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映画「ブラック・ウィドウ」#746

かつて吉田沙保里さんは「霊長類最強 女子 」と呼ばれていましたが、現在「霊長類最強 兄妹 」といえば、間違いなく阿部一二三さんと詩さんでしょう。 兄妹で同日に金メダルを獲得したのは、日本柔道史で初の快挙なのだそうです。 柔道、阿部兄妹が金メダル 兄妹Vは日本初   でも、「霊長類最強 姉妹 」となれば、ナターシャ&エレーナ姉妹だと思う。スカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドウのラスト演技となった映画「ブラック・ウィドウ」は、美しくも哀しい、憎しみと慈しみのこもったストーリーでした。 ☆☆☆☆☆ 映画「ブラック・ウィドウ」 https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 逃亡生活を送るブラック・ウィドウのもとに、“妹”エレーナからのメッセージが届く。姉妹は、自分たちを暗殺者に育てたスパイ組織「レッドルーム」の秘密を知ったことで命を狙われることに。ふたりはかつて家族として暮らした“偽りの両親”を尋ねることにするが……。 2010年に公開された「アイアンマン2」で登場し、2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」まで、孤高の暗殺者ブラック・ウィドウを演じたスカーレット・ヨハンソン。 シリーズが23本もあるので混乱しますが、今回公開された「ブラック・ウィドウ」は、2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の後の世界です。 アベンジャーズシリーズを整理すると、こんな感じ。 1:「アイアンマン」2008年 2:「インクレディブル・ハルク」2008年 3:「アイアンマン2」2010年 4:「マイティ・ソー」2011年 5:「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」2011年 6:「アベンジャーズ」2012年 7:「アイアンマン3」2013年 8:「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」2013年 9:「キャプテンアメリカ/ウィンター・ソルジャー」2014年 10:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」2014年 11:「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」2015年 12:「アントマン」2015年 13:「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」2016年 14:「ドクター・ストレンジ」2016年 15:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」2017年 16

映画「SEOBOK ソボク」#739

今度のコン・ユが守るのは、人類初のクローン人間! 余命わずかな元情報局員と、永遠の命をもつクローンの青年による逃避行。ド派手なカーチェイスに、作り込まれた実験室。 素材はハイテクなんだけれど、いつもの韓流メロドラマ感あふれる展開が待っているのですが。“永遠の命”を持つことは、はたして幸せなことなのかと、メーテルみたいなことを考えてしまいました。 コン・ユとパク・ボゴム主演の映画「SEOBOK ソボク」は、命を巡る哲学的な物語です。 ☆☆☆☆☆ 映画「SEOBOK ソボク」 http://seobok.jp/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 余命宣告を受けた元情報局員の男ギホンは、人類初のクローン、ソボクの護衛を命じられる。任務早々、何者かの襲撃を受け、逃げ惑うふたり。衝突を繰り返しながら、徐々に心を通わせていくが……。 「ソボク」は漢字で書くと「徐福」となります。史上初の中国統一を果たしたのが、秦の始皇帝。彼に仕えた学者の名前です。始皇帝は、あらゆる権力と富を手にしたものの、死だけは避けては通れません。そこで徐福は不老不死の霊薬を探して東方に船出し、そのまま戻らなかったのだそう。 徐福は日本に渡来していたそうで、佐賀県には徐福を祀る「金立神社」という神社もありました。 金立神社上宮 観光情報   秦の始皇帝が車椅子を使っていた、という事実があれば、映画のストーリー的におもしろいなーと思ったのですが、そんなことはなかったようで、残念。 現代の科学をもって誕生した「ソボク」は、不老不死の能力を持つことに。でも中身は10歳の少年で、パク・ボゴムが純粋さと残酷さを併せ持つクローンを演じています。 ビオトープのような場所で純粋培養されていたソボク。 (画像は映画.comより) 謎の襲撃者から逃げるため、より目立たない格好をと、ギホンに服を買ってもらいます。でも、なんでそれを選ぶ!?というセンス!! (画像は映画.comより) 初めて外に出て、普通の人間と接して、インスタントラーメンを食べて。ソボクが求めていたのは、人のぬくもりだったのではと思わせるチョイスです。「僕には行くところがない」とつぶやく姿は、とても愛らしくて、思わず抱きしめたくなりました。 そんなソボクを“守る”役割を担うギホンは、常に全力投球のコン・ユが演じています。 (画像は映画.comより) 「なんで僕を守るんです

映画「ミッドナイト・ランナー」#720

古今東西、若者って、おバカで、熱くて、無邪気で、無鉄砲なもの。 そんな若者を、押さえ込むのか、上手におだてて伸ばしていくのかで、組織は変わっていくのかもしれません。 キム・ジュファン監督5本目の映画となる「ミッドナイト・ランナー」は、警察大学の学生ふたりが夜の街をひたすら走っている映画です。 なぜ? 事件を目撃したのに、警察が動いてくれないから! 来る未来の不条理を感じつつも、被害者を救いたいという正義感で突っ走るふたり。コミカルとシリアスがほどよく入り交じったストーリーです。 ☆☆☆☆☆ 映画「ミッドナイト・ランナー」 https://amzn.to/3qGbo5X ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 警察大学に入学した肉体派のギジュンと頭脳派のヒヨル。試験で助け合い、親友となったふたりは、外出先で偶然、拉致現場を目撃する。学校で学んだとおり警察に通報するも、相手にされず。時間だけが過ぎていくことに焦り、ついに自ら捜査を始めるが……。 肉体派のギジュンをパク・ソジュンが、頭脳派のヒヨルをカン・ハヌルが演じています。 キム・ジュファン監督×パク・ソジュンのコンビでつくったもう一本の映画が「ディヴァイン・フューリー 使者」。こちらは名優アン・ソンギと力を合わせて悪魔と闘う物語です。 格闘技のチャンピオンがエクソシストに!? 異色のバディ誕生 映画「ディヴァイン・フューリー/使者」 #400   どちらの映画も、若者とベテランの対立と協力がみどころのひとつなのですが、「ミッドナイト・ランナー」では、若者をたしなめる役どころだったヤン教授役のソン・ドンイルが、めちゃくちゃいい味を出しています。 「夜の街に繰り出して、女の子をナンパして青春したいです!」という秘密の思いを受け取り、送り出す時の笑顔。 事件性を認識しながらも、煩雑な手続きが必要なことを伝える渋い顔。 そして、問題行動を起こしたギジュンとヒヨルを退学にせよ、と迫るエライさんたちに立ち向かう時の毅然とした表情。 正義感が空回りしてアタフタ・ドタバタしている主役ふたりの演技を引き立てる、どっしり感をみせています。 (画像はBizEnterより) 劇中、ギジュンとヒヨルの部屋にはTWICEのポスターが飾ってあり、お忍びで映画を観たTWICEのジヒョとジョンヨンが大喜びしたのだとか。 そんなコミカルでほのぼのした部分シーンがある

映画「楽園の夜」#650

韓国の南端に浮かぶ済州島は、「韓国のハワイ」とも呼ばれるビーチリゾートで、ハネムーンの人気旅行先でもあります。ドラマのロケにもよく使われていて、海は青いし、空は澄んでいるし、ロケーションは最高なんですよね。風がちょっと強いけど。 「楽園の夜」は、そんな“パラダイス”を舞台にした強烈バイオレンス劇です。 ☆☆☆☆☆ 映画「楽園の夜」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81342504 ☆☆☆☆☆ 監督は「新しき世界」「The Witch/魔女」のパク・フンジョン。この人のアクションをひと言でいうと「容赦ない」です。 北野武監督の「ソナチネ」に捧げられたオマージュというか、ほぼそのもの。家族を殺されたヤクザの組員が、逃亡先の“パラダイス”で追い詰められていく、という展開です。 ただ、そこに韓国式ノワールの手法を乗っけるから、ホントに「容赦ない」。口下手でぶっきらぼうなヤクザを演じたオム・テグの低音しゃがれ声がめちゃくちゃいいです。 (画像はKMDbより) 驚いたのは、済州島で出会う女性を演じたチョン・ヨビンでした。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」 でみせている傾いた演技とは違い、孤独と絶望と復讐心をたぎらせているんです。クールビューティー系なので、こういう演技の方が絶対合うと思います。 追われる男と、復讐を期す女。ふたりは恋人になるわけでもなく、同志というほどでもない。微妙な距離感を保っているところがよかったのですけれど。ひとつ、とても気になったことがありました。 このつかみ方は違う!!! (画像はKMDbより) 映画全体にずっしり重いのですが、実は韓国映画らしいユーモアも挟み込まれていました。 ふたつの組織の仲裁に入ったパク課長に、マ理事が「サンスが何言ってんだか」という場面があります(字幕は「課長らしくないな」)。 これはパク課長役のイ・ムンシクが出演した映画「公共の敵」での役名なのだそう。マ理事役のチャ・スンウォンによるギャグらしいのですが、韓国映画ってよくこういうのがあるので、字幕の制作が大変だろうなー。 絶好のロケーションを舞台にした“パラダイス”のはずなのに、観光地は登場せず、済州島らしいものといえば「焼酎ハンラサン」と「オルレ焼酎」くらい。スカッと晴れた空もなければ、海もあまり出てきません。 それでも。 追い詰め

ドラマ「シーシュポス: The Myth」#648

かつては韓国ドラマの定番だった「タイムスリップ」ですが、最近はシリアスなドラマの素材にもなってきました。 2月17日から放送を開始したJTBC水木ドラマ「シーシュポス:The Myth」もそのひとつ。 “密入国者”と呼ばれる謎の存在がいることを知った天才エンジニア・テスルと、彼を救うために未来からやって来たソヘの闘いを描いた物語です。 ☆☆☆☆☆ 「シーシュポス: The Myth」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81397558 ☆☆☆☆☆ 未来からやって来た女性にいきなり「伏せろ!!」と命令され、銃撃され、引きずり回されるテスル。訳が分からないまま逃げ回るうちに、亡くなった兄の秘密も知ることになります。 テスルと、テスルの右腕であるエディ・キムの関係は、電流戦争のテスラとエジソンになぞらえてあり、ちょうど日本でも公開された映画「テスラ エジソンが恐れた天才」も観たくなってしまいました。 テスル役のチョ・スンウは演技派として知られる俳優で、彼の主演というだけで「間違いなしやん!」と見始めて、そして、どんどんハマることに。2021年春期のドラマの中では飛び抜けておもしろかった作品です。 ソヘを演じるのはパク・シネ。映画「ザ・コール」や 「#生きている」 で見せた図太さにプラスして、このドラマではアクションにも挑戦しています。 タイトルの「シーシュポス」とは、ギリシア神話の登場人物のことで、神々を欺いた罰として巨大な岩を山頂まで上げる苦行をさせられました。もうちょっとで山頂……というところで、岩は転がり落ちる。これを永遠に繰り返すことから、「徒労」を意味するのだそうです。 生きること自体が「徒労」なのではと思ってしまうけれど、いまの時代に生まれ落ちた以上はなんらかの意味があるはず、と思いたい。未来を知ってしまったテスルにも、過去を体験したソヘにも、きっと。

初の海外旅行がハイジャック! 映画「ノンストップ」 #590

韓国にも「マドンナ」と呼ばれる歌姫がいます。 1993年に歌手としてデビューし、90年代後半に「セクシークイーン」として君臨したオム・ジョンファです。ファッションリーダーとしても注目され、「美容整形に失敗しちゃった~」なんてことも開けっぴろげに話す、かっこいいアネゴなイメージも。1998年に発表した4集「Invitation」のおかっぱヘアは一大ブームになりました。 ドラマや映画にも出演し、女優としても活動しています。中でもファン・ジョンミンと夫婦役を演じた「ダンシング・クィーン」は、コメディの才能を開花させた作品といえるかも。 でも、この時はまだ、「ポップスターのオム・ジョンファ」という印象が強かったと思います。映画の役柄も、そんなキャラクターを活かしたものでしたし。 それが、この2月に公開された「ノンストップ」では、コメディエンヌとして一皮むけた姿を見せてくれました。飛行機の乗員・乗客を巻き込んだ、ドタバタコメディです。 ☆☆☆☆☆ 映画「ノンストップ」  https://amzn.to/3vgJyOB ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 揚げパン屋を営むミヨンは、パソコン修理工の夫ソクファンと娘と家族3人、つつましくも幸せな生活を送っていた。ある日、ハワイ旅行に当選した一家は人生初の海外旅行に旅立つが、搭乗した旅客機には北朝鮮のテロリストが乗り合わせていた。旅客機はテロリストにハイジャックされて危機に陥るが……。 市場の“おばちゃん”として、たくましくも、愛らしくもあるミヨンを演じるオム・ジョンファ。夫のソクファンを演じるパク・ソンウンが身長187cmとめちゃくちゃデカイ俳優なので、ふたり並ぶととてもかわいらしく見えます。 (画像はKMDbより) ミヨンにも、ソクファンにも、秘めた過去があり、それがハイジャックという危機的状況を切り抜ける切り札になります。 というと、シュワちゃんの「トゥルーライズ」を思い浮かべてしまうのですが、狭い飛行機の中でのアクションや、飛行機から飛び降りるシーンなどなど、いろんな映画のいいとこ取りをしたような感じはありました。いい意味で。 ちなみにこの映画は、韓国初の「ハイジャックもの」なのだそう。美術スタッフは、約2週間にわたってパズルのような部品を組み合わせて飛行機のセットを完成させたそうで、チェックに来たボーイング社の担当者も褒めてくれたら

韓国初のSF大作はやっぱりあの味 映画「スペース・スウィーパーズ」 #583

韓国初の宇宙SF映画として注目されていた「スペース・スウィーパーズ」ですが、2度の公開延期の結果、2021年2月5日にNetflixで配信されることになりました。全世界に同時公開され、人気映画ワールド1位を記録しています。 感想をひと言でいうと、成城石井と紀伊国屋で高級食材を買ってきて「高級レストランのハンバーグを作るぞー」と思ってたのに、いつもの「お家のハンバーグ」だったような感じでした。どんなや。 ☆☆☆☆☆ 映画「スペース・スウィーパーズ」 https://www.netflix.com/title/81094067 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 2092年、砂漠化や土壌の酸素化が進んだ地球は、人間がほとんど住めなくなっていた。宇宙開発企業UTSは宇宙空間に新しい居住地を建設するが、優秀な遺伝子を持つ一部の人間だけを選別することに。宇宙ゴミを集める賞金稼ぎの「勝利号」メンバーは、ある日、行方不明の子ども型ロボット爆弾「ドロシー」を発見。金目当てに取り引きをしようとするが……。 宇宙空間、賞金稼ぎ、宇宙船での戦闘ときたらもう、「スター・ウォーズ」ですよね。 (画像は映画.comより) その「スター・ウォーズ」でルークを演じたマーク・ハミルは、自身の役どころについて「オズの魔法使いのドロシーだと思った」と語っています。 「スター・ウォーズの主人公はハン・ソロだと思ってた」ルーク役マーク・ハミル、40年越しの告白 | THE RIVER   で、この韓国初の宇宙SF映画「スペース・スウィーパーズ」はですね。 「スター・ウォーズ」×「オズの魔法使い」×韓国映画 という、最強の組み合わせでできているといえます。 まず、子ども型ロボット爆弾の名前が「ドロシー」ですもん。めちゃくちゃ愛くるしいんですが、水素爆弾規模のパワーを持つとされています。 (画像はKMDbより) 賞金稼ぎのメンバーも、心臓を手に入れたいブリキの木こりや、勇気が欲しいライオンたちになぞらえることができます。そして、やっかいなものを見つけてしまって、頼まれるままに“届ける”ことになってしまう展開は、「スター・ウォーズ」のエピソード4そのもの(最初に公開されたやつね)。 おまけに 「神と共に」シリーズ や 「新 感染半島 ファイナル・ステージ」 などで高い技術力をみせたデクスター・スタジオがVFXを担当。今回も

最強アサシン少女の誕生を描くバイオレンスアクション 映画「The Witch 魔女」 #493

東京の新宿と、大阪の心斎橋にある映画館「シネマート」では、劇場発信型映画祭「のむらコレクション」が定期的に開催されています。番組編成担当・野村さんがセレクトした映画ということで、タイトルはこれ。通称「のむコレ」です。 ドラマ「梨泰院クラス」を観た時、この子、だれだっけ~?と思ったのが、イスを演じたキム・ダミでした。2年前の「のむコレ」で観た映画「The Witch 魔女」の主演の女性か!!!と気づいたのは、しばらく経ってから。それくらい、全然印象が違いました。「のむコレ」は「これから」の俳優を見つけるのにもぴったりかもしれません。 ☆☆☆☆☆ 映画「The Witch 魔女」 https://amzn.to/3z37JTG ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 特殊な施設で育てられ、8歳の時に逃げ出したジャユン。記憶を失った彼女は、助けてくれた酪農家の娘として暮らすことに。10数年後、頭に異変を感じるようになったジャユンは、手術費用と経済状況の厳しい養父母のため、賞金目当てでオーディションを受けることを決意。しかしテレビ番組であるマジックを披露したことから、謎の男たちに追われる身となってしまう。 最強アサシン少女の戦いを描き、韓国で大ヒットを記録したバイオレンスアクション映画です。 「LUCY/ルーシー」や「ニキータ」にも引けを取らないほどの激しいアクションをこなしたのは、キム・ダミ。「梨泰院クラス」では一途な女性を演じていましたが、こちらでは普通の女子高生役。だけど、まったく表情を変えずにバスバスと敵を打ち倒していくんです。スクリーンデビュー2作目で主演、そして大ヒットと、ついてる役者ですね。 (画像はKMDbより) パク・フンジョン監督は、「映画を漫画のように演出すること」が目標なのだそう。ファン・ジョンミン主演の「新しき世界」で監督デビューする前は、リュ・スンワン監督のもとで「生き残るための3つの取引」の脚本を書いたりしていました。 映画「新しき世界」#293   非エリートの悲哀を描いたサスペンス 映画「生き残るための3つの取引」 #269   人間の内面にある悪を、拳で打開していくところが作品の特徴といえるかもしれません。でもご本人のインタビューによると、「平和主義者なので、血を見るのは好きじゃない」とのこと。ほんまかいな。 「The Witch 魔女」は3部作とし

格闘技のチャンピオンがエクソシストに!? 異色のバディ誕生 映画「ディヴァイン・フューリー/使者」 #400

「愛の反対は憎しみではない。無関心だ」 マザー・テレサはそう言って、 無関心であること、傍観者であることを批判しました。 「でも、神様は僕に関心持ってくれてるのかよぉぉぉ! 母さんのことも、父さんのことも、助けてって祈ったのに聞いてくれなかったじゃないかよぉぉぉぉ!」 そんな心の傷を負った男は、ひとり孤独な戦いを続ける男に対して“傍観者”でいられるのか? 映画「ディヴァイン・フューリー/使者」は、格闘技のチャンピオンがエクソシスト(悪魔祓い)と出会うという異色のバディものです。 ☆☆☆☆☆ 映画「ディヴァイン・フューリー/使者」 https://amzn.to/3qGpAft 公式サイト http://klockworx-asia.com/divinefury/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 子どもの頃に事故で父を亡くし、神への信仰を失ったヨンフ。総合格闘技の世界チャンピオンになった彼は、ある日、右手に見覚えのない傷ができていることに気づく。傷について調べるうち、バチカンから派遣されたエクソシストのアン神父と出会ったヨンフは、傷が聖痕だと知らされ……。 ムキムキの肉体美を誇りつつ、内面では神を恨み、悪魔に攻め込まれて消耗するチャンピオン・ヨンフを演じているのはパク・ソジュン。インタビューでは「もう少し身体を作り込めばよかった」と語っていましたが、いやいや、どうして、もう十分。でも、ちょっと細身なのかな。 (画像はKMDbより) 今年は「梨泰院クラス」の大ヒットで、日本でも顔を知られるようになりましたね。特にあの髪型。印象に残ります。 新時代の働き方とリーダー像を満喫 ドラマ「梨泰院クラス」 #339   パク・ソジュンはドラマで人気となり、映画にも進出した俳優です。実は「パラサイト 半地下の家族」にも出演していたんですが、気づきましたか? (画像はKMDbより) チェ・ウシク演じる半地下家族の長男に、家庭教師をしないかと持ちかけた友人です。水石を持ってきた先輩! 思えば、あの家族の運命を変えた人物ともいえますね。 そのチェ・ウシクも、「ディヴァイン・フューリー」に出演していますが、今回はちょい役。とはいえ、とても重要な役どころなのですが。 主演とちょい役が交代してるやん!!! (画像はKMDbより) チェ・ウシクを助手に、悪魔祓いのアン神父を演じているのが、超ベテラン俳

現実と仮想世界が溶け合うミステリー ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」#380

韓国ドラマを表す言葉のひとつに「マクチャンドラマ」があります。 「マクチャン」とは「どん詰まり」という意味なのですが、ジェットコースターのようにストーリーが急展開していく一方で、非現実的やろ!とツッコまれてしまうようなドラマを指して「マクチャンドラマ」といいます。 展開にムリはありつつ、ハマってしまう要素を持ったドラマという感じですね。 ストーリーがジェットコースターなら、撮影だって綱渡り。その日の夜に放送する予定のドラマを、昼間に撮影していることもあるそう。生放送同然の撮影システムは、何度も放送事故を起こすくらいです。 視聴者の反応を見て、構成を変えたり、キャラクターの厚みを変えたりすることもある。よくいえば視聴者第一主義ということかもしれません。 ただ、ラストに近くなるとやたらと回想シーンが増えるドラマもあって。 (撮影が間に合わなかった……?) それとも、 (放送の尺に足りなくなった……?) と感じてしまうこともしばしば。 ヒョンビン主演のドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」は、全16話ですが、10話までは抜群におもしろいんですよね。初回のドキドキ感に引かれてドンドン観てしまうのですが、文字通りドン詰まって失速してしまう「マクチャンドラマ」でもあったかなと感じました。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」 Netflix配信 https://www.netflix.com/title/81004280 ☆☆☆☆☆ ヒョンビン演じる投資会社の社長ユ・ジヌが、画期的なARゲームと出会うところから話は始まります。コンタクトレンズに映し出されるARの世界は現実ともリンク。武器とアイテムを手に入れ、スペインの騎士と戦うのです。 これ、ゲーム好きの人はめちゃくちゃハマると思います。 しかもゲーム画面と現実の映像がシームレスにつながっているので、「いまヒョンビンはどちらにいるんだっけ?」と思うことも。現実と仮想世界が完全に溶け合っているんです。 話は変わりますが、昨日、「東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト2020」という公開講義が配信されていて、アーティストの日比野克彦さんがこんな話をされていました。 (対談相手である青年失業家の)田中泰延さんは、ガリ版印刷からコピー機が誕生して、パソコンのソフトを経験している世代。一人の人間がこれだけのメディアの変化を経

血と暴力のノワール劇 映画「チェイサー」 #334

ひとりの監督と、ひとりの俳優との出会いが、運命を変える。 そんな映画に出会うと、震えちゃいます。 映画「チェイサー」は、ナ・ホンジン監督にとっては長編デビュー作、キム・ユンソクにとっては初の主演作です。韓国のアカデミー賞と呼ばれる大鐘賞で最優秀作品賞などを受賞。キム・ユンソクも主演男優賞に輝き、ふたりともに、その後の映画人生が大きく変わる、「運命の映画」となりました。 ☆☆☆☆☆ 映画「チェイサー」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 元刑事のジュンホが経営するデリヘル店から、女たちが相次いで失踪を遂げる。やがて店の客だった青年ヨンミンが容疑者として逮捕されるが、証拠不十分で釈放されてしまい……。 「ユ・ヨンチョル連続殺人事件」と呼ばれている事件を元に映画化。韓国映画らしい、血と暴力のノワール劇です。 ナ・ホンジン監督は漫画を読むのも描くのも好きらしく、映画をつくるようになったきっかけは「頭の中に漫画的なイメージが浮かんで、それを形にした」と語っています。 そのせいか、映画制作において、コンテ作業と編集に異様な執着を見せることで知られています。一説には、韓国の商業監督の中で、編集とリズム感に対する感覚が最も優れた監督の中のひとりと言われているそうです。 元刑事のジュンホを演じているのが、キム・ユンソク。風邪気味だから休みたいと言っている女性をムリに働かせるあたり、前半は血も涙もない冷酷な経営者に見えるんですよね。でも、元刑事の勘から様子がおかしことに気づいてからは、女性たちを取り戻すため、執拗に犯人を追います。 容疑者となったヨンミンを演じるのは、ハ・ジョンウ。これまでの「好青年」感を活かした演技から一転、後半では限りなく残虐なサイコパスの顔に変貌します。コワイ。 (画像はKMDbより) 刑事を辞めてデリヘルの会社をやっている時点で、キム・ユンソク演じるジュンホは、かなりの転落人生を歩んでいる人物。その、モサッとした、人生に疲れている感じがぴったりなんですよね。 一方で、犯人を追う目つきの鋭さには震え上がります。 (画像はKMDbより) 人生終わったかのようなくたびれた中年。いかにも誠実そうでおとなしそうな好青年。キム・ユンソクとハ・ジョンウというキャスティングを最大限に活かした演出だなと感じました。 これまでそれほど大きな役を演