なぜ、学ぶのか。 答えは人によっていろいろだと思います。わたしは知識を得ることで見る目を養い、自分の言葉を獲得することが楽しいと感じるし、なにより世界が広がることがうれしい。 でも、これは学んだ立場からの結果論かもしれないですね。 子どもなら、ウニョウニョして訳の分からない文字を追うよりも、野原で犬を追いかけていた方が楽しいですもん。 恵泉女学園の創立者・河井道もそうでした。 教育を受けられなかった母から諭されるも、学校から逃げ回った河井道。親の都合で三重から北海道へ移住した後、ようやく学ぶことのおもしろさに目覚めます。 女性に対する教育が当たり前ではなかった時代に、アメリカ留学を果たし、教育に生涯を捧げた人生。 柚木麻子さんの小説『らんたん』は、そんな河井道の「光をシェアする」精神を描いた小説です。 ☆☆☆☆☆ 『らんたん』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。 彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだった……。 河井道が、「シスターフッド」の関係にあった渡辺ゆりと共に、1929年に創立した恵泉女学園は、いまでは中高一貫校となり、大学もあります。で、実は柚木麻子さんの母校でもあるそう。 恵泉女学園について | 学校案内 | 恵泉女学園 中学・高等学校 河井道は伊勢神宮の神主の娘として生まれたにも関わらず、洗礼を受け、キリスト教に改宗。アメリカのブリンマー女子大に留学する機会に恵まれるなど、高等教育を受けられた女性なんです。 道に学ぶことの喜びを教えてくれた人々が、とにかく豪華。明治から大正、昭和にかけての女性運動、女性の教育運動に関わった人たちが多く登場します。 北海道で出会ったのは、新渡戸稲造。五千円札の人です。河井道が留学する際、一緒の船に乗るんですが、長旅に飽きた新渡戸に、「日本を紹介する本を英語でお書きになっては?」と提案。それが『武士道』です。マジか。 (画像リンクです) 留学を勧め、手配してくれたのは津田梅子。現在の津田塾大学の創立者です。アメリカでは偶然出会ったご夫婦がロックフェラー家の人だったり、野口英世に会ったり。反抗的な教え子の中には、平塚らいてうがいます。北海道時代からアメリカ、東京でも「腐れ