韓国映画は、自分たちの社会や歴史の暗部をドラマ化するのが、本当にうまい。 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」や、パク・ジンピョ監督の「あいつの声」は、未解決事件を、チャン・ジュナン監督の 「1987、ある闘いの真実」 や、カン・ウソク監督の「シルミド」などは、葬り去られそうになった歴史を掘り起こしています。 イ・ギュマン監督の「カエル少年失踪殺人事件」も、そのひとつ。 1991年3月に大邱市で発生した小学生5人の行方不明事件を映画化。犯人不明というミステリーに、“オトナの思惑”を加えて、緊迫のサスペンスドラマに仕立てています。 ☆☆☆☆☆ 映画「カエル少年失踪殺人事件」 DVD ☆☆☆☆☆ 実際に起きた事件をベースにしたストーリーで、映画を観るだけで事件の推移が把握できます。それが、なんとも胸が痛い展開。 遺骨が見つかるまでの10年の間、家族たちがどれほど苦しんできたのか。杜撰な捜索、特ダネ狙いのテレビプロデューサー、犯人像を分析して家族に疑いの目を向ける教授ら、どれほどの人たちが家族を弄んできたのか。 それでも、映画の封切りに合わせて家族たちは、「全部許すから、出てきて欲しい」と犯人に呼びかけたのだそう。 当然、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」と比較されることも多かったようですが、サスペンス度は「カエル少年」の方が強かったなーと思います。 ただ、事件についてまったく知らなかったし、「カエル少年失踪殺人事件」というタイトルだけを見て、わたしは勘違いしておりました。 少年探偵団みたいなコメディだと思っていたのに!!! バッチバチの緊迫感漂うサスペンスで、まばたきするのも忘れてしまってたよ。 特に、赤いマントの少年の母を演じたキム・ヨジン。 (画像はKMDbより) 最近ではドラマ「ヴィンチェンツォ」の悪役ぶりが目立っていましたが、こういうセリフのない演技の壮絶さは、ピカイチだと思います。エアロビ踊ってるだけじゃないのですよ。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」#667 「カエルを捕まえに行く」という言葉を残して、姿を消した少年たち。事件は2006年3月26日に時効が成立し、迷宮入りとなりました。 赤いマントを翻して走っていた、うれしそうな顔に無念ばかりが残ってしまう。 (画像はKMDbより) 痛烈な批判と皮肉が込められたストーリー。これを劇映画として成立させてしまう