会社」たらしめている輪郭が、よく分かるんですよね。 こうしたことが、第一章に書かれています。 わたしは社内研修を担当しているので、第四章以降の「サイボウズでやってきた実験」に関心があったのですが、この「会社」とは?の章の方が興味深く読めました。 ドキリとしたのは、「カイシャのため」にがんばってますという人への警告です。 “あなたが働いているのはカイシャのためじゃなくて、このカイシャの代表の

準備万端の日なんて一生来ないから 『ぜんぶ、すてれば』 #359

4月に発令された緊急事態宣言と外出自粛要請は、前例主義の考え方をガランと変えたように感じます。だって、誰も経験したことがない事態。みんなが手探りで「よりよいやり方」を探していました。 過去の事例はもちろん、ロールモデルや人生プランなども吹っ飛んだかもしれませんが。 そんなもの不要ですよ、と『ぜんぶ、すてれば』の中で仰っているのが中野善壽さん。寺田倉庫の代表取締役を勤めた方です。 ☆☆☆☆☆ 『ぜんぶ、すてれば』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 「モノだけではなく、価値をお預かりする」という理念に基づいて事業を行っているという寺田倉庫。先日、日本最大のアート複合施設をオープンさせることを発表しました。会社の本拠地である天王洲アイル地区の活性化に力を入れた人が中野さんだそうです。 寺田倉庫、アート複合施設 TERRADA ART COMPLEX Ⅱをオープン   『ぜんぶ、すてれば』は、そんな中野さんにインタビューし、語録を集めた本です。 “思い出も捨てる。役立たないから。” “飲み会を捨てる。人間関係はがんばって広げなくていい。” “人付き合いを捨てる。未来を語れる仲間だけでいい。” “慣れを捨てる。見知らぬ人との会話が刺激になる。” “スマホを捨てる。自分を失くしたくないから。” どれもドキリとする言葉ですが、特にスマホに関しては、「スマホで観る貧しい映画は文化じゃない」「どこで感動するかは自分で決める」と断言されています。 伊勢丹と鈴屋で新規事業の立ち上げを経験。その後、台湾で経営者となり、寺田倉庫の社長に就任。 一見、華やかな経歴に見えますが、生き方の根幹は「何も持たない」ことで、お金も生活に必要な分以外はすべて寄付してきたそう。 そんな異端の人物は、「会社」についてはこんな風に語っています。 “準備万端の日は一生来ない。何も考えず、思い切ればいい。” “会社はただの箱でしかない。愛社精神なんて持たなくていい。” こう聞くと、野放図な人かという気がしますが、自分でやると決めたことはやり抜く。信じて任せた以上、責任は自分にあるというのが信条。なんだか高潔な武士といった感じのイメージもわきます。 なぜビジネス本ではないのか? なぜ一代記ではないのか? いままでほとんどメディアに登場していないそうで、経営改革に関する書籍の出版依頼はすべて断ってきたのだとか。 でも、若