キム・ミニは、ホン・サンス監督にとってミューズと讃えられています。多作な監督ですが、その作品群は、「キム・ミニ以前/キム・ミニ以後」に分けられるとのこと。 “よく知りもしないくせに”芸術的なことなんて、なんとも言えないですが、“分かりやすくなった”のは「よく知りもしないくせに」から、と言われています。 ☆☆☆☆☆ 映画「よく知りもしないくせに」 https://amzn.to/3xhqKkd ☆☆☆☆☆ <あらすじ> アート系映画監督のギョンナムは、審査員として呼ばれた映画祭で、かつての親友サンヨンと遭遇する。サンヨンの家で彼の妻と共に飲み明かすが、翌日、なぜかサンヨンから絶交を言い渡されてしまう。数日後、済州島を訪れたギョンナムは、先輩チョンスの妻となった元恋人スンと再会し、関係を持つが……。 「豚が井戸に落ちた日」でデビューした監督にとっては、9作品目にあたる映画です。この後、8作品後の「正しい日 間違えた日」でキム・ミニと初タッグを組むことになります。 「よく知りもしないくせに」は「キム・ミニ以前」の映画で、だらしない、こじらせ映画監督が、女たちに小突き回されるスタイル。小説家のキム・ヨンスがカメオ出演しているのですが、友人からは、 「どんな目に遭うのか分かってるのに、なんで?」 と言われてしまったのだそう。それくらい、ホン・サンス作品における男たちの処遇には、定評があるんですね。 キム・テウ、コン・ヒョンジン、ハ・ジョンウ、チョン・ユミら、めっちゃ豪華な俳優たちも、みんな「ノーギャラ」。それでも出たいと思わせる監督なのでしょう。 (画像は映画.comより) この映画が、「逃げた女」のラストシーンで、ガミが観ていた映画です。何度も何度も打ち寄せる波が、セリフを重複して繰り返すホン・サンス映画そのもののようでした。 映画「逃げた女」#717 「二度と自分の前に現れないでくれ」という親友のメッセージを受け取って、アタフタ、オロオロ。密かに下心を抱いていたコーディネーターの女性に責められて、アタフタ、オロオロ。訳も分からず映画祭から逃げ出すギョンナム。元カノと情事にふけっていたところに夫に踏み込まれ、またもや逃げ出すギョンナム。 そしていま。 女に逃げられた男は、アタフタ、オロオロしているのではないかしら……なんて考えてしまいました。 ギョンナムという男は、自分