家を継ぐのは男であるべし。
そんな固定観念を覆し、初の女王となった新羅の「善徳女王」という人物がいます。彼女の波乱の人生を描いたドラマこそ、韓国フェミニズムのはじまりだったのではないかと思います。
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ドラマ「善徳女王」
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韓国で放送されたのが2009年。最高視聴率は40%以上を記録し、話数を延長して放送したほどの人気でした。
7世紀ごろの朝鮮半島は、百済と高句麗、そして新羅の3国に分かれていました。新羅の中でも王位を巡ってゴタゴタがあったのですが、それらを抑えて先王の長女であるトンマンが女王に就任。半島を統一することになります。
家を継ぐのは誰か。
これは韓国ドラマでよく描かれるテーマです。正妻の子か、妾腹の子か。ボンクラの長男か、ずる賢い次男か。チンピラの息子か、マジメな長女か。「我が子推し!」な母たちの戦いも見どころのドラマが多いんですよね。
Netflixで配信されている「愛の不時着」でも、妾腹の子で、おまけに女であるセリが父の後継者に指名されて、息子たちが憤慨するシーンがありました。
「製パン王キム・タック」の場合はもっと複雑で、露骨です。娘ばかり続けて生まれたことにガッカリした父は、初恋の相手と子をなし、母は秘書と関係を持って息子を産む。父は初恋の人が産んでくれた子=タックをかわいがるけれど、母は絶対受け入れられない。その対立を目にするお姉ちゃんたちがせつないんです。
朝鮮王朝の建国を描いたドラマ「龍の涙」は、王位を巡る家族の戦いでもありました。「王にされたら、弟に殺される!」と逃げちゃうお兄ちゃんもいたくらいです。
で、結局。
「女」は候補に入ってないんですよね。
ドラマ「善徳女王」の舞台は7世紀の新羅です。「王家に双子が誕生したら、王族の男子が絶える」という言い伝えがある中、誕生した双子の姉妹。
双子であることを隠すため、長女のトンマンは捨てられてしまうのです。
新羅に戻ってきて、自分の出生のヒミツを知ったトンマン。王家の存続をかけて闘うライバルとなるのが、先王の側室だった美室(ミシル)です。
この、美室とトンマンの発想の違いが一番の見どころ。
美室は第24代国王である真興王に引き立てられたのですが、身分は側室。真興王が亡くなった後、次の王に接近して関係を持ちますが、「王妃」にはしてもらえなかった。
なんとしても、「王妃」になりたい!!!
美室の生涯の野望を、ポンと飛び越えていくのがトンマンです。
わたしが王位につく。
トンマンの宣言を聞いた美室の表情。コペルニクス的転換の瞬間でした。
美室を演じたコ・ヒョンジョンは、元ミス・コリアという美人さんです。ドラマでは戦略家の知能戦を美しく演じていました。主人公はトンマンなんですが、完全に美室のドラマでしたね……。
そして、美室の隠し子であるピダムを演じたキム・ナムギル。このドラマですっかりファンになりました。エロかっこいいんです。鼻血ブーです。
「根の深い木」と「六龍が飛ぶ」でも脚本を担当したキム・ヨンヒョンとパク・サンヨンが、このドラマでも脚本を書いています。
「女王」になるほどの知力と胆力を兼ね備えたトンマンは、新羅に戻る旅の途中、身の安全のために男装をします。
そのまま間違えられて新羅軍に入れられてしまうのですが、そこで初めて人を殺した時、震えるんです。
女性の強さと弱さを、とてもいいバランスで描いているドラマでした。
ドラマ「善徳女王」MBC 全62話(2009年)
監督:パク・ホンギュン、キム・グノン
脚本:キム・ヨンヒョン、パク・サンヨン
出演:イ・ヨウォン、コ・ヒョンジョン、オム・テウン、パク・イェジン、キム・ナムギル
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