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映画「JUNK HEAD」#645

驚異と狂気のSFストップモーションアニメ「JUNK HEAD」。ディストピアな情景は、もうひとつの「エヴァンゲリオン」と言いたくなる世界でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「JUNK HEAD」 https://gaga.ne.jp/junkhead/ ☆☆☆☆☆ 堀貴秀監督の本業は内装業で、専門的に映画を勉強したことはないそう。でも、新海誠監督が「ほしのこえ」をほぼひとりで作ったと聞いて、「コマ撮りなら一人でできそうだな」と思い、自主制作を始めたとのこと。 普通の人は思わん思わん……。 エンドロールに並ぶスタッフリストがほぼ「堀貴秀」なんですよね。やっぱり情熱こそ人を動かすんだなと思いつつ、わたしは凡人でよかったと思いました。 ストーリーは、生殖能力をなくして絶滅の危機にある人間が、人工生命体が住む地下世界に潜入し、再生の道を探るというもの。ナンセンスギャグもいっぱいです。 主人公は、頭部だけ人間(というか肉体)で、全身はロボットのような状態です。「マリガン」やその変異種であるグロテスクな生物が暮らす人工生命体が住む広大な地下世界に潜入し、人類の再生の道を探るを、さまざまなトラブルに遭いながら進んでいきます。 登場するキャラクターはすべて粘土や3Dプリンタで制作。基本的に顔の筋肉は動かない。なのに、物語が進むうちに、豊かな「感情」を感じてしまうのです。 主人公が下へ下へと旅を続け、命の神秘を探るというストーリーは、やっぱりもうひとつの「エヴァンゲリオン」だなあ。ちらりと映った「命の木」も、テレビ版の「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングと通じている気がします。 実は三部作あるというこの映画。早く続きが観たいけど、7年かかるのかしら。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」#638

見終わったとたんに、一から見直したくなる。 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、終わってしまったという喪失感と、これで卒業できるという達成感と、オトナになることの責任をつきつけられたような、色んな気持ちがないまぜになってしまう映画でした。 ☆☆☆☆☆ 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」 http://www.evangelion.co.jp/ ☆☆☆☆☆ モラトリアムの中でオトナになることを拒否していた14歳の子どもたちが、それぞれの課題を“浄化”していくわけですが、誰よりもガキンチョだったのが、一番のオトナだったというつらさ。 すべてを受け止めて時間が動き出したとき、長い長いエヴァとの付き合いに終止符が打たれた。庵野監督にとっては、「打てた」なのかもしれませんね。 本編の前に短く総集編が流れますが、初めて観る方のストーリーの理解には足りないかもしれません。TVアニメから始まった「新世紀エヴァンゲリオン」を、どの順番で見たらいいの?という方は、こちらのnoteを参考にしてください。 https://note.com/33_33/n/n63f881ca8d4b 感動の嵐の中、エンドロールが始まるベストタイミングで主題歌である宇多田ヒカルの「One Last Kiss」が流れます。この、曲の入りが最高によかったんですが、そのままもう一曲「Beautiful World」へと続くんです。そしてエンドロールに総監督として「庵野秀明」の名前がクレジットされたとたん。 ♪ Beautiful boy~ この、宇多田ヒカルの声のせつなさとやさしさと心強さが、最&高! これだけで泣けちゃう。

超能力に目覚めたオッサン大暴れ 映画「サイコキネシス 念力」 #592

隕石のひかりまみれの手で抱けばきみはささやくこれはなんなの (穂村弘『 回転ドアは、順番に』所収) 隕石のひかりに包まれてしまうのも怖いけど、ひかりが含まれたお水を飲んでしまうのも怖い。 映画「サイコキネシス 念力」は、湧き水に浮かんでいた「ひかり」を飲み込んだオッサンが、超能力に目覚めて大暴れしちゃうというお話です。 コワモテからコメディまで乗りこなす怪優リュ・スンリョンと、日本での活躍もめざましいシム・ウンギョンが父娘役を演じています。 ☆☆☆☆☆ 映画「サイコキネシス 念力」 https://www.netflix.com/title/80226424 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 妻子を捨て、警備員の仕事をしながら冴えない生活を送るソッコンは、ある日突然、自分が超能力に目覚めたことに気づく。ソッコンの娘ルミはチキン店の店長として街の人々から愛されていたが、立ち退きを要求する地上げ屋の襲撃に遭い、母を殺されてしまう。ルミの知らせを受けたソッコンは、超能力で立ち向かおうとするが……。 リュ・スンリョンとチキン店は、相性がいいというか、いまさらコメディにしかできないというか。やっぱり「エクストリーム・ジョブ」のイメージが強烈すぎましたよね。 特大級のブラックコメディ 映画「エクストリーム・ジョブ」 #185   今回は娘のルミ(シム・ウンギョン)が店を切り盛りしています。テレビでも紹介されるくらいの人気店だったのに、地上げ屋の標的になってしまうのです。 (画像はKMDbより) 娘の前でかっこつけたい父ですが、せっかくの超能力を披露しても、「手品?」と言われてしまう始末。いや、その表情のせいなんじゃ……。 (画像はKMDbより) 物体を大きく動かす時は身体全体で、微調整する時はお尻や舌を駆使してやりくり。そんなおバカ感爆発なシーンを、てらいもなく演じてしまえるところがリュ・スンリョンのすごいところです。 監督・脚本は、「新 感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホ監督。長年、離れ離れに暮らしていた父と娘の再会に、権力の横暴をかませてくるあたりが、にくらしい。 ゾンビがかわいそう!? 映画「新 感染 ファイナル・エクスプレス」 #161   映画のモチーフとなったのは、龍山電子商店街の再開発工事だそうです。ソウル市が発表した「漢江ルネサンス」計画の一環として、周辺の

韓国初のSF大作はやっぱりあの味 映画「スペース・スウィーパーズ」 #583

韓国初の宇宙SF映画として注目されていた「スペース・スウィーパーズ」ですが、2度の公開延期の結果、2021年2月5日にNetflixで配信されることになりました。全世界に同時公開され、人気映画ワールド1位を記録しています。 感想をひと言でいうと、成城石井と紀伊国屋で高級食材を買ってきて「高級レストランのハンバーグを作るぞー」と思ってたのに、いつもの「お家のハンバーグ」だったような感じでした。どんなや。 ☆☆☆☆☆ 映画「スペース・スウィーパーズ」 https://www.netflix.com/title/81094067 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 2092年、砂漠化や土壌の酸素化が進んだ地球は、人間がほとんど住めなくなっていた。宇宙開発企業UTSは宇宙空間に新しい居住地を建設するが、優秀な遺伝子を持つ一部の人間だけを選別することに。宇宙ゴミを集める賞金稼ぎの「勝利号」メンバーは、ある日、行方不明の子ども型ロボット爆弾「ドロシー」を発見。金目当てに取り引きをしようとするが……。 宇宙空間、賞金稼ぎ、宇宙船での戦闘ときたらもう、「スター・ウォーズ」ですよね。 (画像は映画.comより) その「スター・ウォーズ」でルークを演じたマーク・ハミルは、自身の役どころについて「オズの魔法使いのドロシーだと思った」と語っています。 「スター・ウォーズの主人公はハン・ソロだと思ってた」ルーク役マーク・ハミル、40年越しの告白 | THE RIVER   で、この韓国初の宇宙SF映画「スペース・スウィーパーズ」はですね。 「スター・ウォーズ」×「オズの魔法使い」×韓国映画 という、最強の組み合わせでできているといえます。 まず、子ども型ロボット爆弾の名前が「ドロシー」ですもん。めちゃくちゃ愛くるしいんですが、水素爆弾規模のパワーを持つとされています。 (画像はKMDbより) 賞金稼ぎのメンバーも、心臓を手に入れたいブリキの木こりや、勇気が欲しいライオンたちになぞらえることができます。そして、やっかいなものを見つけてしまって、頼まれるままに“届ける”ことになってしまう展開は、「スター・ウォーズ」のエピソード4そのもの(最初に公開されたやつね)。 おまけに 「神と共に」シリーズ や 「新 感染半島 ファイナル・ステージ」 などで高い技術力をみせたデクスター・スタジオがVFXを担当。今回も

パニックより怖い、狂気と正気が交錯する世界 『ひとめあなたに…』 #577

「人類滅亡の危機」をテーマにした映画や小説は、そのパニックぶりが見どころです。 映画なら「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」など。小説なら小松左京の『こちらニッポン…』『日本沈没』もありましたね。 昨日ご紹介した凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』を読んで、新井素子さんの『ひとめあなたに…』にも似た光景が出てきたことを思い出しました。 クソみたいな世界に鳴り響く愛の歌 『滅びの前のシャングリラ』 #576   このふたつの小説には派手な(?)パニックシーンがありません。それよりも、もっと普遍的な、人としてのあり方を描いています。 なのに、読ませる。 パニックより怖い。凪良さん自身、「新井素子さんの『ひとめあなたに…』からも影響を受けたと思います」と語っています。 「Web版 有鄰」の凪良さんインタビュー: https://www.yurindo.co.jp/yurin/23907/4 「新井素子さん」といっても、もしかしたら知らない人もいるかもしれませんね。日本SF作家クラブ元会長で、ライトノベルの草分け的存在です。 1981年に出版された『ひとめあなたに…』は、「一週間後、地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない」と知らされた主人公が、歩いて恋人に会いに行く、というお話です。 ☆☆☆☆☆ 『ひとめあなたに…』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 女子大生の圭子は、恋人・朗から突然の別れを告げられた。自分は癌にかかって余命いくばくもない、と言うのだ。翌日、「一週間後、地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない」というニュースが届く。圭子は最後にもう一度、朗に会いに行こうと決意。練馬の家から、彼の住む鎌倉を目指し、徒歩で旅をはじめるが……。 テクテクテクという徒歩の旅で、携帯電話もネットもない時代なので、情報も入らない。話の展開も「徒歩のリズム」な感じです。 鎌倉に向かう途中、圭子はイタかったり、ホラーだったりな4人の女性に出会います。死を前にした人びとの、最後の時間の過ごし方は、「突然別れを告げてきた、めっちゃムカつく恋人」への想いにも影響していきます。 『滅びの前のシャングリラ』では、人類滅亡のニュースが流れた翌日も、通常通り学校に行ったり、会社に行ったりする人びとが登場。「日本的やな……」と笑ってしまった。 役所もちゃんとやっていて

時空を超えて届く未解決事件のヒントがエモい ドラマ「シグナル」 #521

「週刊少年ジャンプ」の方程式といえば、「友情・努力・勝利」ですが、最近の韓国ドラマにおける黄金の方程式といえば「復讐・格差・初恋」ではないかと思います。 2020年の流行語大賞トップ10に選ばれた「愛の不時着」はもちろん、「梨泰院クラス」や「スタートアップ:夢の扉」など、日本でも人気になったドラマはどれも3つの要素を取り入れていました。 友人から「ヒョンビン演じるリ大尉ってセリが初恋の人なの?」という疑問をもらったので、ちょっと補足。ドラマの中でリ大尉のことを“母胎ソロ”と呼ぶシーンがあるんです。“母胎ソロ”=母胎から出てきて以来、ずーっとソロという意味の韓国語なので、おそらく彼はセリに会うまで恋をしたことがなかったのではないかと思われます。 閑話休題。 「復讐・格差・初恋」を活用した刑事ドラマなら、断然「シグナル」がおすすめ。キネマ旬報が主催する「プロが選ぶ! 【第1回 韓国テレビドラマコレクション大賞】」にて、総合第1位を獲得したドラマです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「シグナル」 https://www.netflix.com/title/80987077 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 警察のプロファイラーであるパク・へヨンは、廃棄処分となっていた無線機を見つける。そこへ突然、イ・ジェハンと名乗る刑事から、15年前の誘拐事件の手がかりを伝える声がする。事件はヘヨンの同級生が犠牲となり、未解決となっていた。これをきっかけにふたりの交信が始まるが、情報を伝えるイ・ジェハン刑事は過去の人間で、上司であるチャ・スヒョン刑事がずっと探している人物だった……。 未解決事件チームに配属されたパク・へヨンとチャ・スヒョン。演じるのは若手実力派俳優イ・ジェフンと、キリッとしたアネゴ肌のキム・ヘスのコンビです。過去からメッセージを送ってくる人物であり、スヒョン刑事の先輩でもあるイ・ジェハン刑事はチョ・ジヌンが演じています。 もー、わたしの好きな俳優ばっかり!!!というわけで見始めたのですが、あっという間に夢中になってしまうサスペンスドラマでした。 現在(2015年)では未解決になっている事件の、発生現場にいるのがジェハン刑事なのです。無線がつながるのは、1990年代の後半から。時には6年くらい連絡が途絶えていることも。へヨン刑事からすると1週間なんですけど。 竜宮城とのやり取りのようですが、

ドラマ「保健室のアン・ウニョン先生」 #490

「韓国ドラマはおもしろいんだけど、長いからねー」 という声をよく耳にします。「愛の不時着」などはだいたい1話が80分前後。それが16話まであるんですから、まぁドップリしちゃいますよね。 でも、チョン・セランさんの小説『保健室のアン・ウニョン先生』をドラマ化した作品は、1話が50分前後と短く、しかも6話完結! 学校を舞台にしたファンタジックなストーリーです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「保健室のアン・ウニョン先生」 https://www.netflix.com/title/80209129 ☆☆☆☆☆ 養護教師のアン・ウニョン先生は、人間の欲望がゼリー状の姿になって見えてしまうんです。演じているのはチョン・ユミ。映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の演技で、韓国の映画賞を受賞しています。 「82年生まれ、キム・ジヨン」のコン・ユが象徴するものについて考えてみた 「82年生まれ、キム・ジヨン」は、「なんか言いたくなる」小説であり、映画でした。心が反応しちゃうんです。キム・ジヨンというひとりの女性が生きていく中で、「ただ女性であるがゆえに」経験した差別と不合理の物語。できれば小中学校の授業はもちろん、企業の人事の方や、女性商材を扱う部署の人には必須で観てほしいくらいです。   アン・ウニョン先生はオモチャの剣でゼリーをピシパシ切り捨てていくのですが、とにかくいっぱいあるのでパワーを消耗します。先生の「充電器」となってくれるのが、漢文の先生であり、学校創設者の孫であるホン・インピョ先生。演じるのはナム・ジュヒョクです。 なんだかボヤーッとしたお坊ちゃま感がかわいらしい。起業を目指す若者を描いた「スタートアップ:夢の扉」では、天才エンジニアを演じています。女性経験がなく、ウブでかわいらしい。 “ジャンプの法則”は海を越える!? 起業を目指す若者たちの溌剌ストーリー ドラマ「スタートアップ:夢の扉」 #520   2004年以降、OECD加盟国の自殺率がトップという韓国。若い世代の絶望も深く、「N放世代」=すべてをあきらめざるをえない世代という言葉まで生まれるほどです。 小説を読んだ時も感じたことですが、ドラマの方がはるかに強くメッセージを感じます。 あなたを、守りたい。 CGやエフェクトを多用した、韓国ドラマのイメージを覆すポップさと、コミカルでかわいいドラマの中に込められた、深い想

まったく新しい映画体験に思うこと 4D映画「ハリー・ポッターと賢者の石」 #484

映画の公開20周年を記念して、「ハリー・ポッターと賢者の石」が初の3D化されました。体感型の4DXやMX4Dで上映されています。 映画を「配信」するサービスが増え、パソコンやスマホでも映画が観られるようになったいま、「劇場で観る楽しみ」を、最大限与えてくれる上映方法だと思います。 でも、なぜか、4D映画ってモヤッとしてしまう……。 クィディッチゲームの疾走感や、チェスの駒が破壊されるシーンの緊迫感は倍増されていたので、こうした場面の再現率、体感度は以前に比べてかなり上がってきたように感じます。 (画像はIMDbより) それでも、稲光、爆風や水滴など、ストーリーとのズレを感じてしまう。 むかし観た4D映画では主人公が「GO! GO!」と走り出すシーンで、スポットライトがピカピカと点滅していたんですよね。わたしの頭の中で、「パラリラ パラリラ~」という暴走族のバイクの音が再生されてしまいました。 そうしたストーリーとは関係のない効果は減り、洗練されてきた感じはするものの、やっぱりスッキリしないものは残るのです。 4D映画はなぜモヤるのだろうと考えていて、「誰の目線で映画を観ればいいのか混乱する」からかもしれないと気がつきました。 ここで、あらためて4D映画について説明しておきます。 4D映画とは、映画に合わせて光や風などの演出が施された、アトラクション型の「映画鑑賞設備」のことです。 2D映画でも、4D映画の設備で上映されなら、4D映画になります。今回わたしが観た「ハリー・ポッターと賢者の石」は、3D映画の4D上映でした。 日本で導入されている4Dシアターは2種類。韓国のCJ 4DPLEX社が開発した4DXと、アメリカのMediaMation社が開発したMX4Dです。わたしは今回、TOHOシネマズで観たのですが、導入しているのはMX4Dのほうでした。サイトによると、体感できる環境効果はこちら。 特殊効果 ・シートが上下前後左右に動く ・首元、背後、足元への感触 ・香り ・風 ・水しぶき ・地響き ・霧 ・閃光 なるほど、のっけからシートがジェットコースターのように揺れ、風が吹きつけ、地響きも、ふくらはぎに礫が当たるような感触も体験できました。 人間社会で虐待されながら育ったハリー・ポッターは、ハグリットと出会うことで初めて魔法の世界に触れることになります。 ホグワーツ魔

悪意の芽はゼリー状!? 養護教師のぶっとんだもうひとつの顔 『保健室のアン・ウニョン先生』 #444

韓国文学というと重厚な歴史小説のイメージがありましたが、最近ではファンタジーやミステリーも邦訳されるようになってきました。 ほのぼのファンタジーがお好きなら、『保健室のアン・ウニョン先生』をおすすめします。タイトルからは想像もできない、ちょっとぶっ飛んだ楽しさのある小説です。 ☆☆☆☆☆ 『保健室のアン・ウニョン先生』 https://amzn.to/3r5UlL1 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> “ゼリー”状になった人の欲望が見えてしまうアン・ウニョン。養護教諭となり、私立M高校に赴任してきます。この学校には、原因不明の怪奇現象や不思議な出来事が次々と起きているのです。BB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かっていく。はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか……。 霊が見える、というとおどろおどろしい感じがしますが、アン・ウニョン先生の目に映っているのは「カタツムリが這った後の粘液」のようなゼリーです。それをオモチャの剣でピシパシ切り捨てていく、という描写が、とにかくコミカルです。 ちょうど9月25日から、Netflixでドラマの配信も始まりました。主演はチョン・ユミ。もうすぐ映画「82年生まれ、キム・ジヨン」が公開されるので、そちらも楽しみです。 「82年生まれ、キム・ジヨン」のコン・ユが象徴するものについて考えてみた 「82年生まれ、キム・ジヨン」は、「なんか言いたくなる」小説であり、映画でした。心が反応しちゃうんです。キム・ジヨンというひとりの女性が生きていく中で、「ただ女性であるがゆえに」経験した差別と不合理の物語。できれば小中学校の授業はもちろん、企業の人事の方や、女性商材を扱う部署の人には必須で観てほしいくらいです。   学校に起きる奇異の原因は、どうやら地下室にあるらしい。ということで、アン・ウニョン先生は勇敢にも、武器を手に地下に降りていくのですが。 はたからみたら、オモチャの剣を振り回して遊んでるようにしか見えない!!! アン・ウニョン先生の怪しい言動を受け入れ、協力することになるのがホン・インピョ先生。学校の創立者の孫にあたります。そのせいか、強力な守護霊に守られているそうで、アン・ウニョン先生はパワーが落ちるとホン・インピョ先生の手を握って「充電」します。 このふたりが意外に

現実と仮想世界が溶け合うミステリー ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」#380

韓国ドラマを表す言葉のひとつに「マクチャンドラマ」があります。 「マクチャン」とは「どん詰まり」という意味なのですが、ジェットコースターのようにストーリーが急展開していく一方で、非現実的やろ!とツッコまれてしまうようなドラマを指して「マクチャンドラマ」といいます。 展開にムリはありつつ、ハマってしまう要素を持ったドラマという感じですね。 ストーリーがジェットコースターなら、撮影だって綱渡り。その日の夜に放送する予定のドラマを、昼間に撮影していることもあるそう。生放送同然の撮影システムは、何度も放送事故を起こすくらいです。 視聴者の反応を見て、構成を変えたり、キャラクターの厚みを変えたりすることもある。よくいえば視聴者第一主義ということかもしれません。 ただ、ラストに近くなるとやたらと回想シーンが増えるドラマもあって。 (撮影が間に合わなかった……?) それとも、 (放送の尺に足りなくなった……?) と感じてしまうこともしばしば。 ヒョンビン主演のドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」は、全16話ですが、10話までは抜群におもしろいんですよね。初回のドキドキ感に引かれてドンドン観てしまうのですが、文字通りドン詰まって失速してしまう「マクチャンドラマ」でもあったかなと感じました。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」 Netflix配信 https://www.netflix.com/title/81004280 ☆☆☆☆☆ ヒョンビン演じる投資会社の社長ユ・ジヌが、画期的なARゲームと出会うところから話は始まります。コンタクトレンズに映し出されるARの世界は現実ともリンク。武器とアイテムを手に入れ、スペインの騎士と戦うのです。 これ、ゲーム好きの人はめちゃくちゃハマると思います。 しかもゲーム画面と現実の映像がシームレスにつながっているので、「いまヒョンビンはどちらにいるんだっけ?」と思うことも。現実と仮想世界が完全に溶け合っているんです。 話は変わりますが、昨日、「東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト2020」という公開講義が配信されていて、アーティストの日比野克彦さんがこんな話をされていました。 (対談相手である青年失業家の)田中泰延さんは、ガリ版印刷からコピー機が誕生して、パソコンのソフトを経験している世代。一人の人間がこれだけのメディアの変化を経