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『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』#951

「歌は世につれ、世は歌につれ」といいますが、「文学は世につれ、世は文学につれ」ともいえるのかもしれません。 菊池良さんの『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』は、歴代の芥川賞から、“転換点”といえる作品を紹介した本。その作品が書かれた当時の日本を知ることで、より作品世界を味わえるようになっています。 こうして通して振り返ってみると、「文学は世につれ、世は文学につれ」ってホントにそうなんだなと実感しました。つまり、近代の歴史を振り返る本でもあるのです。 ☆☆☆☆☆ 『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 1冊も小説を読んだことのない少年が、文学好きな博士と一緒にタイム・マシンに乗って、歴代の芥川賞受賞作家に会いに行く、というストーリー形式で進みます。 この、「タイム・マシン」と「少年と博士」という組み合わせは、完全に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。オープニングなんか、まさに!な幕開けでした。 (画像リンクです) 菊池良さんといえば、「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」で一躍有名になった方です。ネタはおもしろかったんですが、この“真顔”が怖かった……。 世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ   その後、めでたくWeb制作のLIGさんに就職。コンテンツ記事を制作されていたそうで、わたしが一番記憶に残っているのは、ゲームチェアの広告記事。当時、この“真顔”が怖かった……。 【衝撃の事実】立つよりも座る方が楽なことが判明 | 株式会社LIG   上の記事では「座るほうが楽」という結論が出ておりますけれど、5年以上経ったいま、もしかしたら結論は変わったかもしれないですね。 リモートワークをしている時、半分くらいは立って仕事をしております! 相変わらず「座るほうが楽」なんだけど、運動不足のため、お尻と足が疲れてしまう。適度に立って仕事をするようになりました。 ちなみに、アメリカ在住の友人によると、Google勤務の方はスタンディングで仕事をする方が多いそうで、理由は「座っていると、思考が止まるから」だそうです。さすがすぎる……。 閑話休題。 LIGさんを退職された菊池さん。またまた世間を騒がせたのが、『もし文豪たちが カップ焼きそ

『一流の達成力』#938

「運は、偶然ではない」 ITベンチャーの創業物語をまとめたノンフィクション『ネット興亡記 敗れざる者たち』を読んだとき、成功を追い求めるあまり、倫理観が置き去りになっていることが気になりました。 大きなお金を稼ぐ。ビジネスを大きくする。そのために「人格」は不要なのかしら? 『ネット興亡記 敗れざる者たち』#674   “カリスマ体育教師”と呼ばれた原田隆史さんは、「運を引き寄せ、成功するには内面を磨くことが必要」と断言されています。20年間で3万人を指導した結果、分かったのは、成功は技術であることでした。 『成功の教科書 熱血!原田塾のすべて』#937   そして、成功の技術を支えるのが、「原田メソッド」。 ・明確な目標設定ができる「オープンウィンドウ64」 ・達成へのモチベーションを高める「スターシート」 ・自信を高める「日誌」 ・成功習慣を身につける「ルーティンチェック表」 たぶん一番有名なのが「オープンウィンドウ64」で、大谷翔平選手が高校1年生だったときに描いたという「マンダラチャート」の名前で知られるようになりましたよね。 なぜ、8×8=64マスの「マンダラ」に書き込むと、達成力が上がるのか。その秘密を解き明かした『一流の達成力』を読んで、わたしも「オープンウィンドウ64」を作ってみました。めちゃタイヘンだった……。 ☆☆☆☆☆ 『一流の達成力』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 社内研修で一度「マンダラチャート」を描いたことがありましたが、この時、足りなかったものが本を読んで分かりました。 原田先生がポイントとして挙げているのは、「心技体+生活」のすべてを入れることです。 実際、大谷選手はじめ、スポーツ選手やミスコン出場者に「オープンウィンドウ64」を作成してもらったところ、スキルやテクニックだけに着目した人より、人間性や内面を磨くことを書き込んだ人の方が、達成率が高かったのだそう。 なぜ、スキルだけでは成功できないのか。 スキルは人格という「土台」の上に築かれるものだからだと思います。 スキルやテクニックは、いわば地上に出ている枝や葉っぱの部分です。多様な技を身につけたり、深めたりするのと同時に、根っこの部分も太く・強くしないと、へなへなになってしまう。頭でっかちで倒れやすかったり、栄養がいきとどかなかったりしてしまうともいえます。 目標に掲げるものも、

『こころの対話 25のルール』#924

質問は「投げない」でください。 コミュニケーションは、キャッチボールであって、ぶつけ合いのドッジボールじゃないから。 社内の勉強会を開催するたび、メンバーにそう話していました。何気ない言葉遣いでも、そこに想いはのってしまうから、もっとひとつひとつの「対話」を大事にしてほしい。 そんなことをずっと考えていて、わたし自身は、いま「聴く」トレーニングをしています。 「聴く」スキルは、コーチングの中でも大きなウエイトを占めています。ので、これができないと「いいコーチ」にはなれないといえるくらい重要なものです。 「コーチング」という名前を聞いたことがある人は増えたようですが、具体的にどんなことをするものなのか、知らない人も多いかもしれません。 わたしは、「自分が応援したい人を、応援するためのコミュニケーションスキル」と呼んでいます(コーチの受け売り)。 「聴く」ことや、「対話」に関心があるなら、伊藤守さんの『こころの対話 25のルール』がおすすめです。 ☆☆☆☆☆ 『こころの対話 25のルール』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 伊藤守さんは、日本で初めてコーチングプログラムを開始した方です。略歴がnoteにまとまっていました。 コーチ・経営者「伊藤守さん」年表|佐藤 譲|note   本には、わたしたちが驚くほどに「聞かれていない」ことが描かれています。誰かと会話していても、 (次に何を話そうかな……) と思ったり、 (あ、その話ならわたしの方がよく知ってる……) と考えていたりして、「順番に」話しているだけ。ひとつずつのコミュニケーションは、「未完了」として、こころの中に積み残され、痛みや苦しみを引き起こす元になっているのです。 こうした「コミュニケーションの未完了」が、ぶつけ合いのドッジボールにたとえられています。 ユン・ガウン監督の映画「わたしたち」は、ドッジボールのシーンで始まり、ドッジボールのシーンで終わります。これが、まさに「コミュニケーションの未完了」を表していて、印象的でした。 映画「わたしたち」#923   「聴く」スキルには、いま注目が集まっているようで、書店に行ってもたくさんの本が並んでいます。その中でも、基本を知るなら、この本がおすすめです。 まずは、「自分は聞くのが得意だし」と思っている方の誤解を解きたい。「聴く」って、ぜんぜん受け身な行為じゃないで

『怖い絵』#916

中野京子さんの『怖い絵』は、「背景を知る」ことの大切さを教えてくれた本でした。 知識を持って見ることで、より深く味わうことができる。それは、美術だけでなく、小説や映画などでも同じかもしれません。 なによりドラマチック! 中野さんは「自分は美術の専門家ではなく、ドイツ文学を研究している者なのに」と書いておられましたが、だからこそ、「感覚」ではない美術鑑賞に着目した本が出来上がったともいえそうです。 ☆☆☆☆☆ 『怖い絵』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 多くのシリーズが刊行されていて、2017年にはシリーズの10周年を記念した「怖い絵」展も開催されました。 この時の目玉だったのが、ポール・ドラローシュが描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。思っていたよりも巨大で、堪能しました。 知れば知るほど背筋が凍る! 中野京子が選んだ、本当に“怖い絵”。   レディ・ジェーン・グレイは、在位9日でロンドン塔に幽閉され、処刑されてしまったというイギリス最初の女王です。「ジェーン女王」ではなく、「レディ」と呼ばれているところがすでに、悲劇の匂いがしますね。 処刑された時は、わずか16歳。結婚してから間もなかったそうで、左手にはめた指輪がピッカピカでした。本で彼女の境遇を知っていたからこそ、それに気付いたのだと思います。そして涙を誘われました……。 ドガの「踊り子」や、「サロメ」など、有名な絵も掲載されています。原田マハさんの小説『サロメ』を読んだときも、「怖い絵」展で見た絵を思い出しました。 『サロメ』#915   背景を知っていると、描いた人の情念まで受け取ってしまいそうだな。

『新庄のやり方50―人生・仕事に役立つ「SHINJO流」哲学』#901

来年のプロ野球は、かなりおもしろくなるのではないかと期待しています。 なんてったって、ショーマンの新庄さんが帰ってきたんだから! 監督就任会見で放った「ビッグボス」という呼び名。当然、流行語大賞に入っているんだと思ったら、ノミネート発表の日と重なっていたので対象外だったのだそう。 流行語大賞「ビッグボス」なし 時間的に間に合わず…選考委員やくみつる氏「繰り越しで判断いただければ」   選手時代から、その言動で注目を集めていた「ビッグボス」。やっぱり「持ってる」人は、なんか違うのかも。 そんな「ビッグボス」の野球人生の記録集『新庄のやり方50―人生・仕事に役立つ「SHINJO流」哲学』を読んでみました。 ☆☆☆☆☆ 『新庄のやり方50―人生・仕事に役立つ「SHINJO流」哲学』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 「目立ってもいいが、嫌われてはいけない」 「初心にこだわり、形にして持ち続ける」 「本音で生きると真実が見える」 などなど、新庄選手のスタンスは、ビジネスの世界でもマネしたくなるようなものがたくさんありました。 新庄選手というと、目立ちたがりの野球バカというイメージもあったように思います。上下関係の厳しい体育会系のど真ん中を、信念を持って歩くには実力も必要。 やるときはやる。そして、どこまでもポジティブに慣習を打ち破っていく姿は、テレビで見る以上のものがありました。 以前、友人から聞いた話があります。 投手以外の選手で重視されるのは守備・バッティング・走塁の力で、イチロー選手はどれも一級レベル。だから大リーグでも活躍できたわけです。では、新庄選手はというと、守備が特級レベルに高い。そこを見込まれた、という話でした。 仕事においても、あれもこれもと、いろんなスキルが求められるけど、どれもA級にするのは大変なこと。どれかひとつでも飛び抜けていれば、そこに活路があるのかもしれません。 やさしくて、ポジティブで、野球に対して純粋な「ビッグボス」。 学ぶところの多い話が満載でした。

『ファンタジーと英国文化 児童文学王国の名作をたどる』#877

『不思議の国のアリス』に『ナルニア国ものがたり』、『ピーター・パン』に「ハリー・ポッター」シリーズ。 子どものころに読んだ本だけでなく、大人になってから夢中で読んだ本の中にも、イギリス発のファンタジー小説がたくさんあります。 イギリスは、なぜこうした児童文学を生み出せるのか。 大妻女子大学比較文化学部教授の安藤聡さんの著書『ファンタジーと英国文化 児童文学王国の名作をたどる』によると、「ハリー・ポッター」シリーズは、第四次ファンタジー黄金時代の作品といえるそうです。イギリス製ファンタジーを巡る旅にワクワクしました。 ☆☆☆☆☆ 『ファンタジーと英国文化 児童文学王国の名作をたどる』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ フランスの英文学者ルイ・カザミヤンによると、ファンタジーはイギリスの「国民文学」なのだそう。写実主義小説と叙情詩の中間に位置するからです。 たとえば「ハリー・ポッター」シリーズには、現実世界に存在するキングス・クロス駅や、マグル(魔法を使えない人間)の食べ物が登場します。ハリーの親友であるロンのお父さんは、「電気」や「機械で動くもの」に興味津々。車を改造したりもしてましたよね。 (画像はIMDbより) 現実世界からファンタジーの世界へと逃避することで、現実を「再発見」することができる。これぞ、ファタンジーの一番の魅力といえます。 「食事」についてはおもしろい指摘もありました。 イギリスの食事といえば、「……」なことで有名ですが、「ハリー・ポッター」シリーズに登場する料理のうち、メインディッシュとなる料理は伝統的なイギリス料理がほとんどです。 でも、お菓子類は違う。 「蛙チョコレート」や「バーティ・ボットの全味ビーンズ」など、想像力に富んだ“魔法の”お菓子なんです。 (画像はIMDbより) このギャップはおもしろいなと本を読みながら感じていました。こうした食事内容について、安藤さんは、こう指摘されています。 “現実世界でも、英国料理はデザート類や茶菓が充実している割に、主食となる料理に対する英国人の関心は異常なほど薄いと一般的に考えられているが、『ハリー・ポッター』シリーズの魔法界においても不可思議な飲み物や菓子が多く存在するのに反して食事のメニューが現実的であるのは、このような英国の国民性を反映しているということなのかもしれない” 思わず笑った……。 近代

『ビジネス戦略から読む美術史』#859

西岡文彦さんの『ビジネス戦略から読む美術史』を読んで、もう一度、歴史を勉強し直したいなーとワクワクが止まりません。 歴史って、ホントにおもしろいなと思いませんか? プラトンの『国家』には「最近の若者は……」という言葉があって、ジェネレーションギャップは二千年前からあったんだなーと、なんだか笑ってしまいます。わたしごときが悩んでもムダムダと思えるような感じで。 『ビジネス戦略から読む美術史』では、技術の進化と社会の変化が、美術という芸術のあり方も変えていったことが、よく分かります。 ☆☆☆☆☆ 『ビジネス戦略から読む美術史』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 西洋美術は、聖書の物語をビジュアルで伝える役割を担っていました。そのため、描かれる場所は、教会や宮殿でした。フレスコという技法で壁や天井に直接描く「不動産絵画」だったんですね。 そこから油彩の技術が発達し、キャンバスに描かれるようになり「動産絵画」へと変化。 これは、現代でいえば、オフィスに出勤しなければ仕事ができない人と、リモートワークで十分仕事ができちゃう人との、境遇の差とのこと。 そんな「へー!」がいっぱいです。 印象派の販売戦略を立てた人物として紹介されているポール・デュラン=リュエルは、原田マハさんの小説『ジヴェルニーの食卓』にも登場します。『たゆたえども沈まず』のドイツ系ユダヤ人の画商とも接点があったのだそう。 (画像リンクです) (画像リンクです) こうしたひとつひとつの歴史の流れが、一大絵巻のように繰り広げられていくので、飽きずに一気に読むことができます。 あのダ・ビンチが、「ちくしょー! オレだって自宅で仕事してー!」と思っていたかもしれないと想像するだけで楽しい。 カシコク生きるヒントは、歴史の中にありそうですね。

『「利他」とは何か』#857

新型コロナウイルスの流行によって、仕事の仕方が変わった、という方は多いのではないでしょうか。 リモートワークになった。リアルでの商談がなくなった。仕事後の飲み会がなくなった。などなど。 リアルでの距離感はもちろん、交互に話さないといけないオンラインミーティングなど、他者とのコミュニケーションの取り方にも、大きな影響を受けましたよね。 こうした、いかに他者と関わるのかという問題を正面からとらえた本が『「利他」とは何か』です。 伊藤亜紗さん、中島岳志さん、若松英輔さんら、東京工業大学にある「未来の人類研究センター」の方々による考察が紹介されています。 ☆☆☆☆☆ 『「利他」とは何か』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ そもそも「利他」とは仏教の言葉だそうです。そして「利」という言葉は、肯定的な意味合いを指すことが多いのだそう。 とはいえ、「他人を利する」ことは、自然な心の動きなのか? そこに合理性は必要なのか? 見返りを求める気持ちは、あってはいけないものなのか? といった、考えれば考えるほど、「うーん……」となってしまいそうな問いが並んでいます。 なかでも伊藤亜紗さんは、「利他」に対する不信感から研究を始めたそうで、障がい者との交流や、資本主義経済の中で「利他」がどのように現われるのかという事例は、とても興味深かったです。 “利他の大原則は、「自分の行為の結果はコントロールできない」ということなのではないかと思います。” 哲学的な問いを、「わらしべ長者」の物語で読み解いたり、柳宗悦の美学からみてみたり、自分の中にも、さまざまな疑問が湧き上がってきます。 こういう正解のない問いを、武器としての思考にすることが、現代のリベラルアーツなのかもしれませんね。 著者のみなさんが所属されている東京工業大学のリベラルアーツ研究教育院は、「理工系専門知識」という縦糸と、「リベラルアーツ研究教育院」が提供する「教養」という横糸で未来を拓く人材を育成することがモットーだそう。 その中で動き出したのが、「利他プロジェクト」。 https://www.fhrc.ila.titech.ac.jp/ これはウォッチしていきたい!

『告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇』#853

怖すぎる。 YouTuberのコレコレさんが『告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇』でさらけ出したのは、あまりにも幼稚で、悪意にまみれた世界です。 「わたしは大丈夫」なんて、とても思えない。 SNSとカシコク付き合うためには必読!といえる本です。 ☆☆☆☆☆ 『告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ チェコで制作された「SNS-少女たちの10日間」という映画があります。これは、12歳のフリをした女性にSNSで友達募集をしてもらい、何が起こるのかを追ったドキュメンタリーでした。 映画「SNS-少女たちの10日間」#669   この映画の監督は、子どもを守るために「正しい知識を教えること」と「親子の信頼関係を築くこと」の重要性を説いていました。 でも、コレコレさんの元に相談にやって来た人の中には「親には言えない」という人も多く、犯罪に対して泣き寝入りするしかない状況は、日本でも起きていることがよく分かります。 困った人の駆け込み寺のようになっているコレコレさんは、小学生の時に「モテキ」を迎え、それが原因でイジメに遭ったのだそう。同級生たちの輪から逃れるために中学受験。16歳でごほうびに買ってもらったパソコンで配信デビュー。さまざまな企画ものコンテンツで人気になったYouTuberさんです。 コレコレチャンネル KoreTube https://www.youtube.com/c/korekorech わたしはいま、会社のプロジェクトで、社内メンバーのSNS利用に関するガイドラインの作成を進めていて、その関連で企業の炎上事件を収集していました。事例作成のためにですよ、念のため。 その過程でコレコレさんのことを知ったのですが、告発の配信は夢に見そうで、途中棄権してしまいました……。 それくらい、「インフルエンサー」と呼ばれる人たちの中には素行の悪い人がいたわけです。わたしの周囲にも「結婚詐欺!?」と言いたくなるような“捨てられ方”をした人がいました。 小学生が憧れる職業となった、YouTuber。好きなことをやって、おもしろいものを見せて、生きていくことには、たしかに夢があります。 でも、お金よりも、人間性が大事だよ……。 レイプや詐欺など、犯罪まがいのことをやって数百万稼いだところで、なんになるんだろう。かつての“友人”との暴露

『ワイルドサイドをほっつき歩け』#849

人は、こんなにも変わってしまうのか。 最近、恐怖したことがありました。早期退職して、ワイドショーをはしごするようになった「でぶりん」こと、ダンナ氏。もともとテレビ大好き・テレビが唯一の友だちな人だったので、放っておいたのですけれど。 まるで当事者意識のない、上から目線の評論家みたいなことを言うようになったのです。 もともと口数は少なくて、愚痴も言わないタイプだったのに。ちょっと心が追いつけなくなってしまいました。 ついに耐えきれず、「そういう言い方は楽しくないから、笑えるようにコメントして」と注文。それなりに“変化球”を考えるようになりました。 還暦をすぎて、環境も大きく変化したおっさんたちについては、ネガティブな印象で語られることが多いですが、彼らだって生まれた時から、ガンコでワガママなおっさんだったわけじゃない。 ブレイディみかこさんの『ワイルドサイドをほっつき歩け』に綴られている、“人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたち”に、笑いと、ほんのりした寂しさを味わいました。 ☆☆☆☆☆ 『ワイルドサイドをほっつき歩け ―― ハマータウンのおっさんたち 』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ ブレイディみかこさんは、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が「本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞」を受賞。そして、この『ワイルドサイドをほっつき歩け』で、史上初の著者2年連続「本屋大賞2020 ノンフィクション本大賞」にノミネートされました。 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が、青々と茂る若葉の季節を生きる少年たちが直面する問題について語っているのに対し、『ワイルドサイドをほっつき歩け』で紹介されているのは、人生の秋を生きる“おっさんたち”の離婚、病、アルコール、EU離脱問題、失業、そして恋。 特に何度も触れられている医療制度の問題は、命に直結する問題なだけに、システムへの愛より治療では!?という気がしてしまう。 イギリスでは、完全無料の医療機関NHSと、有料の民間医療機関があるそうです。 これは、第二次世界大戦後の「ゆりかごから墓場まで」という社会福祉国家を目指す政策によって誕生した制度です。そして、1979年にサッチャー政権が誕生。新自由主義経済政策を打ち出し、「福祉国家」から「自立国家」へと舵を切ったせいで、無料で医療が受

『コロナ時代の選挙漫遊記』#839

学生時代、選挙カーに乗っていました。 もちろん、なにかの「候補者」として立候補したわけではありません。「ウグイス嬢」のアルバイトをしていたんです。候補者による街頭演説は、午前8時から午後8時までと決まっているため、選挙事務所から離れた地域で演説をスタートする日は、朝の6時くらいに出発することもあり、なかなかのハードワークでした。 選挙の現場なんて、見るのも初めて。派遣される党によって、お弁当の“豪華さ”が違うんだなーとか、候補者の年齢によって休憩時間が違うんだなーとか、分かりやすい部分で差を感じていました。 それでも、情勢のニュースが出た翌日なんかは事務所の中がピリピリしていることもあり、真剣勝負の怖さを感じたものでした。 「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちれば“ただの人”だ」とは、大野伴睦の言葉だそうですが、誰だって“ただの人”にはなりたくないですもんね……。 そんな代議士を選ぶ第49回衆議院議員総選挙の投票日が、今週末10月31日に迫っています。   与党で過半数を獲得できるのかが注目されていますが、わたしが毎回気になっているのは投票率です。今回は、どれくらい“上がる”のかを、いつも期待して見ているのですが、なかなか爆上がりはしませんね……。 ちなみに、2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙の投票率は、53.68%でした。 『コロナ時代の選挙漫遊記』の著者であり、フリーライターの畠山理仁さんは、選挙に行かないことに対して、こう語っています。 “選挙に行かないことは、決して格好いいことではない。” 全国15の選挙を取材したルポルタージュ『コロナ時代の選挙漫遊記』を読むと、なるほど、こんなエキサイティングな「大会」に積極的に参加しないのはもったいないことがよく分かります。 ☆☆☆☆☆ 『コロナ時代の選挙漫遊記』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 昨年行われた東京都知事選で、「スーパークレイジー君」という党があったのをご存じでしょうか? またオモシロ系が出てきたのかしら……と、スルーしてしまったのですけれど、本を読んで、とても真剣に勝負していたことを知りました。300万円もの供託金を払ってまで挑戦するんですもん。そりゃそうですよね。 この方の演説を、生で見てみたかった。もったいないことをしてしまった。 こんな風に後悔しないで済むように、畠山さんは

『パークアヴェニューの妻たち』#833

資産10億米ドル以上(約1000億円)の人は、世界中に2189人しかいない。 世界の総人口は、「世界人口白書2021」によると、78億7500万人。上位0.00003%の人だけが「ビリオネア」と呼ばれているんですね。 世界中に2189人しかいない「ビリオネア」は、なぜ全人類6割より財産が多いのか   そんな富裕層の数パーセントが好んで暮らしているのが、ニューヨークの超高級住宅地アッパー・イーストサイドだそう。「SEX and the CITY」でキャリーが住んでいる街という設定でした(実際のアパートメントがあるのはウエストビレッジ)。 (画像リンクです) アッパー・イーストサイドでは、男たちは高学歴で高収入。女たちは最先端のファッションを身にまとい、バーキンを持って歩く……。 子育てのためにそんな街へ引っ越したウェンズデー・マーティンさんが見た、街の姿とは。そしてそこで暮らす“女たち”のリアルとは。 『パークアヴェニューの妻たち』は、マーティンさんの専門であるフィールドワークの知見を生かして観察したエッセイです。 ☆☆☆☆☆ 『パークアヴェニューの妻たち』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 舞台は、パークアヴェニューというサバンナ。過酷な弱肉強食社会、下克上が当たり前のサバイバルの街です。「ウシャーーーッ」という感じで攻撃をしかけてくる女性たちの習性を、ゴリラや猿などの類人猿と比べながら分析しています。 引っ越し当初はママ友もなく、無視されたり、意地悪されたり。毎日がドキドキの大冒険そのもの。 歩道を歩くにしても「カースト」があるようで、一番上の階級となるにはバーキンを手に入れるしかない!!!と奮闘する姿には、ちょっと笑ってしまいました。 街に脅えていたはずが、知らず知らずのうちに、自分も染まっていくのか……。 女性たちが自分の美を守るためにするストイックな行動も驚きでした。人としての温もりを感じさせない“ご近所さん”たちですが、マーティンさんの身に起きた不幸に対しては、親身に寄り添う姿をみせてくれます。 林真理子さんのエッセイに、東京生まれの人はパジャマでコンビニに行けるけど、地方出身者はおめかししてからじゃないとムリ!という話が出てきます。 都会に暮らしてきたといっても、本人にとってはそこが“地元”。「オシャレの街・東京」というイメージの強い地方出身者とは差が生ま