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ドラマ「応答せよ1997」#941

「韓国の追っかけは、本当に“推し”と結婚できると思ってるんですよ」 ドラマ「応答せよ1997」を観たという話をしたとき、韓国人の友人が説明してくれました。 ドラマの中で、チョン・ウンジ演じるシウォンは、H.O.T.のトニー・アンの熱烈なファンでした。コンサートに行って、倒れるくらい叫び続けるんです。 彼女も本当はトニーと結婚したかったのかな……。 H.O.T.とSechs Kiesは、90年代に絶大な人気を誇るアイドルグループで、女子高生たちは文字通り熱狂したんだそう。 (画像リンクです) ノスタルジーとコメディが融合し、ミステリー風味を加えたドラマ「応答せよ1997」。当時まだ新人だったチョン・ウンジとソ・イングクの出世作です。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「応答せよ1997」 (画像リンクです) Amazonプライム配信:https://amzn.to/3ouUHuA ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 2012年、かつて釜山廣安高校で同級生だった仲間たちは33歳になり同窓会を開いていた。この中の誰かが今夜結婚を発表し、勉強も恋もそっちのけでアイドルの追っかけをしていたシウォンは、この中の誰かと夫婦になり現在妊娠中。シウォンの幼馴染で優等生のユンジェ、ユンジェの親友で優しいジュニ、ムードメーカーのソンジェ、ソウルからやって来た転校生のハクチャン、シウォンの親友のユジュン、さらに当時彼らの高校の教師をしていたユンジェの兄ジョンホ。果たしてこの中の誰が結婚するのか、シウォンの夫は誰なのか……。 2012年現在と、1997年の高校時代が行ったり来たりしながら進みます。制服姿のチョン・ウンジとソ・イングクが、清らかでかわいい過ぎるの。 字幕だと分かりにくいですが、舞台が釜山なので、高校時代はみんな方言で話しています。 が。 2012年の大人になったメンバーは、きれいな標準語(ソウルの言葉)を話しているんです。 それが、とてもせつない。 わたしは関西から東京に来て、東京弁を話すようになったとき、なんとなく自分の一部を失ったような気がしました。 むかしは東京弁なんて、かっこつけて気取ってるようにしか聞こえなかったのに。 まぁ、いまでも頭の中では関西弁が流れていて、外に出る言葉としては“翻訳”しているようにも思いますが。 慣れ親しんだ自分の「母語」を変えてしまう何か。それが、東京出身者と地方出身

映画「パイプライン」#940

なんだか“穴掘り”コメディが続いちゃったな。 ふと、そんな気がしてしまった映画「パイプライン」。送油管に穴を開けて盗んだ石油を転売するという、発想がキテレツなストーリーで、ドタバタ感もたっぷり。ひたすら楽しい映画です。 最高の穿孔技術を持っているピンドリ役をソ・イングクが演じています。「君に泳げ!」以来8年ぶりの映画で、2作目の主演。 ドラマ「応答せよ1997」や 「元カレは天才詐欺師」 でみせた、ワルかわいさ全開で、ソ・イングクのよさ全部のせ!なストーリーでした。 ☆☆☆☆☆ 映画「パイプライン」 公式サイト: https://klockworx-asia.com/pipeline/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 盗油業界最高の穿孔技術者として知られるピンドリは、大企業の後継者ゴヌが立案した、数千億ウォンの石油を盗む計画に参加することに。プロ溶接工のチョプセ、地中を透視できるかのように把握しているナ課長、怪力の掘削人ビッグショベル、彼らを監視するカウンターと、人生の大逆転を夢見るメンバーが作戦に加わり、互いに騙し騙されながら計画を進めていくが、やがて事態は予想外の方向にこじれ始めていき……。 送油管に穴を開けて石油を盗み出す「盗油」。日本では聞いたことのない犯罪なので、映画のための設定なのかと思ったら、韓国では年間10件ほど起きていたんだそう。2020年にはたった1件に減ったぜ!わーい!という記事がありました。 [르포]도유범죄 10분의 1로 줄였죠… 석유공급 종착역 판교저유소 가보니   「盗油」って、たしかにライフラインへの打撃は大きいけど、大胆だけど地味な犯罪ですよね。おまけに、“穴掘り”映画って、ほとんどの場面が地下になってしまうんです。 その単調になりそうな展開を、裏切り行為とだまし合い、ワケアリメンバーの事情で盛り上げるので、飽きさせない。下手すると「ありきたり」になりそうな素材をうまく組み立て、ド派手にドッカーンが楽しめます。 ユ・ハ監督は、この映画を「負け犬のアクション・カーニバル」と語っていて、なるほど、まさに!でした。 盗賊一味のリーダーであるピンドリを演じたソ・イングクは、筋肉美を披露しつつ、泥まみれの焦燥感漂う風貌。 (画像はKMDbより) インタビューで、「着飾るけどヒゲのそり残しがあるとか、もし気づいてもらえたらありがたい」と語ってい

映画「コーダ あいのうた」#939

「I’ve looked at clouds from both sides now」 両サイドから雲を見てみたの、って感じでしょうか。映画「コーダ あいのうた」の中で、主人公のルビーがオーディションで歌った曲が、まさしくこの映画を表していました。 ジョニ・ミッチェルジの「青春の光と影(Both Sides Now)」という曲です。 ルビーが歌ったバージョンがこちら。 両サイドから見てみる。 聴覚障害を持つ人と健聴者の、どちらもが「音楽を感じる」仕掛けがあって、ウルウル・ボロボロ泣きました。 ☆☆☆☆☆ 映画「コーダ あいのうた」 https://gaga.ne.jp/coda/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 海辺の町で両親と兄と暮らす高校生のルビー。家族の中でひとりだけ耳が聞こえるルビーは、幼い頃から家族の耳となり、家業の漁も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいたV先生は、音楽大学の受験を強く勧めるが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは家族を助けることを決意するが……。 この映画は、2015年に公開されたフランス映画「エール!」のリメイクです。 (画像リンクです) 酪農家から漁業一家へと設定はいろいろ変わっていますが、4人家族の中で、たったひとり健聴者がいて、その子が天才的な歌声を持っている、という設定は同じです。 ルビーは、朝早くから父と兄と一緒に漁船に乗って漁を手伝い、両親が“外部”と交渉するときには通訳を務めています。子どものころからずっと、その役回りだったので、家族にとっては「当たり前」のことでした。 でも、V先生との出会いによって、初めてやりたいことができたルビー。 家族か、自分の夢か。 思い悩む姿は、過去の自分とも重なってしまいました。 ママもパパも、いい感じに利己的なんですもん。「あなたを頼りにしてるのよ」という言葉は、あるときは承認欲求を満たす言葉になるかもしれないけれど、子どもを縛る呪文にもなります。 親の期待通りに生きなくてもいいし、親の役に立つことを優先しなくてもいい。 家族第一で生きてきたルビーの勇気が試される瞬間でした。 でも、ルビーの歌声がどんなものなのか、家族は聴くことができません。だから、ルビーの挑戦に対しても及び腰になってしま

『一流の達成力』#938

「運は、偶然ではない」 ITベンチャーの創業物語をまとめたノンフィクション『ネット興亡記 敗れざる者たち』を読んだとき、成功を追い求めるあまり、倫理観が置き去りになっていることが気になりました。 大きなお金を稼ぐ。ビジネスを大きくする。そのために「人格」は不要なのかしら? 『ネット興亡記 敗れざる者たち』#674   “カリスマ体育教師”と呼ばれた原田隆史さんは、「運を引き寄せ、成功するには内面を磨くことが必要」と断言されています。20年間で3万人を指導した結果、分かったのは、成功は技術であることでした。 『成功の教科書 熱血!原田塾のすべて』#937   そして、成功の技術を支えるのが、「原田メソッド」。 ・明確な目標設定ができる「オープンウィンドウ64」 ・達成へのモチベーションを高める「スターシート」 ・自信を高める「日誌」 ・成功習慣を身につける「ルーティンチェック表」 たぶん一番有名なのが「オープンウィンドウ64」で、大谷翔平選手が高校1年生だったときに描いたという「マンダラチャート」の名前で知られるようになりましたよね。 なぜ、8×8=64マスの「マンダラ」に書き込むと、達成力が上がるのか。その秘密を解き明かした『一流の達成力』を読んで、わたしも「オープンウィンドウ64」を作ってみました。めちゃタイヘンだった……。 ☆☆☆☆☆ 『一流の達成力』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 社内研修で一度「マンダラチャート」を描いたことがありましたが、この時、足りなかったものが本を読んで分かりました。 原田先生がポイントとして挙げているのは、「心技体+生活」のすべてを入れることです。 実際、大谷選手はじめ、スポーツ選手やミスコン出場者に「オープンウィンドウ64」を作成してもらったところ、スキルやテクニックだけに着目した人より、人間性や内面を磨くことを書き込んだ人の方が、達成率が高かったのだそう。 なぜ、スキルだけでは成功できないのか。 スキルは人格という「土台」の上に築かれるものだからだと思います。 スキルやテクニックは、いわば地上に出ている枝や葉っぱの部分です。多様な技を身につけたり、深めたりするのと同時に、根っこの部分も太く・強くしないと、へなへなになってしまう。頭でっかちで倒れやすかったり、栄養がいきとどかなかったりしてしまうともいえます。 目標に掲げるものも、

映画「ハウス・オブ・グッチ」#936

やってくれるぜ、リドリー・スコット監督! 映画「ハウス・オブ・グッチ」を観て、思わずそう言いたくなりました。 高級ブランド「GUCCI」の創業者一族を描いた物語。キャストはレディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レトという豪華さです。 まだ劇場で上映しているところも多いので、大きなスクリーンでぜひ。 ☆☆☆☆☆ 映画「ハウス・オブ・グッチ」 公式サイト: https://house-of-gucci.jp/ ☆☆☆☆☆ 序盤は、パトリツィア・レッジャーニと、グッチ創業者の孫であるマウリツィオ・グッチのロマンスがメインに進みます。 パトリツィアはお父さんの運送業を手伝っているワーキングウーマンで、決して貧しい家庭の女性ではありません。 でも、巨大な金ぴかの肖像画=<アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像>を見て、「……ピカソ?」と言ってしまうところから、教養がないことがバレてしまう。 正解は、クリムトです。 【作品解説】グスタフ・クリムト「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I   ガッチガチにボディラインを強調したファッションから、全身「GUCCI」でまとめ、ゴージャスな女性へと変身していくパトリツィア。 (画像は映画.comより) そのマウリツィオを演じる、アダム・ドライバー。やっぱりオドオドしていて、育ちの良さと、女性経験のなさがダダ漏れの青年です。 従兄のパオロ・グッチを演じるジャレッド・レトの芸達者ぶりも見逃せない。そして、実の父に結婚を反対され、一族の中で孤立したふたりを支援したのが、伯父のアルド・グッチ。アル・パチーノの「オラオラおっさん」感が最高によかった。なんてったって、「GUCCI」を「家族割引」で売ってくれるんですよ。 (画像は映画.comより) かわいがってきたふたりに裏切られたことを知り、涙を見せるアル・パチーノ。「パパー!!」と叫びたくなってしまった。 実際、原作はあるものの、“王国の継承”という点で「ゴッドファーザー」を思わせる筋書きでもあるんですよね。 人生とは操り、操られるものであり、相手に「ノー」とは言わせず、欲しいものを手に入れる。 そして、受け継がれる「血」。 残念ながら、3代目にはデザインセンスも、経営センスもなかったようで、王国が崩壊していくのです。 そのきっかけとなったのがパトリツィアの存在、とされてい

映画「声もなく」#933

善と悪の境界線が溶けていく。 デジタルの世界は「0」と「1」の二元論でできていて、いまわたしの生活は、そんなデジタルに支えられているけれど、すっぱりきっぱりと切り分けられないものだってあります。 なにかの事件が起きるたび、テレビのワイドショーでは「悪人」を探し出して断じるわけですが、自らの立つ「善人」の位置は、誰が決めてくれたものなのか。 韓国の新人監督ホン・ウィジョンの映画「声もなく」を観て、そんなことを考えていました。 ユ・アインとユ・ジェミョンが“犯罪者”コンビを演じています。 ☆☆☆☆☆ 映画「声もなく」 公式サイト: https://koemonaku.com/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> テインとチャンボクは、普段は鶏卵販売をしながら、犯罪組織から死体処理などを請け負って生計を立てていた。ある日、犯罪組織のヨンソクに命じられ、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを1日だけ預かることに。しかしヨンソクが組織に始末されてしまったことから、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まり……。 ※ネタバレありです。ご注意ください※ 青年テインを演じるのは、ユ・アイン。この役のために15kgも体重を増やして臨んでいます。猫背でぽっちゃりしたお腹が、新鮮でした。パンフレットの監督インタビューによると、太ったり痩せたりしてイメージを固め、依頼通りに「だらしなく」太ってくれたんだそう。 (画像は映画.comより) 理由は明らかにされていませんが、テインは言葉を発することができないという設定。99分間、本当にひと言も発しません。 代わりに、仕草や表情で感情を伝えています。 そんなテインを幼い頃に引き取り、いまは「裏稼業」も手伝わせている相棒が、チャンボク。ユ・ジェミョンがおしゃべりで、腰が低くて、人のいいおっちゃん感満載で演じています。「梨泰院クラス」の会長とは正反対の空気感でした。 チャンボクが謙虚に、ていねいに話せば話すほど、笑いを誘うという不思議な役柄です。 (画像は映画.comより) ユ・ジェミョンのおしゃべりがブラックなユーモアに包まれているので、思わず「フフッ」となってしまうのですが、この映画の登場人物は、ド底辺もド底辺な生活を強いられている人たちです。 おそらくは障害があること、学がないことで社会から落ちこぼれ、救済システムも届かないところで、ただ生き

映画「コレクターズ ソウルに眠る宝刀を盗み出せ」#932

韓国版「インディ・ジョーンズ」は、痛快・爽快だった! イ・ジェフンやチョ・ウジンといった芸達者な俳優たちが、“盗掘”のスペシャリストを演じた映画「コレクターズ ソウルに眠る宝刀を盗み出せ」。 だまし合いとリベンジが、軽~いノリで展開されるので、気持ちよく笑える映画です。 ☆☆☆☆☆ 映画「コレクターズ ソウルに眠る宝刀を盗み出せ」 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 天才盗掘師のカン・ドングは、ある盗みをきっかけに古美術家でエリートキュレーターのユン室長に目をつけられる。彼女のボスの命令により、ドングは「韓国のインディアナ・ジョーンズ」と自称する古墳壁画盗掘専門家のジョーンズ博士とタッグを組み、高句麗の古墳壁画を盗むことに成功。ユン室長の信頼を得たドングは、韓国のど真ん中・宣陵に眠る「李成桂の刀」を盗む危険な取引を提案するが……。 カン・ドングを演じるのは、イ・ジェフン。 「金子文子と朴烈」 や 「シグナル」 とはまた違う、知恵も、熱さもモリモリな青年です。 その相方となる古墳の壁画盗掘専門家を演じるのは、チョ・ウジン。なんと、自称「韓国のインディアナ・ジョーンズ」。当然、帽子もかぶってます。そしてこれが上手いオチに使われています。 (画像は映画.comより) ドングの抱える過去は、わりと早い段階で明かされるので、あとはどうやってリベンジを果たすのかを楽しみに観ることができます。 お仲間もクセのある人ばかりなんですが、イム・ウォニが合流したところで、「キタキタキターーーッ!!」となりました。 画像の中、車の横を歩いているおっちゃんです。 (画像は映画.comより) ドラマ 「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です」 では、義理堅く、懐の深い弁護士を演じていましたが、「神と共に」シリーズや 「補佐官」 シリーズでみせた、コミカルな演技も大好き。 (いつ、泣き真似をしてくれるんだろう……) と期待して待っていたら、期待通りの展開が待っていました。 悪を持って悪を制す部分はありつつ、最後は「みんないい人」で終わるところも、韓国映画らしさが漂っています。 韓国版・ジョーンズ博士の機知とキュートさが、最高に楽しめる映画。日本ではブルーレイが発売されているくらいで、シネマートの「のむコレ」で上映されていました。 アジア作品を中心とした選りすぐりのラインナップ!劇場

映画「キングスマン ファースト・エージェント」#931

「マナーが紳士をつくる」 スパイ映画は数多くあるけれど、「キングスマン」シリーズは異色かもしれません。なにしろ「国家」の後ろ盾はない「民間」の組織なんですから。モットー(?)は、上に書いた「マナーが紳士をつくる」なので、“貴族的”な言動が求められる。そして、ユニフォーム(?)は、オーダーメイドのスーツ! これまでに公開されたのは、コリン・ファースとタロン・エガートンがコンビを組んだ「キングスマン」。おバカ加減が倍加した「キングスマン ゴールデン・サークル」。 Amazonプライム配信中 (画像リンクです) Amazonプライム配信中 (画像リンクです) このシリーズ2本のプリクエルにあたるのが、「キングスマン ファースト・エージェント」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「キングスマン ファースト・エージェント」 公式サイト: https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingsman_fa ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 1914年、ヨーロッパに戦争の気配が広がる中、キッチナーの訪問を受けたオックスフォード公と息子コンラッドは、オーストリアのフェルディナント大公の護衛を依頼される。しかし、サラエボで大公夫妻は死亡。世界大戦が始まったことで、コンラッドは軍隊に志願しようとするが……。 このシリーズの舞台は、なんといっても、ロンドンのサヴィル・ロウにある高級テーラー“キングスマン”です。高級なショップの“裏の顔”がスパイ組織なわけですが、1914年時点では、本当の“高級テーラー”です。 安全な密会の場所として選ばれたのが、“キングスマン”だったのです。 なぜ、組織のアジトが“高級テーラー”なのか。なぜ、貴族的な行動が求められるのか。といった組織の誕生秘話が明らかにされていきます。 “キングスマン”で仕立てられたスーツは、大人の証。セーターを着た青年が、変身する姿は感動的です。 (画像は映画.comより) 従軍して、国家の役に立ちたい息子と、亡くなった妻との約束のために、息子を戦争から遠ざけたい父。 主軸はこれなんですが、この映画の「ヴィラン」が実在の、歴史上の人物たちのため、歴史のおさらいみたいな話でもありました。この時代の歴史を勉強してから行けば、より楽しめるかも。 一番の見どころは、“怪僧”と呼ばれたラスプーチン。ロシア皇帝に仕えた祈祷師で、

映画「中島みゆき 劇場版 ライヴ・ヒストリー 2007-2016 歌旅~縁会~一会」#930

わたしには、こんなにも「恩人」と呼べる人がいたんだ……。 この方たちに、もっともっと、ちゃんと感謝を届けたい。 中島みゆきさんのライブツアーを集めた「劇場版 ライヴ・ヒストリー 2007-2016 歌旅~縁会~一会」を観ながら、ずっとそんなことを考えていました。 現在、劇場公開されています。 ☆☆☆☆☆ 映画「中島みゆき 劇場版 ライヴ・ヒストリー 2007-2016 歌旅~縁会~一会」 公式サイト: https://miyukimovie.jp/ ☆☆☆☆☆ 10年間のライブ映像を再構成した劇場版。「空と君のあいだに」や「地上の星」など、テレビ番組の主題歌になった曲、「糸」や「時代」といった懐かしい曲まで、名曲15曲を5.1chサラウンドで味わうという贅沢な時間でした。 もー、初っ端からボロボロ泣きっぱなし。 その曲に初めて会った時のこと、“打ちのめされて”いた時にラジオから歌が流れてきた時のこと、“くじけないで”と言われた時のこと、などなどが思い出され、そして感じたのです。 わたしはこれまで、周囲の人にとても恵まれていた、と。 そんな「恩人」たちに、どれだけ感謝を伝えてきただろう。 セットリストを見ていても、今回の劇場版は「人とのつながりと感謝」がテーマだったのではと思えてきます。それは、いまの時代に一番求められているものなのかもしれません。 <セットリスト> 糸 宙船(そらふね) ファイト! 誕生 地上の星 空と君のあいだに 時代 倒木の敗者復活戦 世情 ヘッドライト・テールライト 旅人のうた 命の別名 麦の唄 浅い眠り ジョークにしないか 変わりゆく社会を定点観測するように、時代時代を歌詞にしてきた、みゆきさん。「夜会」の劇場版が公開された時は、「街角のクリエイティブ」でコラムを書かせてもらいました。 「夜会工場」言葉の魔術師・中島みゆきの声に心が震える   このコラムにも書きましたが、わたしは10代のころから、みゆきさんのファンです。ツアーの時は京都会館や大阪城ホールに通い、高校生の時は学校をサボって東京まで来たこともありました。 “東には東の正しさ”があると知った、上京したてのころのわたし。 “世の中はいつも臆病”だから、人生は自分の“手で漕いで”生きていくしかないと悟ったころのわたし。 “どこへ帰るのかも”分からなくなって、“伝えない言葉”を選ぶように

映画「わたしたち」#923

ストップ!!! そんな風に自分の感情に声をかけられたらいいのに。 なにかイヤなことがあった時や、ムッとすることがあった時、感情的に反応するのではなく、物事と少し距離をとって、自分の反応を選ぶことができます。というか、できるはずなんです。 でも、一度スイッチが入ってしまうと止められない。 言うつもりではなかったことまで、口から飛び出してしまうことだってあります。 仲良しだった友だちとのケンカシーンが印象的な、映画「わたしたち」には、取り返しのつかないひと言を口走ったために、決定的に亀裂が入ってしまう子どもたちが出てきます。 ユン・ガウン監督は、自身の子ども時代をテーマにシナリオを練ったのだそう。 小学生の「スクールカースト」の残酷さ、子どもの心のやわらかさを存分に感じられる映画です。 ☆☆☆☆☆ 映画「わたしたち」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 学校でいつもひとりぼっちだった11歳の小学生の少女ソンは、転校生のジアと親しくなり、友情を築いていくが、新学期になると2人の関係に変化が訪れる。また、共働きの両親を持つソンと、裕福だが問題を抱えるジアの家庭の事情の違いからも、2人は次第に疎遠になってしまう。ソンはジアとの関係を回復しようと努めるが、些細なことからジアの秘密をばらしてしまい……。 “オトナ”になると、なかなか「友だち」といえる関係をつくるのが難しいなと感じます。仲のいい人は、友だちというより「仕事仲間」だったりしませんか? 「友だち」って、どうやってなるんだっけ……。 「優しい嘘」と「わたしたち」を続けて観て、すっかり考え込んでしまいました。 映画「優しい嘘」#922   「わたしたち」の方は、はっきりとスクールカーストが描かれています。勉強ができて、かわいくて、ハキハキしていて、家が裕福。そんなカースト上位のグループから嫌われてしまうと、居場所をなくしてしまうんです。 標的は次から次へと変わるし、グループに入れてもらえたら、他の人を排除するために攻撃に加わるしかない。 子どもの社会って、残酷やな……。 (画像は映画.comより) 映画の企画には、名匠イ・チャンドン監督が参加されていて、シナリオへのアドバイスもあったそうです。 『わたしたち』ユン・ガウン監督インタビュー   出演している少女たちは、すべてオーディションで