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『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』#803

優秀な社員を観察してみたら、「効率よく成果を出す」共通点があった……! 越川慎司さんの『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』は、そうだろうなと思ってたけど、ホントにそうなんだ!という納得ポイントが満載でした。 ☆☆☆☆☆ 『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ まず、調査対象のN数がすごい。クライアント企業25社の、 ・トップ5%社員:9000名 ・一般社員:9000名 合計1万8千人の会議やメール、資料を、定点カメラ・ICレコーダー・GPSを使って、AIで分析。 トップ5%社員と一般社員との差をあぶり出したという、ちょっとオソロシイ本なのです。 たとえば、資料編。 一般社員の方が、 ・ページ数が32%多い ・作成時間が20%長い と、せつない結果が出ています。 変なこだわりを持って作り込もうとしないことが大事なんでしょうね。 実際、「作業充実感のある仕事はなんですか?」という問いに対して、最多回答は「資料作成」だったそう。特にパワーポイントとエクセルには注意が必要なようです。 つい、夢中になってしまうから……。 この「資料作成」に対して、完成した時に満たされた気分になる一般社員は89%もいます。でも、トップ5%社員の73%は「No」と答えているんです。 作成した資料によって、“成果”が残せた時に、満たされた気分になるんだそう。 おお、意識の違いよ……。 フツーの、並盛りサイズの会社員にとっては、仕事のやり方を振り返るきっかけにできる本だと思います。そうだろうなと思っていたこと、こうした方がいいと聞いていたこと、ホントにそうだったと数字が教えてくれます。 目指すべきは、 働き方改革 <<< 儲け方改革(企業)・稼ぎ方改革(個人) とのこと。 「幸せを感じるのはいつ?」という質問への回答が、意識変革の必要性を示していました。 ・一般社員:土曜日の朝 → 解放感 ・トップ5%社員:金曜日の夜 → 達成感 今日は休日だけど、さて、わたしがいま感じているのはどっちだろう。明日の金曜日は達成感を感じられるかしら。

『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』#795

小説を読んでいて、「すげーー!!!」と思うものの、じゃあいったい、何がすごいのかを説明できないことってありませんか? 瀕死状態のメガネチェーン店「オンデーズ」を再生させた物語として、絶賛されていた田中修治さんの『破天荒フェニックス』なんて、まさにそれでした。 ☆☆☆☆☆ 『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』 ☆☆☆☆☆ 田中さんが買収を決めた2008年1月時点の、オンデーズの財務状況がこれ。 年間売上:20億円 負債:14億円 営業利益:▲2.4億円(毎月2,000万円の赤字) 月の返済額:8000万~1億円 店舗数:国内60店弱 直営7:FC3の割合 小説は、田中さんが正式に社長に就任し、そこから幾度となく訪れる倒産危機を乗り越え、銀行取引正常化を達成するまでの物語です。 社長就任当時の田中さんは、30歳。ミュージシャン“志望”から、デザイン会社を経営するようになり、オンデーズ再生に名乗りを上げたのですが。 口癖は、「倒れる時は前向きにだ! ハハハ」。こわいよ。 田中さんを支えるため、コンサル会社からオンデーズにCFOとして合流したのが、奥野さん。小説においては「影の主役」です。 口癖は、「資金が足りません!!!」。どんなだ。 なにしろ借金が多いので、銀行から新規の借り入れができない状態なのにもかかわらず、田中社長は、新規店舗を出すわ、雑貨チェーンを買収するわ、海外進出するわで、奥野さんは気の休まるヒマがないんです。 「1千万の資金がショートします!」 「1億円の資金がショートします!」 毎度お決まりのような奥野さんの叫びが聞こえる……というストーリーです。 で、この小説のタイトルにある「破天荒」って、どういう意味なんですかね? 「破天荒」とは、誰もなしえなかったことを初めてすることという意味です。誰もなしえなかった=オンデーズの再生って、なんでそんなにムリゲーだったんだろう。 この疑問を中心にして、会社のCFOに解説してもらう研修をおこないました。 わたしは、オンデーズの会社としての方向性が固まり、チーム力がアップしていく東日本大震災のボランティアのシーンが好きだったのですが、さすがに今回の研修ではスルー。 「債務超過に陥った場合、資金の流出を止めるには?」といった比較的簡単な質問から、小説を紐解いていくんです。 基本的には、 ① 収入を増やす

『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』#794

「ファイナンスを勉強しておいた方がいいよ」 とは、よく言われるのですが、この時、やってはいけないことがあるそうです。 「じゃあ、簿記の資格でも取ろうかな」 ってやつ。 もちろん、知らないよりは知っていた方がいいですが、簿記はどちらかというと実務に必要な知識。もっと大枠の経営戦略やビジネスプランをとらえるために必要なのが、ファイナンスなんではないかと思います。 とはいえ、会計のことだってよく分かってない……という方におすすめなのが、古屋悟司さんの『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』です。 ☆☆☆☆☆ 『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』 ☆☆☆☆☆ 脱サラしてお花屋さんをオープンした主人公。でも赤字ばかりが積み上がり、キャンペーンをやったり、倒れるほど働いたりするけど、右肩下がりの状況です。 そこにやってきたのは、スゴ腕の税理士さん! こんなストーリー仕立てで、会計の知識と、商売・経営を結びつけて把握することができます。 会計と一口にいっても、2種類に分かれるのだそう。 財務会計:決算や税金のための報告書 管理会計:儲けるための羅針盤 と考えればいいらしいです。 本で取り上げられているのは、管理会計の「限界利益」という考え方です。 利益を生み出す商品構造、値付けといった“当たり前”のことが、より実務と紐付いた形で解説されるので、経営戦略を立てられるようになりたい、いずれは独立したいという方の最初の一歩にピッタリだと思います。 「売上が足りないのが、赤字の原因ではない」 って、経営を知らないわたしには「ええっ、そうなの!?」という話でした。だって、売上が上がればハッピーなんじゃないかと思っていたのに。実は、花屋さんの脱サラ社長も同じだったようです……。 まずはこの勘違いを正していくのですが、会計の知識がある人には、「ここから!?」というレベルかもしれません。 が、在庫と売上の関係や、値上げ・値下げがどのように売上に影響するのかといったことを、ビジネス視点で考えることができるので、経理担当者にもおすすめです。 著者の古屋悟司さんは、楽天で「ゲキハナ」というお花屋さんを運営されています。倒産の危機を乗り越え、V字回復に成功したというその歴史に、学ぶこと多しです。 【楽天市場】一流品を卸値販売致します!激安から激レアまで!:ゲキハナ 感激安心のお花屋

『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』#793

やった方がいいよね、できた方がいいよね、と思いつつ、ずっと積み残している宿題があります。 それは、「ファイナンス」です。 だって数字ばっかり書いてるんだもん!と、算数苦手組は思ってしまうのですけれど。 ダイヤモンド編集部が実施した「社員には会計・ファイナンスの知識をどれくらい理解していてほしいですか?」というアンケートによると……。 一般の従業員に対しては、 「売上高と利益」の理解を求める:44%の企業 「財務3表」の理解を求める:29%の企業 だそうです。もちろん、役職が上がると、「ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)など財務3表上の数値を組み合わせた指標」なんていう項目の数値が上がります。 「ちゃんと知識つけてね」と考えている企業の方が多いんですね。そりゃそうか。 データが裏付け!課長&部長になりたきゃ決算書の理解は必須! | 週刊ダイヤモンドの見どころ | 週刊ダイヤモンド   わたしは高校の時に日商簿記検定の2級をとりました(1級は工業簿記が入るため、受験できなかった)。ただ、この段階では、「勘定科目が分かる」くらい。「会計が分かる」こと、さらには「ファイナンスが分かる」といえるのは、別次元の話です。まずは決算書の読み方から、と思っても。 数字ばっかり書いてるんだもん!!! 会社の研修で使うため、いろいろ探していた中でおもしろかったのが、公認会計士である大手町のランダムウォーカーさんの『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』でした。 ☆☆☆☆☆ 『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』 ☆☆☆☆☆ 超シンプルにつくられたPLやBSの表を見ながら、クイズに答えていくと、あーら不思議。財務諸表の見方のポイントや、ビジネスの構造が理解できるような形式になっています。 (画像はAmazonより) いまサラッと「PLやBS」なんて書きましたが、こういう初めて出会うであろうワードにもちゃんと解説がついています。 ちなみに、 PL(損益計算書):企業の経営成績を示すためのもの BS(貸借対照表):財政状態を把握するためのもの です。 わたしは社内研修の企画を担当しているため、どうやったら「ファイナンス」の講義がおもしろくなるんだろうと、ずーーーーっと考えていました。 数字が苦手な人に

『エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”』#772

孫正義著『お金持ちに見られないための10の鉄則 ―なぜしょぼい感じなのか?』 こんなタイトルの本があったら、思わず買ってしまう……かもしれない。いや、わざわざ“しょぼく”見せるほど、お金持ちでもないしなーと思ってしまうかな。 でも、この本は本当に刊行されるものではありません。編集者の石黒謙吾さんが、“お遊び”がてら考えた「エア新書」のタイトルなんです。 ☆☆☆☆☆ 『エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”』 https://amzn.to/3sEqU3C ☆☆☆☆☆ 「新書」というサイズの本の出版は、1938年に岩波書店から始まったのだそうです。古典の岩波文庫に対して、書き下ろしの教養系をテーマとしていました。 その後、1961年に中公新書が、1964年に講談社現代新書が創刊され、「新書御三家」と呼ばれるように。 1998年に「文春新書」、1999年に「集英社新書」、そして2003年に「新潮新書」などが創刊され、内容もアカデミックなものからライトなものへと変化してきたそう。 “ライト”といえば、まだ聞こえはいいけど、正直に言って(うーん……)となるものもある気がしますがね。 バブル崩壊…出版不況のなかで探った「現代新書」らしい切り口とは?(現代新書編集部)   わたしは新書が好きで、よく手に取る方だと思います。新聞の調査報道のような読み応えのあるものもありますし、興味のある分野の入り口にもいい。 で、思うこと。 新書のタイトルって、とても特徴的……。 「一瞬、なに言ってるか分からない」とか、「意外なものを組み合わせている」とか。 石黒さんは、タイトルの方向性について、エポックメイキングとなった本が、公認会計士である山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』だと指摘されています。 ☆☆☆☆☆ 山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』 https://amzn.to/3gpuBoR ☆☆☆☆☆ この本がヒットした後、「○○はなぜ○○なのか?」が類型化し、「○○の品格」と「○○の壁」といったパターンも爆増。 『エア新書』は、こうした「今風の新書っぽいタイトル」をパターン化し、架空の新書タイトルを考えてみよう、という本なんです。 人物 × タイトル × サブタイトル × 帯 考えるのはこの4つ。タイトルに“爆笑脳トレ”とあるよ

『「心」が分かるとモノが売れる』#752

“憑依型”マーケターの底力を見たー! 元エステー社のマーケターで、「消臭力」のCMを制作された鹿毛康司さんの『「心」が分かるとモノが売れる』は、マーケティングに携わる方だけでなく、すべてのビジネスパーソンにおすすめです。 消費者に商品と届ける者としての、覚悟を知ることができるから。 ☆☆☆☆☆ 『「心」が分かるとモノが売れる』 https://amzn.to/37dRoyN ☆☆☆☆☆ エステーといえば、消臭力。消臭力といえば、ミゲルくんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 2011年に放送されたCMには、度肝を抜かれましたよね。 日本で最もミゲルに詳しい男、鹿毛康司(かげこうじ)に聞いてみた。   つらいなーと感じたのが、エステー社は広告予算が少ないため、ほとんどの代理店でつれなくされてきたというお話。そこで鹿毛さん自らクリエイティブディレクターとしてCMを監督し、コピーをつくり、作詞作曲をされたのだそう。 その原点にあるのは、前職で起きた不祥事と、お客さまの反応でした。 2000年6月、鹿毛さんが勤務していた雪印で食中毒事件が発生。お詫び行脚の中で、貧しい母子家庭で育ったという消費者から手紙をもらったそうです。 「母乳の出ない母は代わりに雪印の粉ミルクを与えてくれました。棚でいちばん高いものだったので、母にとっては精一杯の買い物だったと思う。雪印というブランドは、母の私への愛情そのものだったのです」 いや、もう、こんな手紙を読んじゃったら、型どおりの「お詫び」なんてできなくなってしまう……。状況が少し落ち着いてきた8月、今度は子会社で「牛肉偽装事件」が発生します。 そこで鹿毛さんは「雪印体質を変革する会」を立ち上げ、信頼回復の道を探ることに。お客さまにとっては、 会社名<<<個人 なのではないかと考え、社員の連名で謝罪広告を出すことを考えます。でも、最終段階でチェックを依頼したお客さまから言われてしまうのです。 「もう“雪印”など見たくない」 このひと言が、お客さまが問うているのは、社員個人の気持ちなんかじゃない、「企業としての人格」だと気付くきっかけになったとのこと。 現代ではあらゆるニーズを満たす製品があふれていて、ほとんど差のない製品の広告があふれています。その中で鹿毛さんが重視するのが「企業の人格」。 「企業側がエライという時代は終わったから、も

『ナラティブカンパニー: 企業を変革する「物語」の力』 #751

企業価値を高める方法として、いま注目されているのが「ナラティブ」です。 ナイキやアマゾン、パタゴニアといった、自分たちが大切にしていること=パーパスを起点に、多くの人が“当事者”として参加できる物語、それが「ナラティブ」だそう。 経済学者のロバート・シラーが『Narrative Economics』で唱えた概念を、実例と共に分かりやすく解説した本が本田哲也さんの『ナラティブカンパニー: 企業を変革する「物語」の力』です。 ☆☆☆☆☆ 『ナラティブカンパニー: 企業を変革する「物語」の力』 https://amzn.to/2WMACFf ☆☆☆☆☆ 「ナラティブ」と似た意味を持つ言葉に、「ストーリー」があります。両者の一番の違いは、「演者」かもしれません。 これまでの広告は、企業やブランドが主語となり、製品の優位性をメッセージしてきました。その一方的なあり方に、飽き飽きしちゃったのがいまではないでしょうか。 日本におけるPRの第一人者である本田さんが重要視するのは、「企業と生活者が共に紡ぐ物語」。一方的なメッセージではなく、共に作り上げていく物語があれば、消費者はそのブランドのファンになり、愛着がわき、結果として企業価値も向上するとのこと。 アウトドアブランドのパタゴニアの場合、環境団体や同業他社を動かすまでの波を起こしています。 スマホが普及し、SNSを使う人が増えたいま、ナラティブが重要になる理由は3つ。 1. 「共体験」価値の高まり → 共体験のマルチ化に対応する必要がある 2. 「社会的距離」の見極め → 時間と空間の制約を受けない、適切な間合い 3. 「自分らしさ」が問われる → その企業だからできる貢献と、ホンモノ感 なかでも、ある集団内で共有されている「価値」を見誤ると炎上する可能性が出てきます。例として挙がっているのが『100日後に死ぬワニ』です。 今後は、「人気企業」ではなく、「人気ナラティブ」に人は集まるのではないかという指摘も。 だってねー。「あっちで楽しそうなことやってる!」ってなったら、混ざりたいと考えるのが人の心ってものじゃないでしょうか。 でも。 ナラティブがあれば商品が売れるわけではないし、パーパスがあればかっこいいわけでもない。 オーセンティシティ=自分らしさがなければ、そこに熱は生まれないから。 企業のビジネスを前提にした本ですが、

『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』#711

「わかる」は「わける」と同源の言葉といわれています。 広辞苑によると…… わかる(分かる): ① きっぱりと離れる。別々になる。 ② 事の筋道がはっきりする。了解される。 ③ 明らかになる。判明する。 わける(分ける): ① まとまりに境界をくっきりとつけて、二つ以上にする。区別する。 「二つ以上のグループに仕分ける」ということは、「違いを明らかにする」ことでもあります。違いを明らかにして「わける」ことによって、「わかる=理解する」が生まれるのだといえます。 理解する意味の「わかる」を書く時、「分かる」の漢字を使う理由が、これでした。「分けて、分かる」んだなと、自分で納得できるから。 ちなみに、「解る」「判る」といった漢字を使う方もいますが、これらの漢字は漢字表にない音訓なので、新聞などでは使われない表記です。 こうした表記については『記者ハンドブック』が参考になりますよ。 ルールを決めて、“考える”に時間を振り分ける 『記者ハンドブック』 #486   で、「なんかよく分かんないわー」という時は、だいたい「わける」が足りていないのではないか。 たとえるなら、まな板の上に、ジャガイモとニンジンとタマネギとお肉とお鍋とスパイスを並べて、カレーを作ろうとしているような状態。これ、全部いっぺんにお鍋に放り込んでも、おいしいカレーにはならないんですよね。 まずは、それぞれの野菜を切らなければならない。 おまけに野菜ごとに、ちょうどいい大きさにしないといけない。 などなど、何かをしようとする時は、自分が「わかる」単位まで「わける」ことが大切。とはいえ、「わける」って、なかなかに一筋縄ではいきません。おまけに「わけた」ものを再度組み立て直して、形にしなければならないのですから。 深沢真太郎さんの『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』は、そんな「わける」の重要性をとても分かりやすく説いた本です。 ☆☆☆☆☆ 『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』 https://amzn.to/3wQVlEP ☆☆☆☆☆ 「論理思考」の講義というと、めっちゃお固い、文字が詰まった本をイメージしませんか? この本は、ちょっと違うんです。著者の深沢さんは、「ビジネス数学教育」の第一人者だそう。 え、すごい!!! 算数講座に困っているわたしの救世主!

『数字で話せ』#710

6月21日月曜日の朝、パソコンを起ち上げると、同僚からメッセージが届いていました。 「あさってのミーティングを次の日にしてほしい」 この人とのミーティングがあるのは22日の火曜日。「あさって」と呼んでいるのは、本人が日曜日に送っているからでしょうね。「次の日にして」ということは、水曜日を希望しているということだろうか。 「23日の水曜日でいいですか?」 と聞くと、 「あさってでお願いします」 との返事。この辺りでイラッとする人も多いのではないでしょうか。日付で聞いているんだから、日付で答えてくれよー!! 仕事をする上で、数字を使って伝えるのは基本スキルといえます。算数は苦手でも、これならできるはず。 「数字が苦手」という人は、女性に多い印象があるようですが、それは甘えなのかもしれません。数をこなして、型を身につければ、だんだん分かってきますよと言われたこともありました。 営業トークで、提案で、社内のミーティングで、「数字を使う」ことには多くのメリットがあると、斎藤広達さんも『数字で話せ』で語っています。 ☆☆☆☆☆ 『数字で話せ』 https://amzn.to/3gI7PJh ☆☆☆☆☆ 経営コンサルタントをされている斎藤さんは、もともと文系人間だったそう。外資系金融機関に在籍していたころは、数字にとても苦労したそうです。 そこで、数字に対する瞬発力を身につけようと考えたのだとか。スキルとして紹介されているのは、「@変換」「2ケタ×2ケタ暗算」など。 この本は、まさしく「数字取り扱い説明書」といえます。 「@変換」とは、大きな数字を「1人当たり」「1個当たり」に変換して、意味のある数字として捉え直すことです。 また、「1000×1000」でケタが1つ繰り上がるという、暗算をラクにしてくれるルール?もありました。 1000人×2000円=200万円 万×万=億 こんな感じで、数字の感覚を身につけていくのです。 「ざっくり暗算」を可能にする、逆数計算とゾロ目計算ができたらかっこいいだろうなー。これをやってみたいと後輩(社内の算数講座の講師)に言ったら、「割り算を使う計算が苦手なのに? まずは電卓で練習しましょう」と、キッパリ言われてしまった。 昨日ご紹介した芳沢光雄さんの『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』は、教育上の問題を指摘した本でしたが、すで

『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』#686

日本人は「休み下手」だといわれています。「働き方改革」とはつまり、「休み方改革」といえるのかもしれません。 身体を休ませることはもちろん、メンタルケアのためにも休むことは大切です。すべてに怠惰なわたしだけど、もっと「休み上手」になりたいと思っていました。 4月に社会人デビューした方も、そろそろ疲れがみえてきたころなのではないでしょうか。仕事用のエネルギーと、心のエネルギーの使い方を見直すなら、下園壮太さんの本『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』がおすすめです。 ☆☆☆☆☆ 『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』 https://amzn.to/2R2wvSQ ☆☆☆☆☆ 著者の下園壮太さんは、元・陸上自衛隊心理教官で心理カウンセラーという方です。自衛隊というと、強そうなイメージがありますが、その秘訣は「休み方」にもあるようです。 長期戦を戦うために必要な要素として挙げられているのが、「組織力」と「疲労のコントロール」。特に休むことの大切さは、あまり理解されていないのかもしれないなと感じます。なぜか、「がむしゃらにがんばる」ことが善と考える人が多くて……。 本によると、「ムリ」は4つの面で表われるそう。 ① 体 ② 人間関係 ③ 行動 ④ 心 ムリがどの面に表われても、本人は「ムリ」のせいだと気付きにくいもの。そして、3段階で進行していきます。 第1段階:普通の過労段階 第2段階:別人化の始まり 第3段階:別人化 組織内での人間関係の悪化は、こうした状況を示すシグナルでもあるわけです。 「ムリの防ぎ方」個人編と上司編があるので、チームを持っている方は、ぜひご一読を。また、感情の無駄遣いを止めて、「感情疲労」を避ける方法は、気持ちの浮き沈みに疲れちゃう、という方にもおすすめです。 今週は、新人たちのフォローアップ研修を実施しました。予想どおりではあったのですが、がんばり方に試行錯誤した2か月間だったようです。研修で話すことなんて、なかなか腹落ちしないもんだなとしんみり……。努力と結果がイコールとならない「仕事」という世界の洗礼にアップアップしたメンバーもいました。そして。 「ゴールデンウイーク中、何をすればいいのか分からなかった」 という声も……。 はぁ。もっと「休み上手」になりたい。

『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』#685

「1on1」ミーティングの難しさは、上司側の姿勢と、ブラックボックスになりがちなところにあると思います。ふたりきりで行われる以上、そこで詰められていても分からないからです。 宇田川元一さんの『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』には、より踏み込んだ「対話」の形である「2on2」が紹介されているのですが、これはとても演劇的な手法だなと感じました。前著『他者と働く』の実践編といえる内容です。 ☆☆☆☆☆ 『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』 https://amzn.to/2RPqhWL ☆☆☆☆☆ 企業は常に何かしらの悩みを抱えているものです。売上のこと、業界のこと、組織の中のこと。いろいろありますが、どれに対しても、「放っておくと悪くなりそうだけど、何から手を付ければいいのか分からない」状態で放置されることがあります。 宇田川さんはこうした状況を「組織の慢性疾患」と呼んでいます。「慢性疾患」なので、完治することは難しいけれど、安定した状態を保つ=寛解を目指すことはできる。そのために必要なのが「セルフケア」。小さな問題や、弱いシグナルにいち早く気付き、対応する能力を保つ組織を目指そう、という内容です。 「組織の慢性疾患」とは。 1. ゆっくりと悪化する 2. 原因があいまいで特定できない 3. 背後に潜んでいる 4. 後回しにされがちである 5. 既存の解決策では太刀打ちできない 6. 根治しない こうした状況では危機感も生まれにくくなってしまいます。そこで必要なのが、「対話」です。 <対話に必要な4つのステップ> 1. 問題を眺める 2. 自分もその問題の一部だと気づく 3. 問題のメカニズムを理解する 4. 具体的な策を考える 特に2の「自分もその問題の一部だと気づく」って、とても大事だと思います。すぐに解決策を提案できる人は、自分も問題に関わっている視点が抜けがちだから。 「対話」の方法のひとつとして紹介されているのが「2 on 2」。基本的に4人一組で行い、問題からの距離感を変えてキャスティングするのだそう。おもしろいのは問題に名前を付けて「妖怪」として扱い、その生態を探ってみるという過程です。 本では、忖度してしまって言いたいことが言えない状況に「ソンタック」という名前を付けていました。ちょっとコ

『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』#684

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」 オーストリア出身の精神科医であり心理学者のアルフレッド・アドラーの言葉です。「会社」という組織の中で、上司と部下の関係、他部署の人との関係、同僚(=ライバル)との関係などなど、「対人関係の悩み」は、誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか。 日本のITトップ企業であるヤフーでも、現状は同じ。そこで取り入れたのが、上司と部下との「1on1」ミーティング。本間浩輔さんの『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』には、トークの例も紹介されています。 ☆☆☆☆☆ 『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』 https://amzn.to/3wvKsb1 ☆☆☆☆☆ 著者の本間さんは、ヤフー株式会社のコーポレート総括本部長をされている方です。人事革命を実行し、戦略人事プロフェッショナルとしても知られています。 そんな本間さんが取り入れたことで話題になった「1on1」ミーティングは、ひところ組織の「改善薬」としてもてはやされたような記憶があります。 毎週1回、原則30分を部下とのコミュニケーションに充てる。 ただそれだけで、なぜ変われたのか。ヤフーの人材育成の基本方針は、「社員の才能と情熱を解き放つ」こと。「1on1」を実施する目的のひとつがこれで、もうひとつは経験学習の促進にあるのだそう。だから、ただ部下の話を聞くという時間は、「ちゃんとあなたのことを気にかけていますよ」というメッセージとして伝わり、部下の側に安心を与えるからかもしれません。 わたしが勤務している会社でも「1on1」を実施している部署がありますが、どうも上司がしゃべりすぎているみたいで。あと、トラブル対応などで感情的なしこりが残っている場合には、部下の方が上司に対して信頼をなくしているので、「対話」が成立しなかったこともあるらしい。 こうした、「上司がしゃべりすぎる」「解決案を出してしまう」といったことはよくあるようで、本にはトークスクリプトとして掲載されています。客観的にトークを見直し、受け答えへのフィードバックを見ることができるのです。 基本的に「1on1」は、「部下のための時間」です。テーマは部下が決め、上司は話を「聴く」係であることを意識する必要があるわけですが。 分かってはいても、自分がどんな言動

『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』#683

事業部のクリエイティブ部門から、HRへ異動して4年目になります。これまでは研修“だけ”に力を入れていましたが(というか、それ以上のことをやる余裕はなかった)、今年の初めごろに「はて、人事ってどういう役割なんだっけ?」と、あらためて考える機会がありました。 いろいろと読んだ本の中の一冊が『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』。株式会社サイバーエージェントの人事本部長である曽山哲人さんと、神戸大学大学院の金井壽宏教授の共著です。 企業の中で「人事」はどうあるべきか。その存在価値について考えさせられる本でした。 ☆☆☆☆☆ 『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』 https://amzn.to/3fL0A1n ☆☆☆☆☆ 「人事部」とは、なかなかにせつない部署だと思います。制度や異動への不満が集まる部署でもありますし、経営陣と現場をつなぐ橋渡しの役目も負っています。時には矛盾と軋轢のクッション材になることも。 こうしたことから、わたしはずっと「心臓」のイメージを持っていました。身体中に新鮮な血液を巡らせるポンプの役割ですね。 サイバーの人事本部におけるミッションは「コミュニケーション・エンジン」だそう。ひらたくいうと、「経営陣と現場の通訳係」と表現されています。 元はモーレツ社員で、広告営業のトップを務めていた曽山さん。人事へと異動してからも、パワフルな体育会系体質が抜けずにいたのだそうです。コーチング研修を受けることで、「人を恐れていた」ことに気付き、変われたとのこと。 曽山さんの率直な告白は、新人マネジャーにとって励ましになるかもしれません。「わたしだけが苦しいんじゃないんだ」と思えるから。 最近では、YouTuberとしても活躍されています。毎回更新を楽しみにしているコンテンツのひとつです。 ソヤマン - 人と組織のお悩み解決!! https://www.youtube.com/channel/UCXNdhMaVY8wp06UaMCYiv_g 評価制度には「納得感のある対話」が必要という話は、北野唯我さんの著書 『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』 にもデータとして示されていました。 「人事部」は硬直化しやすく、官僚的になりやすい部署ではありますが、“こなす”だけでは味わえない仕事でもあるのだと、本を読んで感じ

『GREAT @ WORK 効率を超える力』#682

「あの人はなぜ優れた業績を残せるのか? 残業もしていないのに……」 朝から晩までモーレツに働くことがよしとされていた時代は終わったと思っていました。なのに、新人の中には「長時間働いて、がんばってる自分をアピールしよう!」と考えている人もいます。評価基準について説明して、“がんばる”方向性をマネジャーとすりあわせてもらっても、そこから抜け出せない。 誰に教わったのや!? 『GREAT@WORK 効率を超える力』の著者モートン・ハンセンもそんな考えを持っていたそう。野心満々で入社した一流のコンサルティング・ファームで、でも打ちのめされることになるのです。 残業もしないナタリーが、自分より優れた仕事をしているのはなぜか? 一所懸命働く<<<賢く働く 発想を変え、会社を変えることを説いた本です。 ☆☆☆☆☆ 『GREAT@WORK 効率を超える力』 https://amzn.to/2QJwbIo ☆☆☆☆☆ 数百の学術論文を精査し、5000人を対象に調査を実施。「賢く働く」ための7つのファクターを抽出するとともに、企業の業績に影響を与えない項目を明らかにしています。 「賢い働き方」をしている人は、どんな業種にも、どんなレイヤーにも存在します。この人たちは、優先すべきことを厳選して、そこに努力を注いでいるから優れた結果を残せるわけです。 賢く働くための「七つの習慣」とは。 ① 優先すべきことをいくつかに厳選し、そうして選んだ分野に大きな努力を注ぐ(業務範囲の重点化)。 ② あらかじめ定められたゴールに到達するだけでなく、新たな価値を生み出すことに重点を置く(仕事の再設計)。 ③ 機械的な反復練習を避け、技能を伸ばす練習を行う(質の高い学習サイクル)。 ④ 自分の情熱を強い目的意識と一致させられる役割を探し求める(内的動機づけ)。 ⑤ 他者の支援を得るために心理戦術をうまく使う(しなやかな主張)。 ⑥ 無駄な会議を減らし、参加する会議では白熱した議論が必ず起こるようにする(厳密だが、オープンなチームワーク)。 ⑦ 部署横断プロジェクトに参加する場合は、どれに参加するかを注意深く選び、生産性の低いプロジェクトは、はっきりと断る(ほどよい協働)。 これらの項目の影響力は66%である一方で、学歴や在職期間、年齢、性別といった要素は5%程度しかないとのこと。「組織」というものを見直した

『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』#681

企業の業績と、職場の空気には関連性がある。 北野唯我さんの著書『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』は、定量データから導かれた“キッパリ”とした結論が、刺激的な本でした。 ☆☆☆☆☆ 『OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める』 https://amzn.to/3bNx0Hn ☆☆☆☆☆ 「OPENNESS」とは、組織における「カナリア」と表現されています。危機に最初に反応する「炭鉱のカナリア」にたとえられているわけです。組織の「風通しの良さ」は、企業の採用や資本市場にダイレクトに影響を与えているというデータとのこと。 企業の口コミを集めたサイト「オープンワーク」のデータ、延べ840万人分を分析。従業員ロイヤルティ(職場に対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標「e-NPS」との関連性をみたところ、全11項目のうち、高かったのはこちらの項目です。 ○職場の満足度に関係する項目 ・風通しの良さ ・社員の士気 ・人材の長期育成 ・法令遵守意識 ・待遇面の満足度 ○平成30年間で時価総額を大きく伸ばした企業に関係する項目 ・風通しの良さ ・20代の成長環境 ・社員の士気 これは、企業の規模や設立年数には関係がなかったのだとか。 上場企業なら「財務データ」は公開されていますが、これまでブラックボックスになりがちだった「職場の空気」が数値化されたということは。 企業はステークホルダーに対しても、就職希望者に対しても、「嘘をつけない時代」なのだなと思います。 本では、採用におけるポイント、働きがいをつくるポイント、そして経営者(陣)が留意すべき点などが論じられています。 「風通しの良さ」や「社員の士気」といったソフト面は、やろうと思えばすぐにでも改善できることなのですが、一方で「人材の長期育成」は他社との比較が難しく、評価者(口コミを書いている人)の期待値と実際とのギャップが大きい項目でもあるんですよね。 “人材の長期育成は仮に会社が一生懸命投資したとしても、他社と比べて比較することが難しく、それゆえに「満足する基準がない」のだと思われる。” 学校じゃないんだから「育ててくれる」会社なんて、どこにも存在しない。会社ができるのは環境を準備するところまで。自ら学べ。以上! という感じで、理想論に逃げず、キッパリと言い切るところが北野さ

『2016年の週刊文春』#675

分厚くて重量感があのある本を「鈍器本」と呼ぶのだそうです。当然、お値段も張るわけですが、ベストセラーとなる本も続出。背景には「家でじっくり本を読みたい」という思いがあるのだそう。 読者の胸打つ“鈍器”…分厚くて高価な本がコロナ禍で人気のワケ | 大手小町 SNS上で「もはや鈍器」と話題になるほど分厚い本が、ベストセラーになっています。ブロガーの「読書猿」さんが著した「独学大全―― 絶対に『学ぶこと』をあきらめたくない人のための55の技法」(ダイヤモンド社、定価:2800円=税別)。総ページ数   本好きとしては、「凶器」と同じ扱いをされることにモヤッとしちゃう。まぁ、たしかに、足の上に落としたら青たんができること間違いなしのゴツさはありますよね。 「鈍器本」と同じくらいモヤッとする言葉が「文春砲」です。 新聞では報じられないスクープを、雑誌ジャーナリズムの矜持を持って報じる……というスタンスは支持できます。でも、将来性のある俳優やタレントの未来を壊すことに意味はあるのか。誰かの人生をエンタメとして消費することへの疑問です。 自分たちは報じただけ。 そんな論理にもイマイチ納得はできなくて、「週刊文春」は、毎週楽しみに読んでいた時期もありつつ、ナナメに見てしまう雑誌でもありました。 でもなぜ、「週刊文春」はこれほど「文春砲」を出せるのか。雑誌のはじまりから今日までを追ったノンフィクションが、柳澤健さんの『2016年の週刊文春』です。これも「鈍器本」と呼べそうな重量級の本です。 ☆☆☆☆☆ 『2016年の週刊文春』 https://amzn.to/3yg9LPP ☆☆☆☆☆ 「週刊文春」の歴史において、カリスマと呼ばれるふたりの編集長、花田紀凱さんと新谷学さんが軸になっています。 2017年に出版された新谷さんの著書『「週刊文春」編集長の仕事術』は、炎上により「休職」を言い渡されたシーンから始まります。新谷さんはかつての名編集長を訪ねるわけですが、それが花田紀凱さんでした。 わたしにとって花田さんといえば、「マルコポーロ事件」のイメージが強く、退職後に創刊された雑誌の内容的にも、「なぜ、この人のところに?」と疑問がわきました。 その疑問が、『2016年の週刊文春』を読んで、ようやく解けた……。 『「週刊文春」編集長の仕事術』には、「新谷さんは特別だから」という同僚編集者の

『ネット興亡記 敗れざる者たち』#674

毎日インターネットを使って、ニュースを知り、調べ物をし、友人と連絡をとり、会社の仕事をしています。もうネットのない時代に戻ることなんて、絶対にできない。 いまやインフラとなったインターネットも、20年ちょっと前は「なんだか怪しげ」と思われていたのでした。それでも、ネットの可能性にとりつかれ、さまざまなサービスを起ち上げた人がいたからこそ、いまの便利さを味わえているわけですよね。 その裏で、どんな攻防があったのか。 日本のネット黎明期を支えた iモード、mixi、楽天、ライブドア、LINEなど、企業の誕生秘話を解き明かした本が『ネット興亡記 敗れざる者たち』です。 ☆☆☆☆☆ 『ネット興亡記 敗れざる者たち』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 日経新聞の電子版に連載されていたときから読んでいましたが、書籍化にあたってはゼロから書き直しているそうです。 この本で、多くの起業家たちが、「ビターバレー」の人脈でつながっていたことを知りました。「ビターバレー」とは、渋谷をシリコンバレーに負けないほどの、起業家が生まれる街にしようという活動のこと。「渋谷」をそのまま英語読みしているんですね。 2000年2月2日の「ヴェルファーレ」での集まりには、堀江さん、南場さん、孫正義さんら、すんごいメンバーが登壇。行間からも、その熱気が伝わってきます。 創業物語ですから、波瀾万丈、ギリギリのヒリヒリな展開が多くて、思わず力が入ってしまうのですが。同時に、この時代の起業家たちに大きく欠けていたものがあったことも感じました。 それが「倫理観」です。 アメリカのとある企業を買収しようとして、失敗。「じゃあ、マネすっか」とパクってしまう。 ライバル企業の広告を売るより、システムを自分で作っちゃえとパクってしまう。 「今ならさすがにやらないですが……」と語っている社長もいましたが、インターネット広告という新しい業界で、コンプライアンスが問題になるのもむべなるかなという気がしてしまいました。 変化の中で進化し、いつ喰われるか分からない状態の経営者という人々。わたしは起業願望がないせいか、「こんなジェットコースターみたいな生き方はムリ!」となりましたが、自分でハンドルを握るおもしろさは分かるように思います。 だって起業って、麻薬みたいなものだから。 ネットという最高の「おもちゃ」を手にした男たちの、ホモソ

『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』#671

熱いマインドの人が書いた本は、熱い。 その熱量はどこからくるのかというと、自分の意思を「誰かに伝えたい」ところからだと三浦崇宏さんは著書『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』で語っています。 そしてその「誰かに伝えたい」という強い欲望こそが、クリエイティブの源泉なのだ、と。 『超クリエイティブ』は、数々の伝説的な広告を生み出してきた クリエイティブディレクターによる、仕事術の本です。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』 https://amzn.to/2R7uF3d ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 三浦さんの本を読んでいると、「たとえる技術」が抜きん出ているのだなと感じます。たとえば、こういうお話です。 “GAFAが世界にもたらしたのは「生活の民主化」。これをもっと具体的なイメージで語るのであれば、日本の回転ずしチェーンでいうところの「生活のスシロー化」だったと言えます。” テクノロジーの進化によって、企業が自らの機能を先鋭化し、新たなビジネスモデルを生んだという説明が、こんなにシンプルになってしまう。小難しい言葉を並べるより、「生活のスシロー化」だよね!と、ひと言で説明された方が、スッと納得できます。 こうした言葉の選び方は、前著の『言語化力 言葉にできれば人生は変わる』に詳しいです。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『言語化力 言葉にできれば人生は変わる』 https://amzn.to/2RUhPFy ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『超クリエイティブ』で語られているのは、一貫して「コアアイデアに注目せよ」です。企画を考えるとき、アイデアを出したいとき、まずやらなければならないのは、「コアアイデア」をつかむこと。 上のスシローの例も、GAFAとスシローのコアを掴んでいるからこそ、生み出せるたとえなのだと思います。 昨日ご紹介した橋口幸生さんの『100案思考』の巻末に、橋口さんと三浦さんの対談が収録されています。 『100案思考』#670   わたしが「アイデアの捨て方」を研修で取り上げたいと考えていたとき、この本に出会えていればなーと思った一冊です。 「人格とアイデアの区別ができない人」への対応として、三浦さんの本では「つくる」と「選ぶ」に分けることが重要と説明されていました。なぜなら、アイデアを出した人にはどうしてもプランに対する愛着が生

『100案思考』#670

発想術の本は世の中にたくさんありますが、アイデアはいったいどうやって選ばれ、世の中に出るのか。これが、長年の疑問でした。 コピーライターは新人のころ、「100本ノック」をすると聞いたことがあります。でも、本当に100案出せたとして、いい・悪い、使える・使えないを決める基準はあるのか。その「選び方」を知りたい。 その疑問に答えてくれたのが、橋口幸生さんの『100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』でした。 ☆☆☆☆☆ 『100案思考』 https://amzn.to/3fd9Tab ☆☆☆☆☆ 著者の橋口さんはコピーライターを生業にされている方で、これまでにも文章術の本を出版されています。 『言葉ダイエット』 はじめに読むべき決定版 『言葉ダイエット』 #182   『言葉ダイエット』刊行記念トークイベント https://note.com/33_33/n/n2838e0bdedbc 今回の本は「 アイデア 」に関わる内容ということで、出版前からとても期待していました。そして読んでみて。 期待以上の満足度!!! お値段以上ニッコリ!!! 「 アイデア 」を巡る誤解や、「思考の壁」の突破法、そして「最高の1案」の選び方が紹介されています。 おもしろいのは「実践編」です。「デリバリー用の新メニューのアイデアを開発する」というお題から、実際に100個の案を創出。絞り込みを行うまでの、「プロの技」が開陳されているのです。 わたしは校閲ガールの仕事をしつつ、会社の研修の企画立案を担当しています。今年の1月に実施した勉強会のテーマがまさに、「 アイデア の捨て方」でした。このときに説明してもらった(講師は社内のプランナー)基準はこちらでした。 <アイデア選びの3要素> アテンション → 興味をひけるか パーセプション → 納得度・共感度が高いか アクション → 行動まで結びつくか でも、まだまだ抽象的な基準だったんですよね。参加者からは「なるほど!」という感想をもらったものの、もうひと工夫したいなと思っていたのでした。そこに、ドンピシャで当たったのが 『100案思考』。 中でもとても共感したのが、「好き嫌い」で選ばないという話です。 “人気クリエイターのアイデアはよくて、新人のアイデアはつまらない。そんなワケないですよね。しかし、人格とアイデアの区別ができ

『言葉にできない想いは本当にあるのか』#659

マンガ家のエッセイを読むと、「ビジュアルで世界を見ている人の目には、こう映っているのか!」と感じることがよくあります。顔のシワや、ふとした仕草など、すべてが絵を描くときのネタになるんだなーという感じで。 同じように、作詞家のエッセイには、やはり言葉への強い意識が感じられます。 音の響きはもちろん、手触り感や、なんだかよく分からないけどかっこいいと感じる感情まで、「なにが、どこが」を解き明かした本が『言葉にできない想いは本当にあるのか』です。 ☆☆☆☆☆ 『言葉にできない想いは本当にあるのか』 https://amzn.to/33Ng1R6 ☆☆☆☆☆ 著者のいしわたり淳治さんは、元SUPERCARのギタリストで作詞家で音楽プロデューサー。Superfly「愛をこめて花束を」などを手がけられたそう。 人間は日々、言葉を使ってコミュニケーションをとっているわけですが、あまりにも便利に使いすぎていて、むしろ“雑”と感じてしまうこともあります。 私たちが言葉を使って表現しているのはいつだって「感情の近似値」にすぎない。その意味で、言葉は常に大なり小なり誤差を孕んでいるものではないかと思うのである。 「言葉にできない想いは本当にあるのか」という自身の問いに対して、こう語るいしわたりさん。歌詞や広告、バラエティ番組の発言など、毎日目にする・耳にする言葉を観察した一冊です。 「自分を持っている人」ではなく、「自分を背負っている人」というのが格好いいのではないかと思う。 という言葉のとおり、イメージから立ち上る言葉のイメージが強い。“生き物”としての言葉が楽しめますよ。